『何故ワタシを嫌う』
ふわふわとした黒いロングヘア
まるで蝶の羽のように広がる白いリボンの髪留め
小さな身長とは裏腹に子供を宿せる体
柔らかそうな胸や下半身は丁寧にドレスに包まれ
キラリと輝くお揃いのピアスが胸を刺す
「お前が俺の婚約者を…アリアを乗っ取ってるからだよ!」
黒くて大きな瞳
長い睫毛
柔らかそうな唇
そして絶対にアリアがしない頬を膨らます表情
『レヴィはこの体を愛してる、だからワタシも愛してる』
「違う!俺はアリアを愛してるんだ!お前がアリアの体を使おうが俺はお前を好きにならないんだよ!」
アリアの中には魔族の中の王
つまりは“魔王”と呼ばれる存在が入ってる
ソレは自分の性別も分からなければ
名前すらも持たない
アリアの体を傷付ける訳にはいかないからベッドにある枕を壁に投げつけた
『形は同じだぞ?』
「中身が違う」
『何処が違うんだ』
「アリアは…アリアはもっと……」
アリアとレヴィは政略結婚を元に結ばれた婚約者だ
初めて会ったのはまだ齢7歳
アリアなんて5歳だった
緊張しながら従者を引き連れてアリアに会いに行ったが彼女は王宮内に居らず
バタバタと誰もが探していた
その空間も怖くて今にも泣き出してしまいそうなレヴィの前にふわりと現れたのがアリアだ
白い肌と艶のある黒髪
そして無表情
まるで人形のような彼女は魔力消費の激しい転移魔法を易々と使いこなし颯爽と現れては綺麗なお辞儀をし
そしてドレスを着てるというのに紳士のように跪いて
色とりどりのハーデンベルギアをレヴィに差し出した
レヴィは最初こそ戸惑ったが恐る恐るハーデンベルギアを受け取ればアリアはスクッと立ち上がりスタスタと離れていく
無表情で無感情で無口
なのに行動力が高い
だから周りはアリアの扱いに困っていた
第二王子のレヴィと第三皇女のアリア
国際的に結ぶならこのくらいで充分だろ?とでも言えるような組み合わせ
だが幼いレヴィはまともに話せず落ち込んで自分の国に戻りハーデンベルギアの花について少し調べた
レヴィの国にもアリアの国にも咲かない花
紫やピンク、白のハーデンベルギアを集めるのに彼女は何回転移魔法を使ったのだろう
そしてハーデンベルギアを贈る意味を知った時
レヴィはアリアに恋したのだ
《出会えた事に感謝を》
そこからはレヴィがアリアにゾッコンだった
色々な話を振っても風で靡く草木を眺めるアリア
様々な贈り物をしても無表情で受け取るアリア
雨で馬車が動かせないと聞けば転移魔法で自分から来てくれるアリア
無表情でも無口でもアリアの行動一つ一つには優しさがあった
だからこそ…
『レヴィ?』
視界に入り込むように上目遣いで顔を覗き込むコイツが嫌いだった
『愛してる』
アリア自身から聞きたかった言葉をアリアじゃないナニカから聞くのが嫌だった
「なんで…なんでアリアなんだよ!」
『レヴィがこの体を愛していたk』
「体じゃない!違うって言ってんだろ!」
『……』
「なんで俺なんだよ!男が良いなら他にも沢山男が居るだろ!」
『ワタシはレヴィが良い』
「なんでだよ!」
『レヴィがワタシを見てた』
「知らねぇよ!そんな事!」
魔王とレヴィは一切話が噛み合わない
魔王はまるでずっと前からレヴィの事を知ってる口ぶりをする
でもレヴィは魔王がどんな容姿かも知らないのだ
見てただの会っただの言われてもレヴィには理解出来ない
『レヴィ…』
「なんだ…よ……」
アリアは一度も自分の名前を呼んだ事が無い
まずアリアの声をアリアから聞いた事が無い
だから名前を呼ばれるだけでも虫唾が走り怒鳴ろうとした
だが目の前に居るのは無表情でポロポロと涙を零すアリアだった
「…アリア……?」
そう呼んで涙を拭うように頬を撫でた途端
アリアのような無表情から一変
口角を上げて目尻を下げてニンマリと笑う
『レヴィはやっぱりこの体が好き』
頬に触れた手を優しく包まれる
アリアの体を使う魔王に嫌悪感が走る
『この体があって良かった』
魔王にとって“アリア”はレヴィを振り向かせる為の道具でしかない
レヴィがアリアを置いて逃げ出さないと理解してるから頑なに“アリア”を手放さない
怒りに包まれたレヴィを落ち着かせる為にアリアのような表情をしてから突き落とす
『レヴィ、愛してる、愛してる』
魔王はアリアの体を利用してレヴィの掌にキスをする
柔らかな感触と暖かな温度が掌に伝わる度に今度はレヴィがボロボロと涙を零した
もう限界だった
体だけでもアリアだからと割り切れればどれ程救われただろうか
アリアはこんなに愛を囁いてくれないしと吐き捨てられたらどれ程救われただろうか
「頼む…頼むよ…」
『なぁに?レヴィ』
「アリアだけは解放してくれ…頼む…」
『……』
「俺はこの際どうなっても良いから…アリアを…」
『なんで?』
レヴィが泣いて縋っても魔王には通じない
魔力暴走により後天性魔族と化した元人間とは違い
魔王のような感情に乗った魔力痕から生まれた先天性魔族は人間の感情を理解はしても共感は出来ない
『この体だからレヴィは優しい』
『この体だからレヴィは見てくれる』
『この体だからレヴィは話してくれる』
ちょっと無表情になり涙を流せばレヴィは何度もアリアを期待する
そして近付く度に魔王はレヴィに触れられる
アリアの体だからレヴィは魔王に暴力を振るわない
魔王が“アリア”で在り続ける限りレヴィは無視出来ない
『レヴィ』
涙と絶望でぐしゃぐしゃになったレヴィを優しくベッドに押し倒す
そしてレヴィの真似をするように白く小さな手で涙を拭う
『ワタシはお城もドレスも食事もベッドも全部レヴィの為に作った』
『レヴィに痛い思いはさせない』
頬に触れていた手がゆっくりと胸に滑り落ちる
『レヴィの居ない場所なら全部壊す』
魔王は本心を淡々と口にする
『愛してる』
そう言ってキスをしてレヴィの体をチロチロと舐める
魔王はたかがレヴィを手に入れる為に魔族の王に成り上がった
そして魔王として国と取引した
レヴィとアリアを渡せば魔族が入って来れないよう結界を張ってやる
断れば滅ぼす
レヴィの親もアリアの親も喜んで2人を差し出した
国同士でも戦争が起こり得る人間の世界
その中に魔族まで入られたら簡単に戦況が変わる
第二王子と第三皇女を渡すだけで魔族を遠ざけられるのならと
だからレヴィにもアリアにも帰れる場所は無い
『愛してる』
ちぅっちぅっと子供の戯れ合いみたいなキスを性行為だと勘違いしてる魔王のお陰で二人の貞操だけは守られてる
「…せめて黙っててくれ……」
そう言って布団を引き寄せて顔にかけた
香りや感触はアリアなんだ
日常生活なんてまともにしなくて良いから
こうして現実逃避しながら
アリアがまだ生きてると香りや感触で信じながら
静かに泣いていたい
お題:時を止めて
〜あとがき〜
あとがきに見せかけた世界観や魔王のかるぅいQ&A
Q.この世界観に神は存在しますか?
A.この世界観に神は存在しません
神は魔族にも人間にも手を差し伸べません
干渉もしません
認識出来ない空間から眺めるだけです
何もしないナニカは存在していないと同義と考えてます
なので彼らの視点で紡がれる彼らの世界に神は存在出来ないんです
Q.魔族以外の人外は出ないのですか?
A.魔族と人外は=の存在です
言葉を話せる種族は人間と魔族の2種類のみ、という世界観を構築しています
人間かそれ以外かのロー〇ンド方式じゃないと名前持ちキャラが増えすぎてしまうので…
なので例をあげるとエルフも魔族として扱う予定です
Q.何故魔王はレヴィが好きなんですか?
A.初めて欲しいと思えた存在だからです
どんな生物も初めての現象に何かしらの感情を抱くものです
人によっては“あまりにも些細なと捉えられる事”でも容易く欲を刺激します
ちなみに魔王は目が合って笑顔を返してくれたからという理由で愛してます
そういう事です
Q.魔王がレヴィに向ける感情は愛なんですか?
