あなたは窓側の席
私は彼の後ろの席
11時~14時くらいの時間の太陽は
窓側の席の人達の眠りを誘う
それは私も例外では無い。
まぶたが重くなってきていた。
目線を黒板ではなく目の前に向けると
明るい髪色をした頭が上下に動いていた。
「ここ問題をじゃあ23番の人解いてみて」
なんて先生が言ってることすら聞いてなかった。
「ねぇ,当たってるよ。」
いつの間にか前の席に座っている彼が振り向いて
私に言ってきた。
「...えっ,はい。」
やばい全然聞いてなかった。
みんなの視線が私に向いていて
なんで聞いてなかったのか後悔した。
「えーっと...。」
「ここ。」
前の席の彼が自分のノートを指していた。
指している所を答えると
「正解。」
と先生の声が聞こえて私は安堵した。
彼にお礼を言おうとして前を向くと
もう彼は前を向いたいた。
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムがなった。
今まで先生の声や
先生に当てられたら生徒の声しか聞こえなかった
教室は生徒の声で溢れかえっていた。
「あの,さっきはありがとう。」
私がそんなことを言うと
「あぁ,いいよ。この時間眠くなるもんな。」
彼はそう言って笑った。
"私はその時彼に心を射抜かれたんだと思う。"
彼は私にでも優しくしてくれた。
私は大体の確率でバスに乗遅れる。
そのため教室で時間潰しのため
課題をやるなんて日常茶飯事だった。
しかし,頭がいいわけじゃない私には
応用問題を解くことができなくて,
「あぁもう,わかんない。」
なんてひとりで机に伏せて呟いていたら
「何が分からないの?」
聞こえるはずがない彼の声がして思わず顔を上げた。
「教えてあげる。」
優しい声は2人しか居ない教室で響いてドキドキした。
いつもはチャラチャラしてる
陽キャなのに
優しいとことか
勉強出来ることとか狡い。
と思いながら私は彼に勉強を教えてもらった。
私の隣に座って教えてくれるところ。
しっかり私の目を見て話してくれるところ。
いつもはしないのにメガネをかけているところ。
前の席に座る彼の勉強している姿が新鮮で
私の脈は大きく波を打った。
私はどんどんあなたに落ちていくみたい。
─────『落ちていく』
結婚して4年はたっているタイミングで
なんで式を挙げることにしたのか。
ウェディングドレスを着てみたいと言う
思いがあったが
私と彼が結婚してすぐに
嬉しいことに子供を授かることができて
出産準備や育児など初めての子育てで
いつの間にかもう4年もたっていた。
もう結婚式はしないかなぁ。
私はそんなことも思っていたら
「そういえば,結婚式してないね。
しよっか。俺ドレス姿見たいし。」
そんなことを言う彼は私に笑いかけていた。
「え?いいの?」
「いいに決まってるでしょ。」
「ありがとう。」
結婚式の準備は思ったよりも
決めることが多くて大変で
とっても時間がかかったがとても楽しかった。
リングガールは自分たちの娘にすることにした。
コンコンドアをノックしてドアが開くと
「綺麗だね。」
普段は見れない姿の夫が私を見て言った。
「純白のドレス,いいよね。そっちもカッコいいじゃん」
普段は見れないウェディングドレスを着てる私が
夫に向かって
いつも話しているはずなのに
今日はなんだか少し緊張した。
そんなところに
「ママ!!パパ!!」
声がした方を見てみると
薄いピンク色のワンピースドレスを着た
可愛い娘がこっちに走ってきた。
「走ったら危ないよ。」
私が言うと
「はーい」
なんだか流されたような返事がしたが
今日は気にしないことにした。
「パパ、ママ可愛いね?」
「二人とも可愛いよ。」
さっきまで緊張していたのに
いつの間にか普通に会話できていて
娘の力かなぁと考えていた。
スタッフさんの
「そろそろお時間です。」
の声を聞いて緊張しはじめた。
扉が開いてゆっくりと歩いていると,
私の友達や夫の友達,家族が笑顔で
「おめでとう」
と言ってくれてる空間はとっても幸せだった。
結婚指輪を持ってくるリングガールの娘は
ニコニコしていて
もう天使のように見えた。
指輪を交換して誓のキスも終わり
記念写真を友達や家族,娘と夫となど
色んな人と写真を撮った。
無事結婚式を終えることができた。
4年経った今でも夫のことが好きだし愛してる。
これからも娘を2人で協力して育てたいと思う。
おじいちゃん,おばあちゃんになるまで
仲がいい夫婦になろうね。
─────『夫婦』
大きな声を上げて生まれた時
2人嬉しそうな顔してた。
2人に笑いかけると幸せそうに顔見合せてたの。
10数年たったらこんなにも変わってしまうの。
ある時から
私が2人が一緒に笑い合うどころか
話してるところも見てないの。
ある時から
私を怒るとき必ずと言っていいほど
「もうすぐ離婚するしいいよもう。」
そう言って話が終わったり
嫌なことがあると
"離婚"
このワードを出してくる。
「そんなの言わないで!!」
心の中で叫んでるの。
"そんなに言うんだったら離婚したらいいじゃん"
"離婚なんて言わないで...2人と離れたくない"
このふたつの思いが心の中にいるの。
この場合どうすればいいの?
