komaikaya

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1/25/2026, 5:35:36 AM

「アンタの夢になんか、興味ないから」

 聞き覚えのある、声がした。
 床に膝をつく俺を、誰かが見下ろしている。
 見上げても顔も表情も、『逆光』で見えない──が、俺にはそれが誰なのか、すぐにわかった。

「……だよなぁ。夢なんか……ホント、どーだっていいよな?」

 いつもの悪夢から、いつもとは違う目覚め方をした俺は、独り言ちる。異動先での新しい仕事は想定していたよりも重く苦しく、俺の精神も想定外に繊細だったが故に、俺はこの悪夢を見始めた。

 ああ、でも……そうだ。
 俺だって、こんな悪夢には、興味なんかない。

 こうして俺の悪夢に終止符を打った彼女に、俺は勢いで連絡し、そして会う約束を取り付けた。
 大学時代もいまも、二人きりで会ったことなんかないにもかかわらず。

「もう先週になるんだけど、おまえが俺の夢に出て来てくれたのさぁ、マジで助かったんだわ〜。今日はおごる、なんでも頼めよ」
「……なにを言ってるのか、よくわかんないんだけど」
「だよな! まぁいいじゃん、飲もうよ」

 声が……ひたすら、懐かしい。
 夢の中で聞いた声と同じだ。

「で。そちら様の夢にお邪魔したとかいう私は、いったいなにをしたの?」
「いやでも、おまえ。人の夢のハナシに興味ねぇだろ?」

 そうやって眉間に、思いっきりシワ寄せて、俺をにらんで──大学のときには、考えられなかったな。

「いつだかの合宿で、そんな話題になったとき。おまえ、適当なこと言ってその場から抜けてさ、俺はそれになんとなくついていって、もしかして逃げた? って訊いたら、そう言ってたじゃねーか」

 その場に流されたり同調したりしないのが、ちょっとカッコよくて、憧れてたんだ。
 けど俺は、彼女の視界には少しも入ってない──それが不満で、そのガキっぽいプライドを守りたかった、だから。
 あの頃の俺は、彼女の側にもっと踏み込んでやろうとかを、考えなかったのだ。

「まぁ、確かに興味ないんだけど、でも今回のはさすがに」
「フッ、興味湧いた? つっても、大したことないよ? ただそっくりそのまま、『アンタの夢になんか興味ない』って言い放って、去っていっただけたから」

 あーあ。嬉しくなっちゃってるよ、俺。
 ふと視線が外れ、その隙に俺は、彼女の眉間に手を伸ばして、触れて──いつかサークルで見た笑顔、けれど俺に向かってじゃなかったアレが見たいんだけどなぁ、そう思いながら、シワを押し広げてみる。
 
「フッ」
「……?」

 思わず、笑った。彼女の顔がほんのり赤いのは、酒のせいか気のせいか、なーんて──そんな都合のいい解釈をしてしまうくらい、俺はもうダメらしい。が、いまは引け。ってか不用意に触れてからいろいろ気づくとか……なぁ?
 
「なぁ。来週末、また誘ってもいいよな?」
「うん、いいよ」

 帰り際。割と緊張して訊いたら、あっさりとOKされた。なんだこれ。ヘタレじゃない俺、すげぇ。

 そうだ、こうなったら、ついでに転職してしまえばいい。こうして彼女に連絡出来た俺なら、そりゃもう、なんだってやれるはずだろ?

1/24/2026, 9:49:13 AM

 誰かに『こんな夢を見た』のだと始められると、つい身構えてしまう。私は人の夢になど、まったくもって興味が湧かないタチで、興味があるフリすら出来ない可愛げのないオンナだから──と、そう思っていたのだけれど。

「もう先週になるんだけど、おまえが俺の夢に出て来てくれたのさぁ、マジで助かったんだわ〜。今日はおごる、なんでも頼めよ」

 呼び出され、なにも考えずにそれに応じた私に、奴は開口一番にそう言った。
 それでポン、とメニューを手渡されても……いや、どうしろっていうの?

