茶園

Open App

短い小説 『木枯らし』

 とある山道を歩いている時のこと。
 表情豊かな山は眠りについているように見えた。
 落葉樹は葉をひとつ残らずなくし、常緑樹は葉の鮮やかさを失っていた。
 所々伐採された木々があった。無念にも切られた木々を埋めるように雪が積もっている。動物の声はおろか、気配すら感じ取れない。山は冬の寒さに対応し、同時に自らの活力を失っていた。

 山はどうしてこんなにも雪が積もるのだろう。自分が住んでいる地域とは大して標高差は変わらないのに、少し高いだけで雪にまみれるとは。ここに住む人たちも、さぞや活力を失っていることだろう。

 ひゅう~…

 冷たい乾いた風が目の前を通りすぎた。その風は枯れ葉を連れてどこかへ去っていった。
 木枯らしはこの季節でも健在であるようだ。
 木枯らしというのは哀愁漂わせる。山やその生き物たちに冬を知らせ、冬眠を促しているような感じ。
 今では山の生き物はほとんど冬眠しているというのに、木枯らしは止まない。
 人間にも冬眠を促しているのか?
 …悪いが、そうしてる暇はない。生きるためにはどんな季節でも活動しないといけないのだ。
 そう、どこかへ行った木枯らしに話しかけるように呟き、目的地へと再び歩いた。

1/17/2023, 3:57:15 PM