今日の私の心予報はところにより雨です。
私は夏休み、入院のために部活に行けなかった。それは休み明け1週間くらいまで続いた。
本日は雨。
ー今日も部活なし、か。先輩、私の事サボり魔とか思ってるかもしれないな。そもそも気にしないかー
私が玄関ホールに出た時だった。雨に打たれながら走っているのは先輩だった。奇跡的だった。先輩の濡れたTシャツがいい感じに透けていて少し…いや、だいぶ色気が出ていた。私が見とれていると学級担任の先生に捕まった。
「何何〜?アイツ?青春だねー」
と言いながら先生は先輩を呼び止めたのである。
「あれ?あんた、相棒は?」
「あぁ、多分3階にいますよ。」
「早く中に入りー?風邪引くよ。」
「引きませんよ笑 あと少しで走り終わるんで。」
先輩はまた走り出した。私の心は完全に晴れ予報。ノックアウトだった。
幼馴染くんと帰る時間が被ったわけでもないのに、いつもの信号のところで出くわしてしまった。私は、なんと声をかけたらいいのかわからない。信号が赤になってかける言葉を考えていた。
ーやっほーー
ー君、1人なんだー
ーまた出くわしたねー
どれも違う。私らしくない。そんなに親しくなった覚えもない。どうしようかと悩んでいるうちに信号が青に変わり幼馴染くんは歩き出した。まだ私は動けないでいる。
「…君!!」
とっさに出た言葉はこんなにも単純だった。私はずっと君の名前を呼んでいたね。君に支えられてばかりだ。でも今日ばかりは違うらしい。幼馴染くんは振り返らなかった。私の声は聞こえていた。私の声は届いていた。届いていた…はずなのに。君にはもう届かないんだね。
先輩も幼馴染くんも諦めた途端に何かが途切れた。失った瞬間に希望が消えた。私の心はところにより雨なんかじゃなかった。最初からずっと雨だったんだ。
特別な存在だった人…私の大好きな先輩。
3月14日。先輩は卒業した。久しぶりに見た先輩は増々かっこよくなっていて私の自慢の先輩だった。最後に先輩と話をしたかった私は最後まで粘っていた。最後の勇気はどこからもでてくるわけなんかなく、悔いを残したまま先輩を見送ることしか出来なかった。帰り道、先輩との思い出が1つ1つ蘇った。走る姿、勉強する姿、歌う姿…笑う姿。そうだ、先輩は最後まで笑顔だった。私はそんな先輩が大好きだった。私の特別な存在だった。もう、会うことさえもなくなってしまうのかな、先輩。
「ねぇ君、こっちから一緒に帰ろう…」
「えー、めんどくさい」
とか言いながらもついてきてくれる幼馴染くん。できる女のさしすせそって知ってる?と尋ねる私に
「騒がない・静か・素直・背伸びする・掃除上手」
と幼馴染くんは口を挟んだ。違うよと苦笑する私に幼馴染くんが尋ね返す。
「なんで今日、こっちから帰ってなんて言ったの?」
「ん〜…ただ単に一緒に帰りたかったから」
じゃあねと私は歩き出す。家に着くと後ろから幼馴染くんが走って来た。
「あのさしすせそって…何?」
「流石・知らなかった・すごい・センスいい・そうなんだ」
それだけのために走ってくるなんて…
「また家まで着いてきちゃったね。前にも追い払った記憶があるんですが?」
「知らねーよ…」
「もう遅いから帰りなよ」
「クソが…」
そう言って幼馴染くんは私の腕を優しく殴った。言葉が出ない私を置いて幼馴染くんは帰って行った。君が特別な存在になるなんてことこの先あるのかな。
先輩の優しさが染み付いた髪…幼馴染くんとの思い出が残る髪…私は髪をバッサリ切った。元々そう長くはなかったけれど。少しでも楽になりたいがために刈り上げまでしてツーブロックになった。鏡に映るのはもちろん、男の子みたいな私。春風になびく髪なんて残ってもいなかった。私は今、恋と言うものを諦めた。好きという感情さえも捨ててしまった。残る髪に触れて改めて実感するんだ。
ーあぁ、私…失恋したんだー と。
あ、えっと…告白してもしなくても、先輩といる時は気まづかった。お互いに人見知りでしかも先輩後輩だからだ。先輩との時間が楽しくて、でもそんな時間も明日で終わりで…先輩、今からもっと知りたいって言ったら遅いですか?