「なにを言ってるのか、よくわかんないんだけど」
「だよな! まぁいいじゃん、飲もうよ」

 大学生の頃にサークル仲間として知り合った奴とは、卒業して社会人になってからも、何度も会っている。が、こんなふうに二人きり、というのは、そういえば初めてだった。

 共通の友人たちの、それぞれに知っている現況を教え合い、大学時代の他愛のない思い出を話したり──それはそれで楽しいし、いいんだけど。

 でも、一向に私が登場したという夢の話にならないのは、どういうことなんだろう。さすがに気になるじゃないか。

「で。そちら様の夢にお邪魔したとかいう私は、いったいなにをしたの?」
「いやでも、おまえ。人の夢のハナシに興味ねぇだろ?」

 ……はぁ?
 自分でもわかるくらいに眉根を寄せ、奴をにらんでいると、奴が言った。

「いつだかの合宿で、そんな話題になったとき。おまえ、適当なこと言ってその場から抜けてさ、俺はそれになんとなくついていって、もしかして逃げた? って訊いたら、そう言ってたじゃねーか」

 へぇ。
 すっかり、覚えてない。

「まぁ、確かに興味ないんだけど、でも今回のはさすがに」
「フッ、興味湧いた? つっても、たいしたことないよ? ただそっくりそのまま、『アンタの夢になんか興味ない』って言い放って、去っていっただけたから」

 なにそれ? まるで意味わからん。
 私は掴んでいたジョッキに視線を落とし、すると、奴が──伸ばしてきた手で、私の眉間のシワをぐいーっと押し広げながら、「フッ」とこぼすように笑った。

 ……あれ?
 いつの間に距離が、こんなに近かったんだ?

「でもそのおかげで、最近定番になってた悪夢を見なくなった、と、そういうわけ。……納得した? 次、なに飲む?」

 私の眉間から、何事もなかったように手を離した奴は、ドリンクメニューをこちらへ広げてみせる。

 ったく、納得したかどうかの返事も聞かずに、なんなのよ。悪夢の内容を訊いていいのか、わかんないじゃないか……って、いや、そうか。

 奴は、つまり──人の夢に興味がない私を、ご所望なんでした。

「……生で」
「ああ、そういやおまえって、最後まで生しか飲まないヤツだったっけ」

 そこからの私は、奴の夢のことに興味を失ったフリを続け──ああもう。
 
「なぁ。来週末、また誘ってもいいよな?」

 別れ際。奴のそんな問いにまんまと、フツーに頷いてしまっていて。
 この私が誰かの夢、しかも悪夢に興味を持つなんて──こんなのって、ちょっとおかしいよね?


1/23/2026, 3:34:08 AM

 ♬デデンデンデデン──転送成功。
 現在地及び現在到着時点、確認。
 目標到着時点の……うん、誤差範囲内。
 よーし、転送シークエンス終了、っと。

 あ、いっけね、目撃者の確認! っと、問題なし。
 まぁでもボクみたいな茶トラの子猫が一匹、路地裏に突如現れたくらいで、大騒ぎにはならないよねっ。

 そう。どこにでもいる普通の子猫に見えるボクは、実は──遠い未来から過去であるこの時代にやって来た、ネコ型ロボット。
 個体識別コードMA-M1、通称……マミ!

 この首輪が小型化された『タイムマシーン』になっていて、これで体ごと転送されてきたんだ。
 ちっちゃいカラダのほうが転送しやすいし、それに現地にも溶け込みやすいから、こんな子猫の姿になってるってわけ!

 ボクの任務は時空を超えて、未来のある現象の原因について調査報告すること、端的に時空探偵って言ってもいいかもしれない。

 えー、猫の姿でー? って思うよね?
 ふふん。"見た目は子猫、頭脳は大人"……ってのはボクらを開発した会社の、調査機関への売り込み文句なんだけど、だからね、大丈夫なんだー。

 それに、頭脳だけじゃなくて……っと、その前に。
 先に、現地での生活拠点を、どうにかしなくっちゃだね!

 あっ、ねぇねぇそこのおねーさん!
 ボクと契約して、ボクの飼い主になってよ!
 ちゃんと家賃払うから!

