Yushiki

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 何もない四角い部屋に、俺みたいな人間ばかりが大勢集められる。きっとここが最後の場所なんだろうなと考えたら、一気に床が抜け落ちた。
 俺も含めた周囲の人間たちが、バラバラと下へ落ちていく。不様な悲鳴を上げながら落下していく者が大半だったけれど、その中で俺の心は奇妙に凪いでいた。行き着く先にはきっと死が待っていると分かるのに、むしろこれでようやく解放されたかのような安堵感があった。

 そうか。俺は自分の終わりを、心のどこかで望んでいたのかもしれない。犯した罪は消えないけれど、俺が死ぬことで少しでも償いになるなら、こんな命はいくらでもくれてやる。

 俺はゆっくりと目を閉じて、体が叩きつけられるその瞬間を、穏やかな気持ちで待った。



「おめでとうございます」



 聞こえてきた明るい声に、ぱちりと目を覚ます。俺は仰向けに寝転んでいた体を上半身だけ起こし、辺りを見回した。

「あなたは当選いたしました」
「当選? 何の?」
「人生をもう一回やり直す権利を与えられたのです」
「・・・・・・え」

 俺は耳を疑った。驚愕で表情が歪む。

「いや、そんな権利、俺はいらな・・・・・・」
「では、送り返します。どうか、良い二度目の人生を」

 俺の拒否など聞き耳持たず、そいつは上へと手を上げる。途端に俺の体は宙に浮き、元来た道を逆走するように、もの凄いスピードで上昇した。

「うわあああああぁぁぁぁーーーーっ!!」

 俺は喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。またあの人生に逆戻りなんて、どんな拷問だと絶望しながら。

 生気を失ったように蒼白になった俺は、自分の意思に反してどんどん上へと昇って行く。
 まるで無限地獄にでも落下するような心地に、これが本当の罰だったのかと嘆いた。



【落下】

6/19/2023, 4:25:38 AM