「あれ…」
気がついた時、私は病院のベッドに寝ていた。
私は辺りを見渡していると、両親が居た。
「良かった…良かった!!」
両親は、両手で私の手を掴み、泣きながらそう言った。
後日、両親の話を聞くと、私はアルバイトからの帰り途中に電車の"脱線事故"に合っていたらしい。
てっきり私は事故に合っていたのは彼氏では無くて、私だったのでは無いかと思ってしまった。
私は近くにあったカレンダーの付いている時計を見てみた。
だけど、現実は無情にも残酷で、私が今いる日は彼氏が亡くなった後の日時。
「お母さん…私、」
「無理に喋らなくても良いのよ?ほら、貴方の彼氏さんだって"来てるのよ"」
え?
何で私の彼氏が生きているの?
脱線事故が起こった後の日だから、彼氏は亡くなってるはず…
でも、もしかしたら私と彼氏が入れ替わっていたのかもしれないし。
私と両親がいる病室に、一人の男の人がお見舞いのような物を持って、入ってきた。
「貴方の彼氏さんの、"鳥井さん"ね。良かったわね〜!貴方も良い彼氏さんを持って…」
「…!?!?!?」
「…お見舞いに来たよ、"雪奈"」
「いやっ……」
私は恐怖でその場から動けなくなっていた。
「俺…ずーっと貴方の事が好きだった。なのに…彼氏が居るなんて…それに家にまで連れ込んでましたよね?」
隣人さんはそう言いながら、動けなくなっている私にゆっくりと近づいてきた。
「いやぁっ……」
「こうやって貴方に触れられる日を、俺は待ち侘びていた…」
隣人さんは私の頬を撫でるように手を添えていた。
「このままギューッと貴方を殺せば俺のモノになる…」
「いやっ……」
「いやぁー!!!!!!!!!」
私は何をされるのか分からない恐怖でその場で気絶をしてしまった。
その日から、隣人さんと会わなくなった。
朝、いつも通りに家から出てもね。
毎日に安心して過ごしてた。
だけど、私にストーカーが出来てしまったんだけど。
アルバイトから帰る時に何だか後をつけられている気がするし、最初は私の自意識過剰が働いただけだと思っていた。
だけど、日を重ねていく度にストーカーの行動は酷くなっていった。
「最近ストーカーされてる気がするんだよね…」
とある日にカフェで親友に相談することにした。
「え…マジ?」
「うん…」
私と親友が相談した結果、ストーカーされてる気がしたら、取り敢えず振り返ってみること。
怖くても、出来るだけ証拠を持って警察に行けるように。
「大丈夫、私もついているから。一人じゃないよ。」
そして、とうとうその日が来た。
相変わらず、ストーカーが着いてきている気がする。
何回も振り返ることに躊躇したのだが、これじゃ何も進まないと思って、私は勇気を振り絞って後ろを振り返ることにしたのだ。
「………えっ、」
振り返ると其処には、街灯に照らされた"隣人さん"が居た。
「また、会いましたね。」
そう街灯に照らされている隣人さんは私に不気味な表情で微笑んだ
「そう、ですか…」
私はその時に思い出した。
あまり女の人が男の一人暮らしの家にドカドカと入らないほうが良いってこと。
何されるか分からないから、両親には深い関係以外、気を付けろと言われている。
「榊さん。」
私がボーッと考え事をしていると、隣人さんは私の目の前にお茶を用意してくれていて、私と対面するように座っていた。
「鳥井さん…」
そして、テーブルの真ん中にあの白い箱が置かれていた。
「これ、俺からのプレゼントです。」
「えっ…」
怯える私と裏腹に、隣人さんは不気味な表情で微笑んでいる。
私は怖くて、逃げたくても逃げられなくて、喋ろうにも喋れない。
動こうにも動けない。
そんな私を見た隣人さんは私の直ぐ横に来て、私の手を取り、手のひらにプレゼントと言っていた白い箱を持たされた。
「怯えなくて良いんですよ。」
その瞬間に私の防衛本能が働いたのか、身体が勝手に隣人さんの家から出ていった。
白い箱を持たずに。
「お、お邪魔します。」
「全然上がってください。」
意外と男の人の家って感じではなくて、凄い綺麗に整えられていた。
ていうか、私より綺麗かも……
私はどうすれば良いか分からなくて、玄関で立ち止まっていると、隣人さんは私にそう声をかけてくれた。
「お茶出しますよ。適当に座っててください。何してても構いません。」
私は取り敢えずテーブルの直ぐ側の所に座ることにした。
「不思議な家ですね。カレンダーも時計も置いてない…、携帯で確認出来るからですか?」
私が隣人さんにそう言うと、隣人さんはお茶を作る手を止めた。
「…現実を見たくないっていう部分もあるからですね、現実逃避。」
隣人さんはお茶を作る時に絶対に使わないであろう、「包丁」を持って、私にそう言った。