 ……って、言いたいとこだけど。
 しゃべる猫が! なんて目立っちゃダメだからね。

 にゃーん、にゃーん。
 ひたすら可愛く鳴いて、鳴いて。
 はい、中年夫婦に拾われましたー!

 さっすがボク、小一時間で生活拠点ゲット!
 二世帯住宅の大きなおうち、でも一階で夫婦の娘さんがクレープ屋さんやってるから、そっちには行かないでね、だって。

 よしよし、拠点はOK!
 次は、ちょっと人目につかないとこへ行って。
 首輪型タイムマシーンには、もう一つの機能があって……これをステッキ型に、チェーンジ!
 からの〜、メタモル機能・音声コード、入力!

「パンプルピンプル、パムポップン!」

 毎回思うけど、なんだろうなーこの音声コード?
 まぁ、それはさておき……ジャジャン!

 子猫チャンがなんと、可愛い女の子に大変身!
 設定は17歳前後、服は夫婦の娘さんのをこっそり拝借しちゃって。
 この姿で、任務ための調査開始だー!

 ……え?
 スカウトって、ボクを?
 ボクの名前? えっとね、マミだよ?
 って……えええ、本当に?!

 ……と、いうわけで。
 ボクはアイドルになっちゃって、でも芸能界入りは何気に調査に都合がよかったし、お金も稼げちゃうしで、結果オーライ?

 けど注意しなくちゃなのは、一日二回の充電。
 充電はネコ型じゃないといけないからね。
 だから拘束時間もちゃんと、短めにしてもらったし……うん、なんとかなるはず。
 あーでも、こんなに目立っちゃうと、帰還したとき、めちゃくちゃ怒られそう……まーいっか。

 よーし!
 猫とアイドルと時空探偵の、三足のワラジ生活、これから頑張るにゃん!


1/22/2026, 9:49:01 AM

女子A「『特別な夜』なんて言葉を使うキャラって、だいぶ限られてこない?」

女子B「そうなの?」

A「コホン……『(低い声)今夜は特別な夜になるだろう』」

B「権力者、悪役の幹部、それかスパダリ、かな?」

A「『特別な夜にしてあげる』」

B「スパダリだなぁ」

A「『あの特別な夜のことを忘れたのかい?』」

B「ハーレクイン的な洋物スパダリ」

A「『君との特別な夜に乾杯』」

B「ホテルのスイートもしくは豪華客船に連れ込まれてます…スパダリに」

A「ほらぁ。ね? 『特別な夜』なんて言葉、一般人は使わないって!」

B「あーまぁ文章にはするかもだけど、セリフとしては言わないかもなぁ……にしてもさぁ、読書傾向からくる例えが偏り過ぎじゃない?」

A「オッケイ、じゃあ……『(カン高い声)今夜は二人の、特別な夜にしようねっ』」

B「あー……妄想上のオンナ。ぜってーいねーよ、そんなヤツ」

A「やだ不評? いやまぁスパダリもね、妄想上のオトコなわけなんですけど」

B「あっはーい。さて、おかわり生🍺も来たことだし? こうなったら、もう……私たち二人の特別な夜に、乾杯っ!」

A「かんぱ〜い! ……ぷっはー。ってどうすんのこれ、このメンツでここから特別な夜にしないとだよ笑」

B「『(イケボ風)君がこうしてここにいてくれる、それだけで今夜は……特別な夜だ』」

A「そっちも結局スパダリじゃねーか!」

1/21/2026, 8:20:19 AM

夜を漂う
小舟があって

波に遊ばれ
ゆらゆらり

風に煽られ
ふらふらり

浮かんでるのも
やっとこさ

荷を落とすまい
それだけで

ほかの小舟を
知ったのは

ガツンとぶつけた
あとだった

空には月が
無数の星が

そこに光は
あったのに

眩しすぎる、と
言い訳ばかり

それでも海は
浮かばせる

「沈む日までは、浮かんでろ!」

夜を漂う
小舟があって

いつかの先に
沈んだならば

懐古するのは
この波の上

空には月が
無数の星が

眩しくて
美しかった──

ああ いつか
『海の底』にて

穏やかに
負う荷を持たず

そんな日が
訪れるまで

浮かばせる
海は
小舟を


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