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いつものように,窓の外を見ていると

「たまには外に出て散歩してみるのも
いいと思いますよ。」

看護師さんが私に向けて言ってきた。

「そうですね。久しぶりに外に出てきます。」

私は今,階段から足を滑らせて骨折してしまい,
入院生活を送っている。

車椅子を久しぶりに漕いでいるため,
少し疲れてしまった。

木の下で少し休憩してから,病室に戻ろう。

そう考えて私は木の影に向かって車椅子を進めた。

日が昇っているのに少し寒い。
もうとっくに冬が始まっているような気がした。
外の空気にワクワクしていてブランケットを
持って来ていなかった。
まだ秋らしいがもう十分外は寒くなっていた。

"ブランケット持ってこればよかった"

と少し後悔をしていた私に

「大丈夫ですか?」
と斜め後ろから優しそうな声がした。

「えっ」
私は驚いてその言葉に答えることが出来なかった。

「あっ,ごめんなさい。突然声掛けて」
申し訳なさそな声に

「あぁ,全然大丈夫です。...なにか私に用ですか?」
私は言う。

「いえ,寒そうにしているように見えて声掛けました。
良かったら上着使ってください。」

彼は自分の上着を貸してくれた。

「そんなのあなたが寒くなっちゃうじゃないですか。」私は慌てて言った。

「大丈夫です。その代わりにお話しませんか?」
私は申し訳ないと思いながら頷いた。


彼は今日,友達のお見舞いに来ていたらしい。

私と彼は同い年だった。

好きなアーティスト,趣味が同じで他にも好きなものが共通していて,仲良くなるのに時間がかからなかった。
好きな物の話が盛り上がり過ぎて
時間が経つのが早く感じた。

「もうこんなに話しちゃったね。」私が言う。

「ほんとだ...また話そう。ここで。」彼は言った。
そんな彼の言葉に頷きながら病室に帰ることにした。

何日も彼とあの場所で話した。
彼のと会話は
いつも面白くて魅力的で
いつも引き込まれるように聞いていた。
私はいつの間にか彼を好きになっていたみたい。

でもそれも今日で終わり。

私は今日で退院することになっている。

今日も彼と話す予定を立てていた。

その時に退院することを伝えよう。

そう思っていてもで退院することが伝えられない。
彼との関係が終わってしまうから。

帰り際,私は彼に

「...また会いましょう。」と
目に涙を浮かべて言った。

彼の顔は見れなかったけどしっかり言えた。

彼にはっきりサヨナラといえなかったけど,
それで良かったと私は思った。

またどこかで出会えると信じているから。





─────『また会いましょう』

11/14/2022, 3:41:39 AM