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11/14/2022, 3:41:39 AM

いつものように,窓の外を見ていると

「たまには外に出て散歩してみるのも
いいと思いますよ。」

看護師さんが私に向けて言ってきた。

「そうですね。久しぶりに外に出てきます。」

私は今,階段から足を滑らせて骨折してしまい,
入院生活を送っている。

車椅子を久しぶりに漕いでいるため,
少し疲れてしまった。

木の下で少し休憩してから,病室に戻ろう。

そう考えて私は木の影に向かって車椅子を進めた。

日が昇っているのに少し寒い。
もうとっくに冬が始まっているような気がした。
外の空気にワクワクしていてブランケットを
持って来ていなかった。
まだ秋らしいがもう十分外は寒くなっていた。

"ブランケット持ってこればよかった"

と少し後悔をしていた私に

「大丈夫ですか?」
と斜め後ろから優しそうな声がした。

「えっ」
私は驚いてその言葉に答えることが出来なかった。

「あっ,ごめんなさい。突然声掛けて」
申し訳なさそな声に

「あぁ,全然大丈夫です。...なにか私に用ですか?」
私は言う。

「いえ,寒そうにしているように見えて声掛けました。
良かったら上着使ってください。」

彼は自分の上着を貸してくれた。

「そんなのあなたが寒くなっちゃうじゃないですか。」私は慌てて言った。

「大丈夫です。その代わりにお話しませんか?」
私は申し訳ないと思いながら頷いた。


彼は今日,友達のお見舞いに来ていたらしい。

私と彼は同い年だった。

好きなアーティスト,趣味が同じで他にも好きなものが共通していて,仲良くなるのに時間がかからなかった。
好きな物の話が盛り上がり過ぎて
時間が経つのが早く感じた。

「もうこんなに話しちゃったね。」私が言う。

「ほんとだ...また話そう。ここで。」彼は言った。
そんな彼の言葉に頷きながら病室に帰ることにした。

何日も彼とあの場所で話した。
彼のと会話は
いつも面白くて魅力的で
いつも引き込まれるように聞いていた。
私はいつの間にか彼を好きになっていたみたい。

でもそれも今日で終わり。

私は今日で退院することになっている。

今日も彼と話す予定を立てていた。

その時に退院することを伝えよう。

そう思っていてもで退院することが伝えられない。
彼との関係が終わってしまうから。

帰り際,私は彼に

「...また会いましょう。」と
目に涙を浮かべて言った。

彼の顔は見れなかったけどしっかり言えた。

彼にはっきりサヨナラといえなかったけど,
それで良かったと私は思った。

またどこかで出会えると信じているから。





─────『また会いましょう』

11/13/2022, 12:34:28 AM

「やっぱ,ここだよね!!」

大きな声で上を見上げている彼女

「なんで僕を連れてきたんですか?」

僕は言う

「なんでって...好きだから?」


遡ること数日前
クラスのムードメーカーの彼女に対して
僕はただのクラスの委員長
絶対に交わることの無い関係のはずだった。

そんな彼女は突然僕に告白してきたのだ。
嘘コクの可能性ほぼないと言っていいだろう。
彼女が悪ふざけで
そんなことをする人でないことは分かっているし
頬が赤く火照ってる様子や耳が赤いところから
ホントに嘘では無いようだった。

「ねぇ,返事は?」

「あぁ,えっと...時間下さい。」

断ることも受け入れることも出来ずに流してしまった。


「ねぇ,遊園地行こう!!」
そんな彼女の言葉通りに
現在僕は彼女に連れられて遊園地に来ていた。

「ねぇ,あれ乗ろう!」

彼女が指差しているは
2本のアームでぶら下げられたゴンドラが
空中でグルグル回るという
基本のコンセントが絶叫以外のなにものでもない
乗り物だった。
どうしてスリルをお金で買う必要があるのか。
僕はそう思いながら
テンションが高い彼女に着いていく。





