握っていた手を離した。
一瞬の出来事だった
友人のAちゃんが学校の3階のベランダから飛び降りようと、幅わずか数10cmの柵の上に座っていた。
私は咄嗟にAちゃんの手を掴んだ。今すぐやめてもらいたかった。だからよくある綺麗事を言った。
「自殺なんてやめてよ!悲しむ人がいるよ!」って。
Aちゃんは目を閉じて、うずくまっている。
Aちゃんは私の瞳を見もしなければ、一言も発さない。けれど飛び降りをやめようとする気配も無い。
「ねぇ1回そこから降りてよ…私でよければいくらでも話は聞くからさ、、」
と言った次の瞬間にAちゃんは座っている体勢を崩して、手を繋いでいる私と一緒に落ちた。
私は咄嗟にAちゃんの手を離して、Aちゃんの座っていた柵に手を伸ばしていた。
柵に両手でぶら下がっている私。下を見ると血だらけのAちゃん。
ここで柵から手を離したら死ぬことは分かった。
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい
誰か助けてお願い誰でもいいから。
「だれか!助けて!落ちそう!誰か!!」
そう叫ぶと教室の方から
どこ?今助けるよ!
という声が聞こえた。
教室に来てくれたのはAちゃんの彼氏さんだった。
柵に掴まっている私の手を掴んでくれた。
私助かるんだ!ほっとして、ふと意識を失いかけた。
すると耳元で
「なんで助けちゃったかな(笑)本当はお前を巻き込むはずじゃ無かったけど、一緒に死んでもらうしか無くなっちゃった。」
そう言い、握っていた手を離した。
浮遊感を味わったわずか2秒後には、横にAちゃんの死体があった。
薄れていく意識の中でハッキリと見えた。
Aちゃんの首の真っ赤な縄の跡。
彼氏のにやりと笑った口元。
あぁそうかAちゃんは元から死んでたんだ。
「変わらないものは?」と問われたら私は、「今の幸せな時間」と答えただろう。25歳で結婚し、29歳で子宝に恵まれた。31歳の頃は一緒に育児に奮闘した。辛いことも幸せな事も旦那と一緒に過ごしてきた。ずっとずーっと幸せだった。
しかし、そんな幸せな時間は消え失せた。
33歳の時、旦那と子供は死んだ。
信号無視の車に目の前で轢かれた。みんなで手をつなぎながら散歩してた時の一瞬の出来事だった。
旦那が咄嗟に私と子供にかぶさってくれたおかげで私は軽傷で済んだが、子供は衝撃で頭を強く打ち死んでしまった。旦那はというと即死だった。
ねぇ、あの時私が「散歩に行こっか!」って言わなければ今もみんなで食卓を囲めていたのかな?あの時からずっと後悔している。あの時の私に言いたい。
『そんな幸せな時間は変わってしまう』のだと。
お題:これまでずっと
私は消極的で、人見知りで、陰気で、まともに会話は続かないし、顔色ばかりうかがうし、良い所なんて1つもないと思ってた。
でも彼と出会ってその考えは180度変わった。彼は私の性格を肯定してくれた!
「顔色ばかりうかがっちゃって疲れちゃった…」
私はそう言った。でも彼はそんな私に
「【私】ちゃんがそうやって皆のことを気にかけてくれるから俺は安心できるんだよ!顔色をうかがうことは悪いことじゃないよ!むしろ素敵だと思うな!」
って言ってくれた!その時、私はこの人しか居ないって思ったんだ!
彼は私といるだけで疲れているはずなのに、こんな私にすら愛をくれて、この世の中に彼以上に優しくて、かっこよくて、素敵な人はいないって!
でも数少ない心を許した友達も両親も、兄弟も、皆その人はやめとけっていうんだよ?
馬鹿みたい!なんでこんな良い人を手放さなきゃいけないの?
私と彼とが出会ったのは運命なの!
だって、彼はNo.1に輝いたとき、いつも私に「いつもありがとうね!これからもずっと大好きだよ!」って言ってくれるんだよ!しかも、これだけじゃないよ!ホテルに行ったときも「【私】ちゃん本当に可愛いね!俺には【私】ちゃんが居ないと生きていけないな〜!」って言ってくれるの!
でもさ、彼にとって私はただの金づるでしかないことは心のどこかでわかっていたんだよ?
でもいいんだよ!彼が私を見ていてくれるなら!
彼は彼なりに私を愛してくれてるし、私も彼のことが大好き!
だから、これまでずっと貰ってた彼のニセモノの愛を私は倍にしてお金で返すね!
これが、私にできる彼への一番の恩返しだから!
「いつか結婚しようよ!これまでも、これからもずっと変わらない愛と金を贈り続けるよ!」
お題:1件のLINE
深夜3時過ぎ1件のLINEがきていた。
「【私】ちゃんはずっと私の支えだったよ。ありがとう!ばいばいまたどこかで会お!」
私がこのLINEに気づいたのは朝6:30頃だった。
ものすごく嫌な予感がした。とりあえず私は
「いきなりどうした?!連絡ちょうだい!」
そう返信した。しかし既読はつかない。
そこからはただひたすら電話をし続けた。
30回ほどしたが電話に出ることはなく、私はとりあえず警察に連絡をし、捜索をしてもらうことにした。
そして彼女は自宅で発見された。
嫌な予感は的中し、首吊りをして息絶えていた。
「なんでもっとはやく気づいてあげられなかったんだろう…この前は元気そうに見えたけど無理してたんだ。」
後悔ばかりが残り寝れない日々が続いた。
そして今もあのときどうすればよかったのか、どうしたら助けることができたのか未だにわからない。
この事件以来、寝ることが怖くなった。深夜3時のLINEに気づけていれば…
今日もいつも通り睡眠薬を飲んで寝ようとした。
しかし、ふと考えてしまった。
「たくさん飲めばもう疲れることはないのかな」
と。そう考えたときにはもう手遅れだった。自分の手には致死量の睡眠薬とコップに入った水。
それを私は口に含んだ。
「あぁ。やっと解放された。」
お題:目が覚めると
「絶対に幸せにするので僕と結婚してくれませんか!」
6年前から結婚を前提に付き合っている彼氏にやっとプロポーズされた。私も彼のことが大好きでもちろん承諾した。
時の流れは一瞬で、気づけば結婚式を挙げて、子宝にも恵まれ、毎日幸せだった。育児は本当に大変で、格闘する日々だった。産まなければよかったと思ったこともあったけれど、子供と夫の笑顔を見てるとそんな想いは全て吹っ飛んでしまっていた。
そしていつの間にか子供も大人になり、結婚をして素敵なお嫁さんをもらうことができた。
私と夫はその頃には70代で、孫と遊ぶために生きていた。
しかし、病気というものは防ぎようがなく、私は胃がんのステージ4と宣告され、延命治療のみを行い、71歳で人生の幕を下ろした。
そこで違和感に気づいてしまった。
「あれ?彼と子供は3年前交通事故で…」
ハッと目が覚めるとそこは自分の部屋で毎日、地獄が始まる場所でもあった。
「夢か… 一生目覚めなければよかったのに。私よりはやく死なないでよ。はやくそっちに行かせて…」
そう3年前のあの日からずっと願い続けている。