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特別な存在だった人…私の大好きな先輩。

3月14日。先輩は卒業した。久しぶりに見た先輩は増々かっこよくなっていて私の自慢の先輩だった。最後に先輩と話をしたかった私は最後まで粘っていた。最後の勇気はどこからもでてくるわけなんかなく、悔いを残したまま先輩を見送ることしか出来なかった。帰り道、先輩との思い出が1つ1つ蘇った。走る姿、勉強する姿、歌う姿…笑う姿。そうだ、先輩は最後まで笑顔だった。私はそんな先輩が大好きだった。私の特別な存在だった。もう、会うことさえもなくなってしまうのかな、先輩。


「ねぇ君、こっちから一緒に帰ろう…」

「えー、めんどくさい」

とか言いながらもついてきてくれる幼馴染くん。できる女のさしすせそって知ってる?と尋ねる私に

「騒がない・静か・素直・背伸びする・掃除上手」

と幼馴染くんは口を挟んだ。違うよと苦笑する私に幼馴染くんが尋ね返す。

「なんで今日、こっちから帰ってなんて言ったの?」

「ん〜…ただ単に一緒に帰りたかったから」

じゃあねと私は歩き出す。家に着くと後ろから幼馴染くんが走って来た。

「あのさしすせそって…何?」

「流石・知らなかった・すごい・センスいい・そうなんだ」

それだけのために走ってくるなんて…

「また家まで着いてきちゃったね。前にも追い払った記憶があるんですが?」

「知らねーよ…」

「もう遅いから帰りなよ」

「クソが…」

そう言って幼馴染くんは私の腕を優しく殴った。言葉が出ない私を置いて幼馴染くんは帰って行った。君が特別な存在になるなんてことこの先あるのかな。


先輩の優しさが染み付いた髪…幼馴染くんとの思い出が残る髪…私は髪をバッサリ切った。元々そう長くはなかったけれど。少しでも楽になりたいがために刈り上げまでしてツーブロックになった。鏡に映るのはもちろん、男の子みたいな私。春風になびく髪なんて残ってもいなかった。私は今、恋と言うものを諦めた。好きという感情さえも捨ててしまった。残る髪に触れて改めて実感するんだ。

ーあぁ、私…失恋したんだー と。

3/24/2023, 5:49:46 AM