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「自分の部屋片付けなさい。」
少し大きな声でそんなことを言うのは母だった。

「...めんどくさい。」
小声でそんなことをつぶやくと

「めんどくさいじゃないでしょ!」と
さっきよりも大きな声で私に言ってきた母は
すぐにでも雷を落としてきそうで怖かったため
駆け足で自分の部屋に向かった。

自分の部屋を開けると
お世辞でも女の部屋とは言い難い
悲惨な状態になっていた。

「これを片付けるなんて無理じゃない?」
なんて小言を零しながら片付けていった。

嫌々ながらも片付けを始めると
いつの間にか気分が乗って楽しくなっていた。


どのくらい時間が経ったのだろう?
いつの間にか私の部屋はどこかの
モデルルームのように綺麗な部屋に生まれ変わった。

「もういいかなぁ...」
疲れた私はベッドに腰を下ろした。

「物置部屋にもたくさんあなたの物入ってるよ。」
なんて母はとことん私のやる気をなくしてくる

「...はーい。」
もうめんどくさいなぁと思いつつ
物置部屋の片付けをした。

「これなんだろう?」
それはお菓子の缶の蓋に
大きく下手くそな文字で

"たからもの"

と書いてあった。

中身を確認してみると
お菓子の付録についてるオモチャの指輪
安っぽいネックレスなどたくさんの物が入っていた。
それといつのものが分からない手紙が出てきた。

"だいすきだよ"

なにこれ?全然覚えてない。

名前も書いてない手紙?

これも小さい子が書いたような

すこし崩れた文字が書かれていた。

「お母さーん。これ何?誰から貰ってた?」

自分の中で当てはまる人物が
居なくてお母さんに聞いた。

「あんた覚えてないの?
その手紙も指輪もネックレスも
あなたの今の彼氏がくれたじゃない。」

懐かしむように母は教えてくれた。
「幼稚園の時も結婚する!!とか言って
一緒に遊んでたじゃない。
その時に彼がくれたものよ。
そしたらあなたが急にお菓子の缶の蓋に
宝物って書いて満足そうに入れてたじゃない。」


もうすっかり忘れてた。
そういえばそうだった。


小さい頃の宝物それは今も変わってなかったみたい

今も昔も指輪もネックレスもを彼から貰ったの

今度は左手の薬指に合う指輪を宝物にしたい





─────『宝物』

11/21/2022, 8:08:38 AM