A.紛れもない愛です
魔王にとっての“レヴィに向ける最大級の愛”です
あくまで魔王の物差しですが“純愛”です
人間の物差しじゃないんです
人によっては不快にすら感じるかもしれません
Q.魔王とレヴィの濡れ場はありますか?
A.レヴィ次第です
“レヴィ×アリア”ならシてる
“レヴィ×アリア(魔王)”だからシてない
Q.魔王にまともな知識を入れたらまともになりますか?
A.ならないと思ってます
まともな知識は理性と汲み取る力を持って初めて意味を成すものです
魔王は理性が無いので汲み取ろうとしません
そのせいで知識の真意を全く理解出来ません
なので上辺だけの行動しか出来ない、つまりはまともになれないんです
Q.もし魔王がしてる事をやり返したらどうなりますか?
A.全部呑み込みます
魔王がしてる事は大きく3つです
・大切な人を乗っ取ってる
・強制的に引き剥がす事が不可能な状態にしてる
・本人は出ていく気無し
上記の3つを魔王に押し付けても魔王は『身体も大切な人も邪魔な奴も呑み込んでワタシのものにする』と返しました
行かないで欲しかった
何度も何度も離れないでと縋った
離れないでくれるなら何でもした
文字通り何でもした
でも世間は許してくれなかった
何でもする為には相応の責任が伴う
そんな当たり前の事を理解出来ないくらい
盲目だった
彼女が連れてかれるというのに
自分は大人の体に抑えられて
彼女の手を引く事も出来なかった
一緒に逃げ出せば良かった
世間が彼女を睨む前に
一緒に遠くに行けば良かった
抑えられるより前に自分が彼女の手を握って
うんと遠くに連れてって
彼女の欲という欲を叶えてあげれば良かった
中途半端に足踏みしなければ良かった
慢心して当たり前のように明日が来るなんて
思わなければ良かった
行くなら一緒に連れてって
行かないで
離れないで
自分の全てを壊して気付かせてくれた彼女が
まるで手で掬った水のように零れてく
その日自分は全てから逃げるように走った
お題:行かないでと、願ったのに
〜あとがき〜
14歳
※この作品には少量のグロ、性的描写が含まれています
※苦手な方は次の作品をご覧下さい
“雲類鷲 雫(うるわし しずく)”という人間は異質な個体だっただろう
産声をあげてよちよち歩きまでは良かったが掴まり立ちよりも早く喃語を話し自力で立ち上がれる頃には言葉を理解する知力もあった
最初こそは天才だと称賛の嵐を受けていたが3歳を越えてからは気味悪がられる事の方が増えていた
歳不相応な本や論文を手に取って辞典とパソコンを用いて小さな手で言葉を学ぶ様は両親も恐怖を覚えただろう
クレヨンで絵を描くよりも“クレヨンは何で出来ているのか”とかを調べたり絵画を調べたりする方が好きだった
色の交わりをクレヨンを溶かして学ぶのが好きだった
なんならクレヨンを作る方が好きだった
枠が決まった塗り絵とかよりも真っ白な画用紙に手作りのクレヨンで色を乗せて風景画を描く方が好きで
なんならクレヨンよりも絵の具の方が好きで
そこから絵の具の作り方を学んでは水彩画に行き着いたり
まぁ絵を描くという行為に半年で飽きたのだが
そこからは“父親という役割を与えられた個体”が所持するカメラを分解して再構築するを繰り返したり
“母親という役割を与えられた個体”が所持する化粧品の作り方や原材料を調べたり
調味料の作り方や制作方法で味が変わる理由を知ってからは環境問題に興味を持ったり
小学校という学業施設に身を置くまではソレはもう自由に学んで自由に吸収してきた
小学校というものはそれはもう退屈極まりない
決まった範囲内に収まらなければいけなかったし
興味が有るものも無いものも平等にスケジュールに組み込まれるし
齢5歳で親から白旗を上げられて金を渡すから関わらないでほしいと家から逃げ出された雫にコミュニケーションの大切さを説いて自分よりも知能の低い同年代とグループにされる
同年代は非常に感情的で思い通りにいかなければ怒り喚き泣き叫び
自分で“どんな行動をすれば思い通りの結果を得られる”と学ぶ前に癇癪を起こす周りに辟易する事が多かった
煩わしい事この上ない
《もっと優しい言葉で相手に寄り添ってあげて》と言われた事もあるが寄り添うというのは相手が相応の人間であると理解した上で出来る事だと反論した
ただ寄り添うだけで学びを得られるのなら誰しもがそうする
だが歳を重ねるごとに“寄り添う”とか“寄り添ってもらう”だけじゃ何も通用しなくなる
“寄り添われたいなら寄り添われる為の技術”が必要なのだ
裏を返せば“寄り添いたいのなら寄り添う為の技術”が必要でもある
雫は“心の寄り添い”よりも“利害の一致”や“需要と供給”の方が100倍理解が出来て意味があると思ってる
寄り添う事で利益に繋がるのならいくらでも寄り添うが雫が求めてるものを供給する個体は早々現れない
だから寄り添う必要性を感じなかったのだ
感じれなかったのだ
だから同年代や歳下は勿論、一定の大人とも関わらなくなった
愛嬌を振る舞うのも知能を下げて気を遣うのも疲れるから
13になる年になってからは登校日数を増やしてテストだけ受けてくれれば良いと担当教員に頭を下げられて初めて学校に通うようになった
窮屈な制服のボタンを閉じて長い前髪を耳にかけて特徴的な跳ね毛を揺らしながら春風を切る
周りの視線なんて気にする事なく入学式を終え、教室で自己紹介というものを端的に済ませて、その日以外は教室では無い何処かで時間を潰す
登校はしてる
テストは受ける
最初頭を下げた教員の言葉はしっかりとこなしながら興味がある授業にだけ参加する
クラスメイトからは“綺麗で可愛くスタイルが良い”という見た目の印象と“不気味で自己中で協調性が無い”という中身の印象を与えた
結果として見た目に寄ってきた男は“つまらん”という一言で一蹴
中身の悪さが噂立つ頃には孤立を極めて雫にとっては居心地が良かった
図書室で興味深い本を手に取って読める
理科室に隣接した実験室から物を拝借して好きに使う
パソコン室のパソコンのパスワードや設定を変える遊びも結構楽しかった
勿論全て元に戻すし授業の邪魔にならない範囲の時間帯を選んで行った
《自分が好きに行動するとしても、ソレが他者のやるべき事を邪魔していい理由にはならない》
ソレだけは一丁前に理解していた
だから授業を受ける気がない自分は受ける気がある他者と同じ空間に居るべきでは無いと判断したし
授業があるのなら自分が特定の部屋を陣取る事はしない
その行為が誰かのやる気を削ぐ事に繋がるのなら極力邪魔しない方が良い
だから屋上の出入口の裏
掃除が行き届いていなく誰も使用した痕跡のない狭い空間を私物で綺麗にして己の空間にした
基本的に屋上は不人気の場所だ
雫が入学する少し前に飛び降り自殺をした女生徒が居たらしく幽霊となって出てくるらしい
以来授業で使用しない限りは生徒がやってこない
無論教員も
まるで小人でも住んでるのでは?と勘違いするクオリティの秘密基地が完成するには半年の時間を要した
夏でも涼めるように太陽光発電を利用した蓄電器を設置して小型クーラーも完備
チープな折り畳みだが椅子も机もある
寝転がれるようにブルーシートの上に乗せられたセミシングルのエアベッドもある
勿論エアベッドの上には触り心地の良いタオルケットとクッションもある徹底ぶり
テント替わりになる撥水加工のシートと断熱材の確保は入手に困ったが上手く外壁に溶け込める色合いのものを見つけれて学校外から通報されないように対策もしてる
中にある小型ライトの光が外に漏れないように中は遮光カーテンを利用してた
