握っていた手を離した。
一瞬の出来事だった
友人のAちゃんが学校の3階のベランダから飛び降りようと、幅わずか数10cmの柵の上に座っていた。
私は咄嗟にAちゃんの手を掴んだ。今すぐやめてもらいたかった。だからよくある綺麗事を言った。
「自殺なんてやめてよ!悲しむ人がいるよ!」って。
Aちゃんは目を閉じて、うずくまっている。
Aちゃんは私の瞳を見もしなければ、一言も発さない。けれど飛び降りをやめようとする気配も無い。
「ねぇ1回そこから降りてよ…私でよければいくらでも話は聞くからさ、、」
と言った次の瞬間にAちゃんは座っている体勢を崩して、手を繋いでいる私と一緒に落ちた。
私は咄嗟にAちゃんの手を離して、Aちゃんの座っていた柵に手を伸ばしていた。
柵に両手でぶら下がっている私。下を見ると血だらけのAちゃん。
ここで柵から手を離したら死ぬことは分かった。
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい
誰か助けてお願い誰でもいいから。
「だれか!助けて!落ちそう!誰か!!」
そう叫ぶと教室の方から
どこ?今助けるよ!
という声が聞こえた。
教室に来てくれたのはAちゃんの彼氏さんだった。
柵に掴まっている私の手を掴んでくれた。
私助かるんだ!ほっとして、ふと意識を失いかけた。
すると耳元で
「なんで助けちゃったかな(笑)本当はお前を巻き込むはずじゃ無かったけど、一緒に死んでもらうしか無くなっちゃった。」
そう言い、握っていた手を離した。
浮遊感を味わったわずか2秒後には、横にAちゃんの死体があった。
薄れていく意識の中でハッキリと見えた。
Aちゃんの首の真っ赤な縄の跡。
彼氏のにやりと笑った口元。
あぁそうかAちゃんは元から死んでたんだ。
4/27/2025, 11:49:27 AM