─────『スリル』

11/11/2022, 8:43:03 PM

「あーぁ空飛んでみたいなぁ。」私が言うと彼女は

「なんで?」と言う

「自由に飛べるのって良くない?」私は彼女に問う

「あーぁ,良いかも。でもどうして急にそう思ったの?」

今度は彼女から問いかけてきた。

「うーん...。なんとなくかな笑」
本音を言った時の反応が恐いから濁した答えを言った。

私が空を飛んでみたい理由
自由があるから
私は無意識の自分を苦しめてる気がしている。
家族の期待
友達や先生からの期待
そして自分自身の期待。
全ての期待に応えられるように
"私が"頑張らないと
みんなからの期待されるってことが
嬉しかったはずなのに今はそれが辛い。
私がどんな行動をしても 鳥かごにいる鳥のように
広い世界に飛び立つことが出来ない。

「みんなの期待が辛い」

こんなこと言ってしまった時,
その空気に耐えられる気がしない。

私は飛べない翼を持っているみたい。
これ以上
ズタズタに切り裂かないように行動してきたけど,
その行動が逆に首を絞めていたみたい。

彼女は言った。

「あなたとわたしは違うから
あなたが考えてること完全に理解できる訳じゃないけど,
もし困ってるなら,迷ってるなら
助け求めてもいいんじゃないの?」

彼女の言葉は驚く程に心に響いて
少し軽くなった気がした。

「...うん,ありがとう。」

そうか助け求めてもいいのかな?

私の翼は今は飛べない翼なだけで
絶対に飛べない翼なんてあるはずない。

自由に空を飛べる日を目指して
今日も一日をすごしていく。





─────「飛べない翼」

11/10/2022, 8:42:17 PM

秋って言ったらなんだろう?
もみじやイチョウ,ススキとかかな?
最近はずっと車移動しているから
外を眺めるなんてしてこなかったことに気がついた。

「そうだ!ねぇ一緒に散歩に行こう?」

私は彼にそう言った。

「えっ」

彼はあまり乗り気じゃなかったけど
一緒に言ってくれるようだ。
外は思ったより寒くて
散歩に行こうなんて言って後悔していたら,
彼は私の手をつないで歩き出した。

「こうやったら暖かくなるでしょ」

彼は言った。

「...うん!」

ちゃんと私のことを見てくれる彼。
彼と久しぶりに手をつないだ私は
嬉しくて少し恥ずかしくてとても幸せだと思った。

「散歩してみるのもいいね!」
私はそう言って笑いかけながら彼を見た。

「...そうだね。また一緒に行こう。」
彼はそう言って私を見た。
マスクをしてしても彼が笑っているのがわかる。

「キスしたいな」

なんて思っていたら,
彼が私のマスクを取ってキスをしてきた。

「えぇ!?」

「ごめん,キスしたくなっちゃった。」

少し笑いながら,

「ほら帰るよ」
なんて言って
黄金色に輝いているススキを見ながら
色んな景色を彼と見たいと思った。





─────『ススキ』

11/9/2022, 1:58:57 PM

目を覚ますと私は病院というところにいたらしい。
看護師さんが

「ここがどこか分かりますか?」と言ったが,
私は答えることが出来なかった。

消しゴムで綺麗に消されているように真っ白な頭の中。私は言葉を失い,過去を失った。
私は事故にあったそうだ。
事故に遭ったと言われたらそんな気がしてきた。
誰かと一緒に歩いていたような,いないような。

なんだか廊下が騒がしくなった。
「...ちょっと!起きたなら連絡してよ!!」
「...はい?」
突然こっちを向いて男の人が話しかけてきた。
誰だろう...?

「すいません。誰ですか?」

こんなことを聞くと
彼はひどく悲しそうな顔をしていた。

「僕は,君の彼氏だよ。急にごめんね。
そんなこと急に言われてもわかんないよね。」
彼は言った。

「...ごめんなさい。あまり覚えてなくて...。」

「そっか...じゃあ今日は帰るね。
明日気持ちが落ち着いたらまた来るね。」

そう言って彼は病室を出た。
彼は最後まで悲しい顔をしていた。

何時間経っても,
私はその顔が脳裏に焼き付いて離れない。
記憶が戻ってくるのを願いながら私は目をつぶった。





─────『脳裏』

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