雫の第2の自室状態と化した秘密基地は誰にも見つかる事なく次の学年へと上がった
新しい担当教員は授業にも出て欲しいと雫に言ったが即断った
それで背中を丸めトボトボと帰ったとしても同情はしない
“雲類鷲 雫という個体が中学校に登校してテストを受ける”という快挙を成し遂げ教員室で褒め称えられた元担当教員を前に現担当教員はそれより上の快挙を求められたのだろう
だがソレは現担当教員の問題であり雫がわざわざ身を呈して合わせる必要は無い
ソレを考えると元担当教員は良い妥協点を見つけて提示できていたのだなと強く感じた
……
学年が上がって2ヶ月
とある男子生徒が雫の楽しみという楽しみを尽く邪魔するかのように自分を探し始めた
独りで過ごす事が好きな雫にとっては厄介な存在だった
しかも相手は雫と同等の学力を有してる
テストの点だけで言えば同率1位として名前が並ぶ事の方が多かった男子生徒だ
名前と当人の噂は知っていれど好きな事を邪魔されて良い気分にはならない
『やっと見つけた。』
そう言って秘密基地の出入口を開ける彼
身長170越えと高く、白い髪と長い前髪を留めてるのであろう黄色の三角型ピン留めを2つも付けて誰にでも好かれそうな笑顔をこちらに向ける
長く白い睫毛に左目の下にある涙ボクロ
男性にしては白い肌
制服のボタンはキッチリ上まで閉じて腕まくりも無しと着崩れ一切見当たらない
コレが“湖登波 陽彗(ことは ひせ)”という“良い子”との出会いであり
「気色悪い笑顔を浮かべながら人を探すな、厄介野郎。」
初めての会話である
………………
そこから夏という季節が到来する頃には陽彗は雫の秘密基地に平気で遊びに来るようになった
最初こそは“授業に出よう”と誘われまくったから嫌悪感満載で対応していた雫だが
今となっては一緒に冷たいお茶を飲みながらクーラーの効いた涼やかな秘密基地で会話をするくらいの関係だ
『雫、前開けすぎじゃない?出るもん出てるよ?』
夏になると今にもボタンが弾け飛びそうなワイシャツを着崩し
最早下着に包まれた豊満な乳房を丸出しにするくらいが当たり前になってた
「気に食わないなら出てけ、此処は私が作った私の空間だ。」
そう言いながらくてぇとエアベッドに寝転がりながら答える
綺麗な白銀色の瞳が黒い下着に包まれた柔らかな乳房に向いては無理やり視線を戻すように目を合わせる
『気に食わないじゃなくて目のやり場に困るかな〜…。』
「じゃあ椅子の向きでも変えるんだな。」
人体について詳しく書かれた本をパラリパラリと読みながらサクサクと短く返す
目のやり場に困ると言いながらも“良い子”ちゃんはちゃっかり見るもんは見てる
“恋愛に興味無い”“もしかしたら同性愛者”の“完璧優等生”という噂は存外宛にならない
人の憶測で語られた“湖登波 陽彗”という存在は噂と違い、ツギハギが目立たないように精巧に作られた中身の無い人形のような存在だった
『いつか襲われるよ?』
「安心しろ、此処から出る時はちゃんと閉めてる。」
だから“人間”に戻してやった
雫にとって陽彗との関係はそれだけだった
本来“人間”と分類される個体を“人間”というカテゴリーに戻してやっただけ
それだけなのに陽彗はエアベッドで本を読む雫に近寄り本を奪って目を見つめながら
『襲われるよ?』
と再度伝えてくる
空っぽの人形に中身を詰めて人間に戻した
たかがそれだけで陽彗は雫という個体に全てを奪われた
最近だと友達よりも“友達でもなんでもない”自分との時間を優先にしてるらしい
“良い子”ちゃんが聞いて呆れる
「襲いたいのか?」
『うん。』
「…好きにしろ。」
陽彗は丁寧に机に本を置いてから甘えるように雫に擦り寄る
チュッチュと首筋にキスして汗ばたんだ雫の肌に舌を這わせて味わう
人間よりも狼に近いのかもな…なんて思いながら陽彗の求愛を眺め
ピンッと何かを思いついた
「陽彗。」
『…なに?雫。』
名前を呼ばれたら興奮冷めやらぬ状態でも口を離して潤んだ瞳なのにも関わらず目を合わせてくれる
狼よりも忠犬だ
「欲しいものがあるんだ、予定を空けろ。」
『何が欲しいの?』
「一切の金銭は発生しないが1人では手に入れられないものだ、協力して欲しい。」
『わかった、いつがいい?』
「出来るだけ早く。」
『じゃあ今日空いてるよ。』
陽彗は雫と会話をしながらも無意識に雫の下腹部に局部を擦り付けている
その感情があるなら今回欲しいものは簡単に手に入れられるはずだ
好奇心と興奮を覚えながらまるで褒めるように陽彗の頬や髪を撫で回してやった
早く学業施設から出れる時間になってほしい
楽しみ過ぎてついつい上がる口角をそのままに陽彗の可愛らしい求愛を受けていた
……
『本当に手土産とか買わなくて良いの?』
「要らん。」
『親御さんは?』
「どちらも不在だ。」
そんな会話をしながら炎天下から逃げるように陽彗の手を掴んで自分の家まで急ぐ
手に入るのならあの場でも良いのだが如何せん道具が足りない
だから早くソレらが揃ってる家に行きたい
『そんなに欲しいものってどんなものなの?』
「2つ欲しいが1つはとても貴重なものだ。1度失くしたらもう手に入らないかもしれない代物だよ。」
『…上手く協力出来るかな…。』
「安心しろ、陽彗。お前は手先が器用だ、なんなら集中力もある。」
『手先と集中力でなんとかなるものなんだ。』
早歩きで家に着いては鍵を使用して扉を開ける
“ただいま”も何も言わずにローファーを脱ぐ雫とは反対に“お邪魔します”と小さく行ってから靴を脱ぐ陽彗
それほど広くもなく小さくもない一軒家で靴を揃えてから雫は陽彗を洗面台に連れていき強制的に手洗いうがいをさせた
無論雫もやった
そして2階にある雫の自室に急かすよう陽彗を連れていく
初めての雫の家に緊張してるのか手が強ばってるが雫にとっては関係無い
「此処が私の部屋だ。何も触るな、清潔を保て。暇なら好きな物見てろ。必要なものを準備する。」
清潔感のある木目調の白い床に大きなベッド
勉強机と思わしき机の上には大きなパソコン
椅子は長時間座れるものを
大きな棚が3つもあって部屋は窮屈に見えなくもない
1つ目は服がしまってある棚
2つ目は様々な言語の小説や論文書
3つ目はホルマリン漬けにされた小動物や骨格模型、中には小さな目玉や脳みそが浮かんでるものもある
透明の標本ケースにはパッと見て名前が浮かばないものもある
陽彗が興味を持ったのは3つ目の棚だったらしい
『コレって本物?』
「あぁ、生きたまま持ち運ぶのが許されない外来種を捕ってその場で捌いたものもある。」
『このネズミは?』
「剥製だ。」
『骨格模型…』
「自分で作れるものは自作だ。」
『コレは?標本ケースに入ってるやつ。』
「厳重にされてるのはカビ。他は微生物。ドーム型のやつは虫だな。」
『凄いねぇ。』
「さ、自由時間は終わりだ。」
雫はベッド脇の小さなテーブルから本を退けてベッドに乗るには些か邪魔な位置に移動させる
自分の手を再度消毒液で清潔にしてから使い捨ての手袋を手際よく付けて
熱消毒済みのトレーには清潔なガーゼが敷かれ、上には膣洗浄機、クスコやメッツェンバウム剪刀、更に薄くて丸い標本ケースも乗せてある
無論全て消毒済みのものだ
ベッド近くにある小さなテーブルの上にトレーを置いて陽彗に使い捨ての手袋を装着させる
『な、ぇ、何するの?』
「欲しいものを手に入れるんだよ。」
『何が欲しいのか明確に教えて欲しい。』
「処女膜だ。」
『…ぇ……。』
陽彗は手に使い捨て手袋を付けられながら欲しいものの名称を聞いて軽く絶句した
そりゃそうだ、処女の女を欲しがる奴は居ても処女膜だけを欲しがる奴は珍しい
