Yushiki

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6/20/2023, 10:29:53 PM

 あなたをこの目に映す時だけ
 私は私のままでいられる

 あなたの目に私は映らなくていいの
 ただ夢に向かって全力で
 輝いているあなたが好き

 あなたがいたから私は
 誰かを応援することが
 自分も応援することになるって知った

 仕事も
 普段の生活も
 より良くしようって思える

 あなたのおかげだよ
 ありがとう

 この世に生まれてきてくれて
 私の世界を鮮やかに色付けてくれて






 本当に─────


















 推し活ってサイコーだよね☆☆☆



【あなたがいたから】

6/19/2023, 10:33:38 PM

 雨音に閉じ込められた世界で、君とひとつの傘を分け合った。
 傘の柄を握る僕の手の、すぐ真横には君の気配。
 かつてないほどの近い距離感に、うるさいほどの心音が雨音と混ざる。
 君側に傾けた傘の端から僕の肩へと落ちる雫が、籠もる熱ですぐに蒸発してしまうようだった。

 湿気が肌に貼り付いて、こんなにも暑くて、心臓だって張り裂けそうなのに、帰り道が終わらないことを願っている。

 息苦しい幸せに満ちる傘の下。
 僕は話し出すきっかけを模索中。



【相合傘】

6/19/2023, 4:25:38 AM

 何もない四角い部屋に、俺みたいな人間ばかりが大勢集められる。きっとここが最後の場所なんだろうなと考えたら、一気に床が抜け落ちた。
 俺も含めた周囲の人間たちが、バラバラと下へ落ちていく。不様な悲鳴を上げながら落下していく者が大半だったけれど、その中で俺の心は奇妙に凪いでいた。行き着く先にはきっと死が待っていると分かるのに、むしろこれでようやく解放されたかのような安堵感があった。

 そうか。俺は自分の終わりを、心のどこかで望んでいたのかもしれない。犯した罪は消えないけれど、俺が死ぬことで少しでも償いになるなら、こんな命はいくらでもくれてやる。

 俺はゆっくりと目を閉じて、体が叩きつけられるその瞬間を、穏やかな気持ちで待った。



「おめでとうございます」



 聞こえてきた明るい声に、ぱちりと目を覚ます。俺は仰向けに寝転んでいた体を上半身だけ起こし、辺りを見回した。

「あなたは当選いたしました」
「当選? 何の?」
「人生をもう一回やり直す権利を与えられたのです」
「・・・・・・え」

 俺は耳を疑った。驚愕で表情が歪む。

「いや、そんな権利、俺はいらな・・・・・・」
「では、送り返します。どうか、良い二度目の人生を」

 俺の拒否など聞き耳持たず、そいつは上へと手を上げる。途端に俺の体は宙に浮き、元来た道を逆走するように、もの凄いスピードで上昇した。

「うわあああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 俺は喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。またあの人生に逆戻りなんて、どんな拷問だと絶望しながら。

 生気を失ったように蒼白になった俺は、自分の意思に反してどんどん上へと昇って行く。
 まるで無限地獄にでも落下するような心地に、これが本当の罰だったのかと嘆いた。



【落下】

6/18/2023, 7:56:47 AM

 勘のいい奴っていうのは偶にいる。
 こちらの心を予め読んでいたかのように振る舞ったり、起こる出来事を事前に知っていたかのように対処する。
 まさにそんな超能力みたいな力を発揮する奴が、俺がいま教育係を受け持っている職場の新人くんだった。新人くんはこちらが指導する余地もなく仕事の仕方も完璧で、俺は自分の存在意義を一瞬見失いそうになりかけた。そんな精神状態のせいもあってか、俺はつい新人くんに「君、いったい何者?」と、そんな冗談のような質問を本気でしてしまう。

「あ、実は自分、未来から来ました」

 しかし返ってきた新人くんの答えは、俺の質問なんか霞むほどに突飛なものだった。

「・・・・・・え、マジで?」
「はい、マジです」

 目一杯に両瞳を丸くさせた俺に、「未来って言ってもほんの五十年後くらいからですけどね」と、新人くんは呑気に笑う。

「え、でも、何で君この会社で働いてんの?」

 率直な疑問だった。

「実は僕、本当は今からその五十年くらい後にこの会社に入社したんですけど、やっと仕事にも慣れてきた頃、大きなミスをやらかしちゃいまして・・・・・・」

 この会社の社員でやらかしたミスと聞いて、俺はまさかと考える。

「まだ試作段階だったタイムマシーン、間違って動かしちゃったんですよね」

 それを聞いた瞬間、俺の中であることが閃いた。それは、会社の命運を左右するほどの閃きだった。

「いやー、未来に帰るのが怖くて。だったら運良く同じ会社に入れたし、このまま働いちゃおうかなって」

 彼はその事実に気付いていないようだが、俺はこの会社に自分の人生を捧げることをひそかに決意する。

 彼がいればいま我が社が壁にぶち当たっているタイムマシーン事業の道が開ける。なんせ彼は我が社のタイムマシーンで過去に来た実績を持ち、きっと時間を渡ることに成功した実物までもを、所持しているのだろうから。



【未来】

6/17/2023, 4:33:26 AM

 1年後にまた会いに来る。
 そう言って友人と固い握手を交わした俺は、放浪の旅に出た。着のみ着のままあちこちの諸国を巡り、同じ場所にいたら味わえないような未知なる体験をして、ひと回りもふた回りも大きくなって帰ってこようと意気込んでいた。

 けれど、やる事なす事どうにも味気ない。毎日が無味乾燥していて、1日が過ぎるのはこんなにも長かったかと、あまりにも遅い時間の流れがいつしか億劫になった。

 そうして気付いたら、俺は元いた場所に戻ってきていた。別れを告げたはずの友人が、帰って来た俺にすぐに気付いて、「おい、こら、どうしたんだ。約束の1年はまだ先だろう」と、不思議がりながら問い掛けてくる。どうやら1年どころか、俺が旅に出てまだ半年くらいの月日しか経っていなかったらしい。俺はその事実を知ったのと、友人の声を聞いたのとで、まるで夢から覚めたように我に返る。
「あれ? もう1年くらい経ったと思ってた。お前がいないと毎日が退屈でさ、時間が経つのも長く感じたからそのせいかも」と、ようやく俺は味気なかった日々の理由を理解した。
 俺の様子から何かを察したらしい友人は、呆れたように「バーカ。なら旅に出るなんて言って、俺を置いていくなよ」と、叱りながらもどこか楽しげに苦笑していて、あ、そうか、俺が今よりも大きくなりたいと望んだのは、この友人の懐の深さに憧れていたからだったんだと悟る。

「・・・・・・だって、俺、お前みたいになりたかったんだよ」と、意図せず本音をポロリと漏らせば、「俺だって、お前みたいになってみたかったよ」と、友人が返してくる。

 その後に友人と共に過ごした半年は、本当にあっという間に時間が過ぎた。

 俺はふとあの日を振り返る。
 1年前の俺と今の俺とは、はっきり言って然程変わっていないだろう。けれど、1年前のあの旅が、きっと俺にかけがえのない大切なことを教えてくれたのだと、それだけは胸を張って確信できた。



【1年前】

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