I LOVE…
私には、とんでもなく好きなものがある。愛してると言えるほどたまらなく好きなものがある。
四六時中好きなものについて考えている日もある。ミスをして怒られている時でさえ、考えてしまってたりする。
だけど、その、好きなものについても、好きだという気持ちも、誰にも言えない。言わない。
言ったら、否定されそうで。否定されたら、傷つくから…。
それに、その好きなものは、それを知らない人たちには、存在を知らない限り、見ることも触れることもほぼ不可能だから。
でも、否定されたとしても、分かってもらえなくても、好きなものは好きだ。愛でて何が悪い?!
皆それぞれ愛でてるものが一つや二つはあるだろう?!
ちなみに私が好きなものは…
……………………………………やっぱ言わない。
でもその内言いたくなるかもね。
タイムマシーンに乗って
タイムマシーンに乗ってあの頃に戻りたい。
・5歳の頃に戻りたい。この頃にお菓子をたくさん食べるようになり、太ってしまった。
だから、戻ったらお菓子をあまり食べないようにするのだ。
・9歳の頃に戻りたい。テレビを近くに見すぎて視力が落ちてしまった。
だから、戻ったらテレビは必ず離れて見て視力を守るのだ。
・10歳の頃に戻りたい。親からの“理不尽なこと言われても無視しろ、我慢しろ”と教わり、その通りにしたせいで何も言えなくなってしまった。
だから、戻ったらムカつくこと言われたら「グォラァアッ!」てなぐらい言いたい放題言ってやるのだ。
・16歳の頃に戻りたい。世間体や勧めで行った進路は自分には向いていなかったかも。本当はやってみたいことがあったのに。
だから、戻ったら自分のやりたい進路に進んでやるのだ。
もひとつ、仲の良い友達ともっとたくさん遊んで、大事にすれば良かった。連絡先も知らずに、離ればなれになってしまった友達もいる。
だから、戻ったらもっと友達とたくさん遊んで、連絡先も交換しまくってやるのだ。
…こういうように後悔することはたくさんあるのだが。
そもそも過去の自分はその時を大事に生きなかったからこうなったのだと思う。
だから、戻れないなら今この時を大事に生きて、未来になって、あの頃は良かったと思えるような過去にしていくのだ。
短い小説 『閉ざされた日記』
一度だけ、恐ろしい日記を見たことがある。
他所さまのペットの世話をするバイトをしていた時のこと。
何回か行っているが、少しばかりやんちゃな性格で毛や排泄物が所々ついており、なかなか大変であった。
ある日、部屋を掃除している時、タンスにぶつかり、中のものが全部出てきてしまった。
一つ一つ拾い、戻していると、落ちたものの中から高価そうな日記が出てきた。
日記は鍵付きだが、鍵は掛かっていなかった。
飼い主さんの日記…?
少し興味が湧き、中を見てみた。
“○月○日、
ウチに可愛いコがやってきた!
緊張してるのかな?ぷるぷるしてて可愛い~💠
名前何にしようかな?超可愛い名前にしよ!”
最初の数日間は微笑ましいことが書かれていた。
だが、日記のテンションは徐々に下がっており、絵文字も少なくなっていた。
その後、筆圧が強すぎたのか、一部破れており、殴り書きで書かれているページがあった。
そのページは、読みにくかったが、こう書いてあった。
“✕月✕日、
誰も分かってくれない。
誰も気にかけてくれない。
私のことがどうして分からないの??
分かってくれない奴らは皆まとめてツブス”
まだページはあったが、これ以上は見なかった。
帰ってきた飼い主さん。ニコニコしているが、よく見ると髪が乱れていた。
飼い主と少し雑談したが、多分私の声は震えていたかもしれない。飼い主さんは終始ニコニコ。このニコニコが本物だとしたら、あの日記は嘘か他の誰かの日記だろう…。そうであってほしいものだ。
今はバイトを辞め、接点も完全になくなった。
あの家のペットの世話は他の人がやっているようだが、あの飼い主さんは幸せに暮らしているだろうか。ぜひとも幸せであってほしいものだ。
短い小説 『木枯らし』
とある山道を歩いている時のこと。
表情豊かな山は眠りについているように見えた。
落葉樹は葉をひとつ残らずなくし、常緑樹は葉の鮮やかさを失っていた。
所々伐採された木々があった。無念にも切られた木々を埋めるように雪が積もっている。動物の声はおろか、気配すら感じ取れない。山は冬の寒さに対応し、同時に自らの活力を失っていた。
山はどうしてこんなにも雪が積もるのだろう。自分が住んでいる地域とは大して標高差は変わらないのに、少し高いだけで雪にまみれるとは。ここに住む人たちも、さぞや活力を失っていることだろう。
ひゅう~…
冷たい乾いた風が目の前を通りすぎた。その風は枯れ葉を連れてどこかへ去っていった。
木枯らしはこの季節でも健在であるようだ。
木枯らしというのは哀愁漂わせる。山やその生き物たちに冬を知らせ、冬眠を促しているような感じ。
今では山の生き物はほとんど冬眠しているというのに、木枯らしは止まない。
人間にも冬眠を促しているのか?
…悪いが、そうしてる暇はない。生きるためにはどんな季節でも活動しないといけないのだ。
そう、どこかへ行った木枯らしに話しかけるように呟き、目的地へと再び歩いた。
短い小説 『美しい』
万里は町行く人々を眺めていた。
人々の顔を見るたびに思う。この人はなんでこんな面白い顔をしているのだろうと。
やけにふさふさした髪。ツルツルな頭。やけに濃い髭。やけに寄った目。広いおでこ。たらこ唇、etc…。
だから面白がって勝手に占ったりしていた。この人は肌が白いからインドア派だなとか、髭が長いから自信家なのかなとか。
だが、そんな中で美しいとしか言えない人を一度だけお目にかかったことがある。何と言うか、顔のパーツが全て美形で、尚且つ整った組み合わせなのだ。
その人を見た時、一瞬だけ目が合った。だが、向こうはこちらのことなぞ気にもかけていないし、見てもいないだろう。
こんな辺鄙な町に来るということは、この町に用があるということだ。もしや、誰かの恋人か?すると、やがて結婚するのだろうか?それならいつでも会えるな。と、にやにやと笑っていた。
そう笑っていた時のことを思い出す。夢のひとときは一瞬だった。その人はそれ以来一度もこの町に来なかった。
なんだ、恋人に会いに来たのではないのか。
もし恋人がいなかったら、ナンパしとけば良かったと、今も窓の外の遠くを見つめた。