「前々から欲しかったんだが鏡と自分では難しくてな。」
『いや、その。』
「もう中を見る事も難しいから処女膜を拝むのも出来なかった…あぁ、良ければ写真も撮って欲しい。撮った後は私に送れ。あと手袋も付け替えるんだ、あそこにあるから。」
『でも俺男だよ!?』
「だからこそだ。女性器というものに興味はあるだろ?性器を見せ合うのは同性に比べ容易い。」
『確かに興味はあるけど…。』
「嫌なら断ってくれて構わない、別の協力者が現れるのを待…」
『やる。』
別の人間の気配を察知した瞬間陽彗は即答をした
コレが独占欲というものか…なんて思いながら制服のスカートをハラリと脱いで黒いレースの下着を脱ぐ
そして清潔な防水シート越しに枕やクッションを重ねて位置を調整して摘出の様が見えるように軽く上体を起こせる形にしつつその上にいそいそと寝転がった
「使い方は分かるか?」
『全然。』
「まず陽彗も近くに来い、ベッドの上より脇に座った方が見やすいだろ。」
『……女の子のって…こう…もっとグロいイメージがあった。』
「私は未経験だから色が薄いだけだ。」
『触ってもいい?』
「まずは膜の採取だ。」
雫はそう言ってから膣洗浄液のキャップを外して女性器の表面に軽く洗浄液をかけてから膣内に先端を挿入して中を綺麗にする
そして空になったものを器具に触れないように離して置き直し…後は陽彗にやってもらう為に指示をした
「その銀色の丸いヤツがあるだろ?クスコ膣鏡と言われるものだ。ソレを少しだけ挿入してから膣を広げて欲しい。少しだけだとアレだな…まずは1cm挿入して軽く広げてくれ、思ったより奥に膜があったらもう少し挿入して良い。」
陽彗は言われた通りにクスコを手に取り雫の柔らかな大陰唇を僅かに広げて膣に器具を軽く挿入した
そしてゆっくりと開いて
中は綺麗な色合いでくすみも何も無い
そして環状処女膜が露になる
『ど、どこまで切って良いの?』
「さぁな。」
『さぁなって…。』
「まずは形を教えて欲しい。」
『えっと…なんか…なみなみしてる?』
「ふむ、真ん中に隙間があるか?」
『ある。』
「じゃあそこから2mmくらいを目安に切り取ってくれ、クスコは私が固定しておく。そこの細い鋏があるだろ?アレを使うんだ。」
『…わかった。』
陽彗からクスコの持ち手を受け取り自分は開き過ぎず閉じ過ぎず、明かりの位置で影になりづらいように持ち手の位置を調整
その間陽彗は鋏を手に持って開き具合や閉じ具合を確認してから軽く息を吐く
「出来るか?」
『やる。』
「任せた。」
短い会話をしてからゆっくりとメッツェンバウム剪刀が膣内に入り
処女膜の1部をチャキッと小さな音を立てて切った
そして小さな金属音がチャキ…チャキ…と部屋に響く
お互い何も喋らないのは集中してるからなのと単純に痛いからである
処女膜も内臓の1部だ
ソレを麻酔無しで切除すれば相応に痛い
だがソレと同時にやっと手に入るという高揚感がアドレナリンの分泌を促して気持ちマシに感じた
『き…切れたよ……。』
「軽く挟んでケースに入れてくれ。」
陽彗はゆっくりと膣内から処女膜を取り出してケースに入れ、ちょいちょいと形を整えてからメッツェンバウム剪刀をガーゼの上に置いて初めて息をついた
雫もクスコを閉じて抜いてガーゼに置いてからキラッキラの瞳で標本ケースの蓋を閉めて持ち上げる
「こ、コレが処女膜…本で見るよりも感動的だ。上手く漬けて保存しておいてやるからな。」
キャッキャと下半身裸のまま喜んで愛おしそうにケースを撫でる雫を他所に陽彗は軽くベッドに寄りかかっていた
『痛くないの?』
「痛みより興奮が勝つに決まってるだろ!この日をどんなに待ち侘びた事か…。」
『嬉しいなら良かったよ。』
「という訳で次は2つ目だな。」
『…へ?』
ケースをガーゼに包んで勉強机に置いてから手袋を外してトレーの置いてある小さなテーブルを元の位置に戻す
さっさと防水シートを拭って小さく纏めてゴミ箱に詰めた
「言っただろう?2つ欲しいものがあるって。」
『でも今凄く疲れてるよ?出来る?』
「陽彗、お前は若い。出来る。」
『今度必要なのは若さなんだ…。』
雫は今度は少し縦長の標本ケースを持って来た
何に使うのか陽彗には検討も付かないだろう
1つ目が手に入った喜びと2つ目へのワクワクが止まらないのか歳相応のあどけない笑顔で陽彗に要求を話す
「2つ目は“精液”だ。脱げ。」
『……はい?』
「精液だ、ザーメンでも良い。」
『こ、この状況で?』
雫は標本ケースを両手に持ちながら陽彗の前にちょんっと座る
そして陽彗の胸に手を添えて渾身の上目遣いで一言発した
「…嫌か?」
『良いよ。』
「よし、なら脱げ。」
『…ぁ〜…も〜…。』
言質さえ取れればこちらのものだ
即座に立ち上がり上目遣いをやめてぽすぽすぽすとベッドを叩く
雫の渾身の上目遣いにまんまと引っかかった陽彗は顔を覆って悔しがる
そして今度は陽彗が下半身の衣服を脱ぐ番になった
ベルトを外して制服のスラックスを膝まで脱いでから黒い下着を下ろす
「なんだ、ノリ気じゃないか。」
『…思っても言わないでください…///』
初めて性器を露出させたからか顔を赤くして声も小さくなる
だが陽彗の男性器は重力に逆らうように持ち上がってる
ソレを見た雫は興味津々にツンと指先で陽彗のに触れた
『ちょっ!?///』
「どうせ精液を採取する為に刺激を与えるんだ。少しくらい観察させろ。」
『待って!恥ずかしい!1人でやる!///』
「!?待ってくれ!私はただ人間が射精する瞬間を見たいだけだから!」
『ソレを見られるのが恥ずかしい!///』
「じゃあ私は何を見せれば良い!?」
『そういう問題じゃなくて!///』
陽彗が恥ずかしくて下着もスラックスも上げる前に雫は夏用のワイシャツを脱いではブラも脱いでニーハイソックスだけになってから陽彗を無理やりベッドに座らせる
「いくらでも見て構わない、頼む。」
14歳にしては大きな乳房を陽彗に押し付ける
雫の体では精液を採取する事が出来ない
誰かと性行為を行ったとしても自分の分泌液やコンドームの潤滑剤などの不純物が混ざるから自慰行為してもらうのが1番良い
欲を言うなら射精する様やその際の男性器の特徴も見たい
だから手段は選ばない
『……わか……った…///』
「ちなみに唾液や愛液が混ざるのは困るから手伝い方は限られてる。陽彗が私に触れるのは良いが私はあまり尿道周りに触れられない。陽彗は右利きか?左利きか?とりあえず私に触れる時は利き手とは違う手で触れて欲しい。あと射精する時は目の前で見せて欲しい。」
『………………はい…。』
再度言質を頂いた為パッと離れてから注文をつらつらと並べながら手に持ってる標本ケースをフリフリする
その多い注文に陽彗は声を絞り出してからたどたどしく自分の性器に触れて上下に手を動かした
陽彗の足の間にちょこんと座るようにしてその様を興味津々に眺める
頬を赤らめて目線を逸らす陽彗の事なんてお構い無しだ
「少し触れて良いか?」
『い、良いよ///』
ちゃんと許可を得てから陽彗の睾丸に軽く手を触れる
熱くて時折ぴくんッと動き、柔らかいのに中に程よい固さを感じられる
自分には無い部位に興奮が隠せず睾丸の重さを手で計ったり付け根の部分をさわさわしたりと触れる手が止まらない
『雫…くすぐったい……///』
「はっ…すまない、あまりにも魅力的で…。」
『…俺も雫を触りたい…///』
「良いぞ、いくらでも触って良い。」
『…キスして…///』
まるでオネダリするように接吻を要求されればベッドに片膝を乗せて唇にキスをする
まるで陽彗が首筋や鎖骨、胸元にしてたように