どっちかひとつの思いしかなかったら
私は声に出して言えるのに
声に出して言えるほど私の今の意思は強くない。
最近多いの。
お互いがいない所で嫌なこと言ってくること。
同情求めて来ないでね。
私はふたりともが好きだから。
もちろん嫌なことだって私にもある。
でも嫌なことって
自分が怒られてしまった時くらいしか
出てこない気がするの。
机の上に置いてあった紙を見た。
片方はちゃんと埋めてあった。
とうとう出て行っちゃうんだって
私の気持ちなんて知らずに自分勝手。
2人に離れて欲しくなかった時
私は
どんな言葉
どんな行動をすれば良かった?
なんにもできなかった私に声をかけて。
「大丈夫だよ」って優しい声を
─────『どうすればいいの?』
「自分の部屋片付けなさい。」
少し大きな声でそんなことを言うのは母だった。
「...めんどくさい。」
小声でそんなことをつぶやくと
「めんどくさいじゃないでしょ!」と
さっきよりも大きな声で私に言ってきた母は
すぐにでも雷を落としてきそうで怖かったため
駆け足で自分の部屋に向かった。
自分の部屋を開けると
お世辞でも女の部屋とは言い難い
悲惨な状態になっていた。
「これを片付けるなんて無理じゃない?」
なんて小言を零しながら片付けていった。
嫌々ながらも片付けを始めると
いつの間にか気分が乗って楽しくなっていた。
どのくらい時間が経ったのだろう?
いつの間にか私の部屋はどこかの
モデルルームのように綺麗な部屋に生まれ変わった。
「もういいかなぁ...」
疲れた私はベッドに腰を下ろした。
「物置部屋にもたくさんあなたの物入ってるよ。」
なんて母はとことん私のやる気をなくしてくる
「...はーい。」
もうめんどくさいなぁと思いつつ
物置部屋の片付けをした。
「これなんだろう?」
それはお菓子の缶の蓋に
大きく下手くそな文字で
"たからもの"
と書いてあった。
中身を確認してみると
お菓子の付録についてるオモチャの指輪
安っぽいネックレスなどたくさんの物が入っていた。
それといつのものが分からない手紙が出てきた。
"だいすきだよ"
なにこれ?全然覚えてない。
名前も書いてない手紙?
これも小さい子が書いたような
すこし崩れた文字が書かれていた。
「お母さーん。これ何?誰から貰ってた?」
自分の中で当てはまる人物が
居なくてお母さんに聞いた。
「あんた覚えてないの?
その手紙も指輪もネックレスも
あなたの今の彼氏がくれたじゃない。」
懐かしむように母は教えてくれた。
「幼稚園の時も結婚する!!とか言って
一緒に遊んでたじゃない。
その時に彼がくれたものよ。
そしたらあなたが急にお菓子の缶の蓋に
宝物って書いて満足そうに入れてたじゃない。」
もうすっかり忘れてた。
そういえばそうだった。
小さい頃の宝物それは今も変わってなかったみたい
今も昔も指輪もネックレスもを彼から貰ったの
今度は左手の薬指に合う指輪を宝物にしたい
─────『宝物』
彼の隣に座ってテレビを見ている時
私は彼に
「そういえば,普段キャンドルとか使う?」と聞いた。
「1、2回くらいしか使ったことないけど。なんで?」
と彼は言った。
「この間,友達にキャンドルを貰ったんだけど,
使ったことないし,使わないのは友達に申し訳ないから
使ってんならあげようかなって思って。」
私が言う。
「それじゃあ,今日泊まっていい?
寝る前に一緒に使おう。」
彼はそう言って私の顔を見た。
「逆に泊まってってくれるの?私も一緒に使いたい。」そう言うと彼は
「じゃあ決まり。」と言って私の頭を撫でた。
その後は買い物に行ったり,
カフェでお茶したり楽しい時間を過ごした。
時計の針が12時過ぎた頃
「キャンドルそろそろつける?」
「うん。」
私がそう返事をすると彼はキャンドルをつけた。
初めてのアロマキャンドルは
とても落ち着いたいい匂いがした。
「キャンドル送る意味は
ゆっくり疲れを癒して欲しいとか
素敵な時間を過ごしてねとかそういう意味が
あるんだって」
彼が私に言ってきた。
「へぇ,知らなかった。」
「最近忙しそうにしてたから考えてくれたんだね。」
彼は自分の事のように嬉しい顔をしていて
温かい気持ちになった。
彼は私を抱きしめていてくれていて
なんだか体温が上がってぽかぽかして眠くなった
私は彼と一緒に過ごせるなら
次は私からキャンドル買ってみようかなと
思いながら彼の腕の中で眠った。
─────『キャンドル』