前回投稿した日から時は流れ、次第に先輩を見る機会もほとんど無くなった。それでも私は先輩の姿を探し続けて先輩の姿を追った。私の努力ももう少しで終わりを告げる。明日が…卒業式だからだ。先週の金曜日、卒業生を送る会が開かれた。そこで久々に目にした先輩は髪も短くなって、涼し気な顔をしていた。2年が企画したクイズの決勝まで残り、見事に優勝した。先輩が数学を解く姿、先輩が英語でミスをするお茶目な姿、優勝した後に
「余裕でした( ¯﹀¯ )どや」
と言う姿。全てが身にしみた。そして好きだという気持ちがまた溢れ出した。私にはやっぱり先輩が必要なんですよね…先輩と離れたくないです。
随分前の話だ。先月のバレンタイン。私は君に渡したいと思った。なぜ?って、それは周りを警戒しているから。もし幼馴染くんが本命を貰ったとして、私の元から離れていったら…そんな事考えたくもない。私は君に興味がある。君のことをもっと知りたい。それでもこの感情はまだ好きなのかどうかもわかっていない。
「ねぇ君、これ!」
「ありがと」
特別感もない今までと同じようなトーン。意味だけはちゃんとあって欲しい。そして、どうしてこんなに幼馴染くんへの想いが足りないかと言うとその後に起こった出来事がきっかけだった。
「なぁ、これ見ろよ」
部活が終わって帰ろうとする私の手を引く男子達。幼馴染くんの下駄箱にはピンクに包まれた本命チョコが入っていた。あ、きっとあの子だ。どんな反応をすればいいのか私には分からなかった。そのチョコを持った幼馴染くん。ニコッと笑顔を見せる幼馴染くん。私の中で何かが崩れた。その場から逃げるように学校を飛び出し、急いで家に帰った。
別に私じゃなくても良かったんだ…
そんなことを考えてまた次の日。気まづいままでまた次の日。私は幼馴染くんにどう接すればいいのかすっかり忘れてしまった。
お久しぶりです。また間が空いてから投稿するかもしれないので、その際はまたよろしくお願いします。
時計の針。カチカチカチと音を鳴らしながらその時は迫っていた。
今日も部活かー。やっぱり先輩いないとモチベ上がんないし記録も伸びない。私立受験間近だからか最近はあんまり会わなくなってきた。私から会いに行く以外はね。
思えば、合唱祭も良い思い出だな。私、放送委員会だったから率先して先輩のクラスの放送になったっけ。本番。今までで一番上手く放送できて、観客席よりも近い舞台袖で先輩の姿を覗いた。先輩は真剣に歌っていた…これが最後の合唱祭だもんね。先輩の姿と聞こえた声は私の中でリンクした。自然と涙が溢れ出し、私は熱くなった胸を押さえた。どうしようもなく先輩が恋しくなって…
窓の外は別世界みたいだな。やっぱり先輩は来ないか。……あ!先輩だ!私は思わず目で追ってしまった。すると、先輩は視線に気づいたかのように上を見上げた。目が離せない。目が合った…気がした。どうか先輩に気づかれていませんように…
高鳴っている胸も好きと思える今も、募っていく想いも…カチカチカチと秒針が進む毎に過去のことへと変わっていく。私はいつになったら先輩の事、諦められるのかな?
読んで頂きありがとうございます。今まで実話を投稿し続けてきたのですが、私の勉学、部活動の関係でしばらく投稿を控えたいと考えています。時間に余裕が生まれ次第、再開すると共に溜まりに溜まった先輩や幼馴染くんとのエピソードを載せていこうと思います。しばしの別れです。また、読んで頂けたら幸いですm(_ _)m
溢れる想いは先輩に注がれている
日曜。私が大好きな先輩と会うこともない日。1人で散歩して1人で音楽を聴いて…でもスマホを開く度に見える待ち受けは先輩との2ショット。先輩の事を考えずにはいられなかった。私は先輩の夢を見たことがあった。私は先輩と仲が良くて話して笑って…そして先輩は私を抱きしめた。夢とはいえ、あの感覚が今も体に残っている。先輩の匂いや温もりはずっと私の体に残っている。目覚めた時、とても心地が良くて、自然と涙が流れていた。夢が示していたことは先輩への独占欲だった。私の想いは日々増していく。先輩に会った時、想いは溢れ出す。
好き…ただそれだけの事なのに、こんなにも胸が高鳴って熱が上がって。私はもはや先輩中毒だ。先輩がいないと生きていけない。この限界を知らない想いは一体、どうすれば良いの?
想い。それは好きじゃなくても可愛いとかカッコイイとか、そんな気持ちが溢れ出すこともあるだろう。
夏は冬に感謝、冬は夏に感謝ってこういうことなんだなと散歩をしながら実感していた私はあることを思い出す。
夏の話。私は少し遠くの神社の大祭があることを知ったその日。
「へぇ、みんな行くんだ。私、行ったことない」
そう呟いた時だった。
「じゃあ、俺と行こう。予定ないなら一緒に行こう」
幼馴染くんがしれーっと会話に交ざってきた。そして、断る理由もなかったため、本来の目的も忘れ、先輩探しの旅に出ることとなった。実際、私と女子1人を含んだ5人で行った。私も一応性格は男よりなため、女子がいると自然とリードしてしまう。はぐれないように差し出した手を友達と握り、歩いて回る。それを羨ましそうに見つめながら飼い犬のように後ろをついてくる幼馴染くん。男子と絡まないのかよと内心思いながら私は先輩を探していた。それから私たちは晩ご飯をそれぞれ買って食べた。私が買ったたこ焼きが余ったので、保育園からの友達(男)にあげようとすると、それもまた横からひょこっと出てきた幼馴染くんが食べてしまった。
「君さ、さっきもうたこ焼き食べてたよね!?」
「え、だってコイツがくれるって言ったから」
本当に子犬のようだ。どんだけ飼い主を慕っているんだ。それから定番のおみくじ。私は中吉だった。恋愛は告白すると良い。先輩にだったら何度でも告白できるしと思っていた。
「恋愛運最悪〜。俺の恋叶わないんだってさ…」
「どれどれ……これは…残念だね」
と2人で笑いあっていると、偶然出くわしたクラスメイトに
「あれ?ここってもう出来てるの?」
と勘違いされてしまった。確かに幼馴染だけど、そんな風には思われたくなかった。
とそんな事があったのだ。私が幼馴染くんに溢れる想いはきっと「可愛い」だけなのだろう。もし、恋愛感情が出てくるとするならば、その時はきっと裏でほかの何かも溜まっていくのかもしれない。