…そういえば唇でキスをするのは初めてだ
口を離せば顔を赤らめて目をぱちくりさせる陽彗が居た
「口は間違いだったか?」
『俺…はじめて…。』
「私もだ。」
そう言ってから今度は間違えないように右手側に体を寄せて首にキスしたり鎖骨にキスしたりする
荒くなる息が伝わる中陽彗は右腕で雫を引き寄せて髪の香りを嗅いだり柔らかな胸を右手で揉んだりし始めた
直に触られるのは初めてだから少しだけ肩が跳ねる
いつもの求愛とは違う触り方だから驚いただけだと自分を誤魔化した
「私の匂いは好きか?」
陽彗はコクコクと頷く
「私の体は好きか?」
『…雫の全部好き。』
頷くだけかと思いきや言葉で返された
体という限定的な言葉に反論した結果なのかは分からないが右腕で強く抱き締められる
そこまで好かれる程の関係なのか?とも思うが…そう思ってくれるのならありがたい
人間は好意を抱いてる人に愛を囁かれるとドーパミンやオキシトシン、PEAが分泌されるからだ
「愛してるよ、陽彗。」
『!?ッぅあッ!?』
そう耳元で囁いた途端ビクッと陽彗の体が跳ねる
反射的に標本ケースを近づけた
危ない、採取が遅れる所だった
びゅっと出てくる白い液体は思った以上に濃くて粘度が高い
あと…
「多くないか?」
標本ケースの蓋が閉じれなくなる前に離したがパタタっと床に精液が飛ぶ
なんなら陽彗本人の手にも精液がべっとりと付着している
男性の平均射精量3mlという知識はあるが明らかに3mlとは思えない
ビクビクと男性器が跳ねて、ソレを握る手が震え、フッフッという浅い息が聞こえる
やっと止まったのか呼吸を整えようと必死になる陽彗の頭をポンポンと撫でながら標本ケースに入った精液を眺めた
これの中心くらいから少量採取して真空状態のパックに移し冷凍すれば精子は長持ちするだろうか
『しず…雫…雫…。』
「どうした?陽彗。」
『俺もすき、愛してる、好き。』
自分を強く抱きしめるこの男…多幸感を感じるホルモン分泌に慣れてないのではなかろうか
それか“良い子”で居るためにそういうものをシャットダウンしたのか
理由は分からないが自分に対しメロメロになってる陽彗の頭を優しく撫でてあげた
「陽彗…。」
『…なぁに?』
「収まらないのか?」
ずっと勃起状態の陽彗に問いかけたらこくんと頷かれた
興奮状態が続いてると勃ち続けてしまうというのは知識にある
本来なら自分は服を着て陽彗を落ち着かせるべきなんだろうけど
右腕が離れる事を許してくれないし
なんなら離れないように左腕も追加された
「…収まるまで付き合うよ…。」
散々煽ったツケくらいは払わなければいけない
……………………
「ぃ"ッンッッ♡ひせッ♡ま"っッ♡♡ﮩ٨ـﮩ♡ـﮩ٨ـﮩ!?♡♡」
もう二度とツケなんて払いたくないと思うくらいには陽彗の体力と性欲を甘くみていた
男という生物についての知識が足りなかった
採取に使えるかと思って購入し、使えないと判断していたボックスのコンドームが全部消費されたのは言うまでもない
お題:秘密の標本
〜あとがき〜
連日こんな作品で申し訳ないごめんなさい
※この作品には特殊なものや性的描写が含まれます
※苦手な方は次の作品をお読みください
「寒いのは嫌いか?」
分厚い雲が太陽光をこれでもかと覆い隠し
午後4時だと言うのに外は夜の如く暗くなり始めていた
そんな中で“雲類鷲 雫(うるわし しずく)”という名の女子が“湖登波 陽彗(ことは ひせ)”という名の男子に問いかける
「嫌いじゃないよ?」
「そうか。」
その問に対して嘘でも“YES”と答えるべきだった
雫は先程までは儚げな横顔を見せながら自室の窓の外、遠くを見つめていたというのに
ゆるゆるふわふわのくせっ毛とハートを象ったようなアホ毛を揺らして陽彗に視線を向けてニヤリと笑った
黒くて大きな瞳がふっくらとした涙袋と二重線の入った瞼で細められて
長い睫毛がただでさえ少ないハイライトを影で隠し更に怪しさを増している
雫の艶のある黒髪と正反対の白髪を緩く結ぶ陽彗は嫌な予感が顎を擽るように忍び寄るのを感じた
……
「流石に寒いよ?」
「嫌いじゃないなら良いんだよ。」
分厚い雲からチラチラと雪が降り始めて数時間…靴底からムギュっという音を鳴らしながら日にちが変わるか否かの時刻を雫と陽彗は楽しげに散歩する
「普通に風邪引くって…。」
「風邪で休むくらいじゃ騒ぎにならんさ。」
主に楽しげなのは雫だ
少々特殊な形の厚手の黒タイツ
裾にふわふわとしたファーが付いた白いロングスカート
ケープ付きの黒い上着は白銀に近づく世界に合わせたかのような銀のボタンが規則正しく横並びで2つ、縦並びに3つ、合計6つ
モコモコの長いマフラーをもふっと首に巻いて足元は黒いロングブーツ
「そういう意味じゃなくて…なんでこういうの持ってるの?」
対して陽彗の服装は不憫と脳裏に浮かべて構わない
白い髪がよく映える黒いロングコート
……
のみだ
いや、“のみ”と使用するには些か語弊が含まれる
詳しく言うのなら雫の家に遊びに来た時に履いてた黒い無地の靴下とフェイクレザーを使用したスマートカジュアルなデザインの黒い靴
ワンコーデというものの説明をするのならコレだけである
雫は黒い上着の下に厚手のタイトセーターを着ているにも関わらず
陽彗のコートの下は何も着ていない
また語弊が失礼した
着させて貰えなかった
「コートは私を作った精子側から拝借した。」
「父親の呼び方改めた方が良いよ。」
「それともこちらの方が気になるかな?」
雫は自分が両親の事を“卵子側”と“精子側”…なんて呼んでる
人様に聞かれたら一度は聞き返してしまうような呼称は何度耳に入れても馴染まないもの
だがそんなものよりも陽彗が目に映るのは手綱だ
持ちやすいように握る部分はしっかりと柔らかな布で構築されてるというのにそこから垂れる銀色の鎖は重力に従い
そして逆らうように陽彗の首に繋がってる
コレが“野外露出プレイwithお散歩コース”というやつらしい
意味がわからない
「首輪もそうだけど人の目が1番気になるかな…。」
「そういう忠犬くんの為に泣く泣くこの時間にしたんだ。我ながら随分譲歩した方だと自画自賛してしまう。」
「100歩譲る気持ちで来て欲しかったよ。」
「譲っただろう?」
……
雫が思い立ったのは午後4時
陽彗が本音という回答が誤ちだったと気付いたのはそこから数分後の話である
ジャラリと音を立てて首輪を出された時は145cmの雫を前に30cmは視点が上の陽彗が部屋の隅に追い詰められ縮こまる自体になった
『陽彗、お散歩しよう。』
綺麗で整った顔で、とてつもなく良い笑顔で放たれた言葉に体質上色白な肌から血の気が引いて青ざめる感覚を覚えた
ただ体が朽ち果てる“死”ではない
目の前にあるのは生き地獄になるであろう“社会的な死”だ
『待って、俺マフラー持ってないから。』
『そんなもの必要ない。』
『パッと見て分かる変質者になるよ?良いの?』
『卵子側と精子側も常時不在、学業もある手前ペットを飼った事が無かったんだ。』
『質問の答えになってないよ?』
『愛玩動物(ペット)と散歩はしてみたいものなんだよ。理想は叶えてなんぼだ。』
『人間をペット扱いしてる時点で変質者の代表だよ…。』
『さ、行こう。』
『ま、待って…。』
『散歩より芸を覚える方が好きならそう言ってもらっても構わない。』
笑顔で対人間用の、“そういうプレイ”用の本格的な首輪を握る雫の“芸”という言葉があまりにも想像出来なくて必死に妥協に妥協を重ねる話し合いが行われた
いや、話し合いと表現するのも間違いだ
己の欲に全てを全振りした雫の要求を陽彗が懸命に引き伸ばしただけの時間稼ぎに過ぎない
……
《せめて人目の少ない時間が良い》
《愛玩動物の個体性質に合わない空間に放り出さないで欲しい》
唯一通った陽彗の要求は“《》”で示したものだけだ
もう陽彗は自ら自分を“ペット”として認識した上で説得していた
なんかもうそうしないとコートや靴は愚か靴下すら履かせて貰えなかったかもしれないからだ
「雫の100歩の価値観が俺と違いすぎるよ…。」
「人の価値観は千差万別だ。誰しもが己と同じ価値観だと思うと、こうして足元を掬われるぞ?」
今にも鼻歌を歌いスキップしそうなくらい上機嫌な声色でジャラジャラと鎖を揺らす雫からは説得力しか感じない
価値観の違いと立場の違いを脳でも目でも理解できる
「本来あの場で逃げ出して“私(変人)と関わらない”って選択肢もあったんだ。ソレを自ら手放してたのは紛れもなく陽彗自身、そうだろう?」
更に追撃を喰らえばぐうの音も出てこない
本来は自分よりも小さくか弱い雫を押し退けて逃げる事だって陽彗には出来た
出来たのだ
それと同時に出来なかったのだ
「コレが“私(変人)と生きていく”という選択をした者の末路だ。嫌なら今から服を取りに家に帰っても良い、私は“来る者拒まず去るもの追わず”をモットーに生きてるからな。」
その言葉を聞いた途端、陽彗は反射的に雫の上着のケープを優しくキュッと握った
陽彗の視界に映るのは自分よりも小さくか弱い同年代の女子の服を割れ物でも扱うかのようにか弱く握る…関節部分が血色を帯びた男の手だった
「そんなに私から離れるのが怖いのか?」
雫はそんな陽彗の為に立ち止まり
己の持っていた手綱をグイッと引いた
身長差も相まってグンッと音を立てて頭が持っていかれる
強く響いたジャラリという音が鼓膜を揺らし首がギュッと瞬間的に締め付けられる
その直後に雫の胸にもふっと顔を埋めた
「可愛い忠犬め。こんなド変態極まりない人間の愛が欲しいほどに飢えてたのか?」
厚めの上着やセーターの生地を貫通する雫の高い体温と女性の柔らかさ
カクンと折れる膝が日本特有の湿った雪に付き、ロングコートが濡れていく
なのにすぐ立ち上がる事もせずに陽彗は雫を抱き締めた
豊満な胸とは裏腹に細くて簡単に折れてしまいそうな腰周りに程よく筋肉がついた腕が絡む
「…行かないで……。」
小さく小さく陽彗は絞り出した
それはもう小さな声だ
「陽彗は“良い子”と称される部類の人間だ。」
「…いらない……。」
「陽彗の親も陽彗の事を自慢に思ってる、陽彗は友達だって大勢だ、教師からの信頼も厚く成績も優秀の優等生。」
「…そんなのいらない…。」
「そんな陽彗がどうして“親にも見てもらえず友達も作らず教師の期待を裏切る欠陥品(私)”に…」
「そんなの要らない!」
陽彗は何も知らなかった
“良い子”で居るのが当たり前だと思ってた
親が自慢げに自分の話をして周りから羨ましがられる地位に恍惚とした表情を浮かべてたのも
女友達が自分を顔や態度や将来の可能性で計ってあわよくば手にしたいと目をギラつかせてたのも
男友達が自分を恋のキューピットと称して意中の子の傷心を舐めて己の物にしたと団欒してたのも
先生が手のかからない良い子ですとニコニコと会話してまた問題児と同じクラスにして負担を減らす手段にしようとしてたのも
全部陽彗なのに“陽彗”じゃなかった
「…“悪い子”でいい…。」
「“良い子”の方が都合が良い。」
「じゃあ雫にだけ都合が良い俺がいい。」
それに1番早く気付いたのは当時名前しか知らなかった“雲類鷲 雫”だ
陽彗が当たり前だと思い込んでた全てを壊して壊して壊して
違う世界を見せて選択肢というものを広げてくれたのが雫だ
『当たり前が当たり前じゃない、だから人類は発展した。』
そう言って陽彗の世界を、視野を、選択を
広げるだけ広げて背を向ける雫
今まで“良い子”というレールの上を歩く自分を前に雫は常に“選択肢”を与えた
雑に言うのなら《“やる”か“やらない”か》
初めて自分にも様々な“やる”と“やらない”が存在する事に気付いた
“全てやる”が“良い子”だったから
「雫が望むなら悪い子でも良い子でも良い。」
更に追記するのなら雫は選択肢を出す前に必ず“陽彗本人の気持ち”を確認する
陽彗が“嫌い”とか“嫌だ”と言えば“同じ質問を繰り返さない”
そこからは流されるように雫の要求が出され
陽彗は戸惑いはするも何でもした
そこには“陽彗だから”ではなく“雫本人がやりたい”のだと分かるから
裏を返せば雫は陽彗じゃなくても構わないのだ
雫がやりたい事が出来るのなら誰でも良いのだ
つまり“良い子”を取り繕う必要も無ければ
100点満点なんて出さなくて良い
こうして情けなく縋り付いても良い
こうして胸に顔を埋めて甘えても良い
「クハハッ“悪い子”だな。」
耳も鼻も頬も赤くした顔で女々しくポロポロと大粒の涙を零しても良い
陽彗の耳を覆うように雫の暖かい手が添えられ顔を上げさせられる
そして表面が冷たい唇と暖かくて柔らかい唇が触れ合う
「陽彗、私は“悪い子”だ。」
「…知ってるよ。」
「それに着いてくるお前も“悪い子”だ。」
雫はそう言って柔らかな白髪を撫でた
陽彗は心底嬉しかった
どれほど“良い子”と言われてきてもこんなに嬉しく思う事は無い
あまりにも心地好くて嬉しくて仕方なくて
ソレが言葉よりも体に出てしまうのが少々悔しくなる
「ココでは出来ないな。」
下着もボトムスも着用してないならテントなんて簡単に張れる
ソレがスカート越しに柔らかな太腿に当たれば言わずもがなバレるものだ
「おいで、近くに公園がある。少し寂れてはいるが寧ろ助かるだろ?」
雫の言葉にコクリと頷いてから立ち上がってお散歩に戻る
今さっきと違うのは雫の手には手綱が、陽彗の手には雫のアウターのケープがチョンっと摘まれてるところ
人通りの少ない道を通って錆びた遊具にまみれた公園に行き着く
真ん中にある所々錆びた複合型遊具、端に添えられた鉄棒とブランコ
あと薄暗い講習用トイレ
「さ、どれがいい?」
「どれって…?」
「選択肢は4つだ。好きなのを選べ。」
なんか雫の言いたい事がわかった気がする
この雑草が生えまくった寂れた公園は見てわかるように手入れがされてない
ソレを踏まえた上で公衆トイレでバレずに発散するか
雫の目線の高さに近い鉄棒を彼女に握らせて発散するか
…ブランコは想像出来ないが
「じゃあアレ。」
「わかった。」
陽彗が指し示すは複合型遊具だ
ジャラリジャラリと鳴る鎖の音
ムギュっギュッと鳴る足音
雫が滑らないように登るのをサポートしながら複合型遊具に登って
今度は愛玩動物がこっちこっちと言うように複合型遊具の上を軽く歩く
そしてトンネルのように設置されたドラム缶の前に来た
「雪も積もってないし公衆トイレよりは綺麗だよ。」
「ふむ、スリルは60点だが音が響くという点では少し面白いな。」
そう言って雫は鎖を肩に乗せるようにして屈みドラム缶の中に入っていく
勿論繋がった陽彗も入らなきゃいけない
「意外と中は広いんだな。」
「俺に取っては少し狭いかな。」
「ふん、まぁ高い低いよりこちらの処理の方だな。」
「ぁッ///」
雫は意外と強気で無敵な人に見えるが身長に対しては軽くコンプレックスを抱いてる
《小さいけど態度と胸がデカい女》
男子の中では名前すらも覚えて貰えずにそう呼ばれていた
だがコンプレックスを軽く刺激されたからと言って怒るような人ではない
少しばかりムッとはするが今ではコート越しに膨らんだ陽彗の先端を擽るように指の腹で優しく触り擽ってくる
そして空いた手で器用に首輪から鎖を外した
「忠犬くん、ドッグランでは“お友達”と遊ぶらしいね。」
「違うよ、雫。」
「ほう?」
「“友達”じゃなくて“好きな相手”だよ、あと俺は遊びじゃなくて真剣。」
「クハハッ、確かにソレもそうか。」
雫は上着の小さなポケットから“はい”とゴムを一つ陽彗に手渡して、ケープを外してクッション代わりにしてから鎖と手綱をそこに置いた
そして胸膝位の体制に入っては長いロングスカートを捲る
そこには恥部を良い感じに隠すふわふわの尻尾がある
“そういうプレイ”用の尻尾の付け方は後ろの穴を使用するやつ
最初は陽彗が付けられそうになったが裸コートで構わないからソレはいつかにしてくれと頼みに頼んだ結果何故か雫がつけている
まぁソレが見えるという事はつまり…お尻や恥部といった本来下着で守らなきゃいけない部分を雫は露出させながら歩いてた訳だ
特徴的な厚手のタイツは“股空きタイツ”というもの
「忠犬くんは“好きな相手”とやらに優しくするタイプかな?それとも…“真剣”にヤるタイプか?」
「それは雫が自分の部屋で考えてよ。」
「答えを焦らすタイプは嫌いじゃない。」
コートのボタンを軽く外して陽彗はそそり立つ肉棒を顕にし、コンドームを装着した
そして頭がゴインとドラム缶にぶつからないように雫にマウンティング
自分より小さな手や背中、細い腕や腰、脇腹からむにぃっと溢れた胸の肉
柔らかな髪に顔を寄せて0距離で甘いシャンプーの香りを堪能しながら重力に従う尻尾を雫の腰に乗せる
そして先端をぷにぷにの大陰唇に押し当てて筋をクニクニと押しながら撫でた
「…濡れてる。」
「わん。」
「え、そこから?」
くちゅ…と優しくなる水音がドラム缶に響いた感想を零したらとてつもなく可愛らしい声で鳴かれた
もしかして自分達とてつもなく高度なプレイをしてないか?と陽彗は思った
だが少しだけ上体を上げてスリスリと顔を擦り寄らせて“クーン”とわざとらしく鳴く雫を前にするとぶっちゃけ凄く興奮する
ぷにぷにの大陰唇を押し退けて
濡れた小陰唇を軽く腰を揺らして左右に分けて
1番濡れて濡れてたまらない膣口に挿入した
「んッ…ンゎん…ッ♡」
狭い膣内にも関わらずキュンキュンと膣肉は締め付ける
フッフッフッと荒い息を雫に押し付けるように抱き締めて上半身を押し潰しながら腰を振った
最初は水音だけを響かせるゆっくりとしたピストンだったがGスポットと真反対の位置の膣肉の盛り上がりに興奮が止まらなくて肌を打ち付ける音も響かせる
「ぁんッンきゅッ♡ゎうぅッ♡♡」
いつもの喘ぎ声とは違い犬のように鳴きながら艶声をドラム缶内に響かせる雫
陽彗はいけない扉が開いてしまいそうだったから抱きしめる腕をズラし大きな手で口を塞いだ
柔らかな頬と唇の感触と声を出す事で感じる振動
それよりもGスポットを押し潰し
奥に先端を届かせる度に吸い付く子宮口に潜らんとばかりに押し上げる
2人の荒い息と肌の音と水音が響くだけの暗い空間で犬みたいな性交をする
好きな相手が逃げないように必死に押さえ付けて押し潰して苦しそうな息が手にぶつかっても気にせずうねる膣肉を掻き分けて大事な臓器に濃厚なキスを落とす落とす
「ん"ッ♡〜ッッ♡♡」
膣肉がキューッと締め付けビクビクと跳ね、ビチャチャッという音がドラム缶内に響く
その意味を理解してるのに理性が働いてくれなくて腰が止まらない
口を抑える手に唾液が絡むのが分かる
“ごめん”とでも言うように雫の頭に頬を擦り寄せて何度もキスした
だからと言って陽彗は腰を止めるつもりはサラサラ無いらしい
……
「ン"ッう"ッーッ"♡ん"ッ〜ッッ♡♡」
何度も何度もギューっと膣肉が締め付けられる度にタイツもコートもスカートも濡れる
狭い空間のせいで体制を変える事も許されず
抑え付けられてるせいで身を捩る事も許されず
ただただ快感を与えに与えられた聡明な脳みそは膣内と同様に蕩けてる
陽彗が遅漏というよりか雫が敏感で絶頂しやすいのが正解なんだが
流石に絶頂したばかりの体に追い打ちを続けまくる陽彗も陽彗
「…ッ…ィくッ。」
端的にソレだけ伝えてから下半身を押し付け
別に子宮内に出せる訳でも無いのに最奥で種付けするように射精する
尿道を押し広げるくらい濃い精液がゴムを伸ばしていく
「しずッ…今ッだめッ…///」
陽彗は自分が吐精したと同時に締め付ける膣肉に肩を跳ねさせた
男も女も達した時が1番敏感なのは知ってる
知ってるけど搾り取られるような感覚でうねり締め付けられたら止まるものも止まらない
たっぷりと出し切ってから雫の口元から手を離す
濡れた掌から銀糸が伸びて雫が大きく息を吸って吐いてを繰り返す
「…ぉい…。」
「…苦しかった…?」
「そっちじゃない。」
「…ぇっと…。」
「…なぜ私だけワンコロしてお前は普通に人語を喋るんだ?」
「そっち?」
ぷいっとそっぽ向いてしまう雫が可愛くて唾液まみれじゃない方の手でよしよし頭を撫でてから抜こうと陽彗が上体をあげた時
ゴインッ
良い音がドラム缶内に響いた
思いっきり後頭部をぶつけた陽彗は声にならない声を出しながら痛みに耐える
「……クハハハハッワンコロしないからだ、バチが当たってやがる。」
ケラケラと笑う雫にムッとして腰に乗せられた尻尾を濡れてる手で掴んで軽く引っ張ってやった
「ン"ア"ッ!?♡♡」
少しばかり盛り上がる肛門から尻尾が抜けないようにクイックイッと引っ張って弄ぶ
「今度は俺がリード引いてあげようか?雫はスカート脱いでさ。」
「ンッ♡ぅッ♡ぬけるッだろッ♡♡」
「じゃあ抱っこしてあげるよ。」
「ン"ッぉ"ッぉまえッちょうしにッッ♡♡」
ちゅぽんっと音を立てて肛門からビーズ一つ分を抜いてやる
ビクビクと膣肉が跳ねて“/╲︿_ღ__/╲_ッッ♡♡♡”などというソレはもう声にならない声を響かせる
「じゃ、雫。家に帰ろっか♡」
今手綱を握ってるのは雫ではない
陽彗は手を伸ばして鎖だけを回収してから膣内から肉棒を引き抜く
たぷんっと膨らんだゴムを上手く脱いで縛って…なんか公園に捨てるのは忍びないから顔も知らない雫のお父さんに謝罪しながらポケットにしまった
ドラム缶から出て這いずるように言う事の聞かない下半身を持ってしまった雫をズルリと抜くように抱き上げる
そして脱がしはしないけどスカートを託しあげた状態でお姫様抱っこ
つまりは垂れる尻尾を見せびらかすように雫の家に向かった
「温度差凄くて寒いね。」
「…私は…熱い…。」
「体温高いからね。」
「…もっとゆっくり歩いてくれないか?揺れる。」
「尻尾が?」
「そうだ。」
「もう1個抜いてみる?」
「ココでか?」
雪が積もり凍えそうな寒空の下
きっと日付も変わった時間帯
誰の目にも触れずに2人は親の居ない雫の家に戻った
ベッドの上で尻尾を外した後の雫の姿に興奮して第2Rが始まった事に関しては言うまでもない
2人共14歳とまだまだ若いのだ
お題:凍える朝
〜あとがき〜
凍える朝は対義語である熱い夜で相殺します
お題に抗うのもこのアプリの面白い所
自分の作品と自創作子でありながら随分とまぁ特殊極まりないプレイをしてますね…
という事はさておき
陽彗という自創作子は本来は男性なんですけど私の趣味で女体化させて遊んだりしてる為
このアプリ内では“女性の陽彗”と“男性の陽彗”が混在してると思います
なので改めてココで言わせて頂くと“男性の陽彗が本軸であり女性の陽彗はif”です
という事で皆様凍える朝も夜も続いていきますしまだ始まったばかりですが
風邪をひかないようお気をつけください
※この書き物には少々卑猥な表現が含まれています
※苦手な方は次に移行してください
『んッ…ッ…///』
抑えるような艶のある声がほの暗い部屋に響く
大柄な男性がゆったり寝れるサイズのセミダブルベッドに寝かされた女性は焦らすような前戯に腰を捩らせていた
普段はポニーテールに纏められたふわふわとした長い金髪が顔の向きを変える度にもふっもふっと顔を埋める
弄られてもいないのに豊満な胸の先端はツンっと膨らんで
女性経験はあれど男性経験の無い秘部は自分の愛液なのか相手の唾液なのかすらも分からない
全体をゆっくりと舐られ
小陰唇を吸われたり舌先で遊ばれ
陰核に舌先が触れそうになった瞬間に大陰唇にキスされる
『…ッ…ンッ…ぁの…ッ…///』
逃げようとしてしまう腰は大きな手でガッチリと掴まれて逃げられない
足を閉じようと頭では理解してるのに下半身が脳の指示を拒んでる
流石に長すぎると感じる前戯に一声かけようと声を出した瞬間に陰核を舌先で虐めるように刺激された
声にならない声とはこの事を言うのだろう
走る快感に腰を仰け反らせ
足全体で相手の背中をムギュっと固定する
チカチカする視界を元の状態に戻そうと首を振った
『ほらな、陽彗ちゃん。俺は懇切丁寧な前戯をする事に定評があるんだ。』
スルリと陽彗と呼ばれた女性の柔らかな足を解いて
大柄な男性はヤニで汚れつつも並びの良い歯を見せながらニンマリと笑う
パタパタと顔から零れる雫は汗ではない
汗ではない
ソレが分かるくらいには冷静になった
『…猛獅さん……なんか…全部長いです…』
『…あんなに盛大に潮ふいたってのに冷静だな、おい…』
『元からクリトリスは弱いのは分かってます』
『軽く転がされるだけで腰跳ねさせるくらい弱いのかぁ?ふーん?』
『調教済なんですよ、とある人のせいで』
『元恋人ってやつか?』
出来る限り笑顔で目を合わせ話してた陽彗が僅かに視線を逸らす
猛獅は無論、ソレを逃がさなかった
『やめてやってもいいんだぞ?』
『そうしたらまた仕事に制限かけるじゃないですか』
『あたぼうよ』
猛獅は何食わぬ顔でそう発言する
猛獅は包み隠さないし基本突っ走る
でも女性に対して“忘れさせてやる”なんて乱暴な事は言わない
ソレを知ってるから陽彗は猛獅のそそり立つモノに手を当てた
『未だに好きですよ、彼女の事』
『なのに男誘ってんのか?』
『言ったじゃない』
『何をだ?ん?』
『猛獅さんとなら後腐れないワンナイトが出来るって』
陽彗は腰を浮かせて濡れに濡れた秘部を猛獅の肉棒の先端ににゅちにゅちと当てる
『据え膳食わぬは男の恥…だっけ?』
先程まで余裕の無い声を漏らしていた陽彗とは思えない
何処か揶揄うようで嘲笑うようで
小悪魔的で悪戯でもするかのような
だけどとてつもなく唆る表情で煽る
そこに居るのは陽彗という女性じゃない
ファリ(危険)という裏社会の人間だ
『…チッ…てめぇ……』
『上に乗ってあげようか?』
あえて腰を落としてツーッと肉棒と秘部に糸を繋げ
擽るように首筋をなぞってくる裏社会で“ファリ”と呼ばれる女
まるで盤面を変えられたような感覚を覚えた猛獅はいつもはしないような乱暴なキスをした
舌を絡ませ息を吸わせる隙も与えないくらいに濃厚で長く深いキス
ファリはその中でも余裕綽々とでも言うように首に手を回し…優しく頭を撫でたりする
その行動一つ一つが男のプライドというものを刺激する
『ぁあ…後悔すんなよ?』
『させれるのならさせてみてよ』
いつもは砕けた敬語を使う陽彗だが
ファリは弄ぶような口調をよく使う
猛獅はなぜ目の前の女が“ファリ”という名前で動いてるかを魅せられた
この女は下腹部に彫られたタトューのように
絡みに絡みつく蛇だ
それも毒を持った最悪の蛇
まるでお好きにどうぞ、とでも言うように腕を解いてニンマリとした笑顔で両手で秘部を左右に拡げる
愛液なのか潮なのか唾液なのか…蕩けた中に挿入した
『ほれ見ろ、懇切丁寧な前戯のせいでトロットロになってるぞ?』
『口より先に腰を動かさないの?それとも気持ち良くて動かせなくなっちゃった?』
『あー言えばッこー言いやがってッ!』
せめて言葉で虐めて行為は優しくしてやろうという温情さえもファリは踏み躙る
だから掴みやすい腰を鷲掴みにして最奥にドチュッと先端を打ち付けた
絡まりハート型になった蛇のタトューが僅かに盛り上がる
『ぁッ♡ナハハッ♡ヤれるじゃん♡♡』
『その余裕がいつまで続くか確かめてやんよぉファリ』
何処か意地になって腰を振る猛獅
何度も何度もGスポットや子宮口を刺激されてるのにケラケラ笑うファリ
まるで必死になった獅子を小馬鹿にしてる蛇のようだ
1度こうなってしまったら後には引けない
せめて“もうやめて”くらいは言わせてやる
そういう思いで胸も触りキスも繰り返し痕もたんまり残して……
『で?自分より半分は下の子をぶち犯したと?』
『………』
…たらこの有様である
バツの悪そうな顔しながら正座する夜島 猛獅を見下ろす倉橋 誠
ソレを見ながらケラケラ笑ってるキスマだらけのファリ
『いや、その…す、据え膳……』
『据え膳もクソもあるかボケェ!!!!』
言い訳をしようした途端に絶対に一般人なら首の骨が天国に召される蹴りを入れられる
漫画のように“グハァッ!!”と言いながら大袈裟に横にぶっ倒れる猛獅の大きな体をゲシゲシと…多分仕事で履いてたんだと思わしきピンヒールで踏む踏む
『そういうのはバレずに発散しろって伝えてるのにどうしてお前はバレるようなヤり方してんだ!!』
『バレなきゃ良かったのか!?』
『良い訳ねぇだろぉぉ!!!!』
『グアァァッ!?!?俺の大腿筋膜張筋がァァ!!!!』
『まーまー倉橋さん♡確かに猛獅さん乱暴で痛くて苦しくて泣いてもやめてくれなかったけど〜♡』
ギャグなのかマジなのか分からない現状に涙出る程笑ったファリは腹を抱えながらも更に油を投下してく
まるで猛獅が勝手に襲って行為を続けたみたいな言い回しを聞いた倉橋の顔は鬼の形相を超えてもう何の形相かも分からない
『ひ、陽彗ちゃん!陽彗ちゃん!今そういう冗談通じないから!!ほんっとに!!イデデデデッッッ!!!!』
『ナハハ〜♡倉橋さん冗談だよ〜♡』
『何処までが冗談かによってはコイツを吊るし上げる』
『お、俺ぇ!?俺なのココで吊るし上げられるの!?』
冗談言ったファリが吊るし上げられるのではなく全責任が猛獅に乗っかってくる
その理由は明確…一応猛獅は一組織のボスなのだ
あまりにも自由であまりにも好戦的であまりにも人生楽しんでそうで重役よりも前線の方がお似合いの男がボスなのだ
だからこそ、1番親しい幹部である倉橋からの攻撃も口撃も激しい
『乱暴だったのはホント〜♡』
『待て倉橋!それはワイヤーロープだ!!』
『痛くはなかったし苦しくもなかったよん♡泣いてもないし♡』
『ちゃ、ちゃんと聞いてくれ!手際良く亀甲縛りしないで話を…』
『でも倉橋さんが止めるまでやめなかったのはホント♡』
『ウグァアァアァ!?!?!?』
190近くある巨体が軽々しくテコの原理で吊り下げられる
倉橋 誠が何倍も何十倍も経験があるというのがココで活きた
本来は活かすべきではないが
『く、食い込む!!食い込んでる!!多分食い込んじゃいけない所まで来てる!!』
『このまま明日の夜まで放置しとくか』
『痕残っちゃうよ〜?』
『陽彗、お前のその痕は1週間は消えないからな。コイツにも同じくらいの痕つけていい。』
『このッこの痕はッッイデデデデッッッ』
『痕ついたら全部見せてね〜♡』
『う、裏切り者〜〜!!散々煽って乗せてッ危険人物め〜ッ!!』
『ナハハ〜♡』
お題:おもてなし
〜あとがき〜
おもてなし(亀甲縛り吊し上げの巨体男が入った瞬間出てくる事が確定してるおもてなし)
前々書いた“優しくしないで”というお題の続き的なものです