「またね。」と言う君の背中は寂しかった。
今日も私は好きな人と一緒に帰る。
ずっと時間が続けば良いのに、何て思っている。
だけど私の好きな人は先輩。
もしかしたら、先輩には好きな人が居るかもしれない。
そう思うと何だか複雑な気持ちになってしまう。
「じゃ、俺ここの道曲がるから。」
意味の無い考えをしているせいで、もう先輩との分かれ道が来てしまった。
「はい、!」
先輩は私に「またね。」と一言を残して、帰っていってしまった。
私はまだその場から動けてはいない。
先輩の背中は寂しかったんだ。
夢。
君とまた、同じ夢を見たら僕は君の事を好きになることはあるのだろうか。
泣いて別れを告げてきた君を、僕はまた愛することが出来るのだろうか。
あの日見た夢の中で君は僕に微笑んでくれた。
朝、僕は外の明るさで目を開ける。
閉まりきったカーテンに扉。
今日何故起きているのか、僕にはわからない。
寝る直前まで見ている甘く儚い恋愛ドラマ。
僕は必ず最後まで見て、寝るのが好きだった。
今の僕を見た君はなんと言うのだろうか。
いつも横で眠っていた君は、今、誰の横で寝ているのだろうか。
出来ることなら、また僕の横で眠ってほしい。
「変な夢だね、笑」
#自分の努力はそう簡単には報われないんだな。
君が僕の目を見てくれることは無いだろう。
君とは夢の中で会った。
別に気にしているわけではない。
好きというわけでもない。
ただ、また会いたいと思ったんだ。
そしてまた、夢の中で君と海に沈みたい。
このまま死んでいたら幸せだろうと、また感じたい。
僕の目の前に居るのはもう冷たくなっている君。
一生聞くことのできない、
「大好き。」
という一言。
一生、僕の事を見てくれない目。
僕は一生、君以外を好きになる事は無いだろう。
今日も君と僕は浜辺に行く。
生きているのか、死んでいるのかわからない君と。
このまま一生居ようと思った。
#自分の性格が大嫌いです。
壊れたセミ。
近所に"カワセミ"という苗字の女の子が居る。
私と幼馴染は"セミ"と呼びやすいあだ名で呼んでいる。
その子は生まれつき体が弱いらしく、毎回遊ぶときはセミの親が見える家で遊んでいるんだ。
今日も、私とその幼馴染はセミの家に向かう。
そんな時に幼馴染は何を思ったのか、公園で見つけたセミを持ってきた。
「何そのセミ。」
私は思わず聞いてしまった。
そんな質問に対して、幼馴染はいつものニコニコとした表情を一切変えず、私にこう言った。
「これ、公園で拾ったんだ。だけどこのセミ、
"スゲェ弱い"。」
確かに幼馴染が持っているセミは声も上げず、ピクリとも動かない。
「逃がしてきたら?」
私は幼馴染にそう言う。
幼馴染は不思議そうな顔を浮かべたが、すぐにいつもの表情に戻り、
「いや、俺、こいつを飼ってみたい。」
そんな幼馴染の真剣な表情に私は否定できなかった。
そして、数週間が経った頃だ。
私と幼馴染は"セミ"に会わなくなった。
いや、会えなくなってしまったんだ。
セミは手術前に交通事故に合ってしまったらしい。
今はセミがどんな状態なのか、私達は知る由もなかった。
そんな話を幼馴染に言った。
珍しく、セミがうるさく鳴いていた時だったんだ。
幼馴染はいつものニコニコとした表情で私にこう言ったんだ。
「セミ、死んだよ。」
死んでも愛そうと思った。
既読が3日、付かない時だって多々あった。
おはよう、という言葉を聞けない日だってあった。
愚痴しか聞けない時だってあったさ。
でも、俺はこの人を愛し続けようと思ったんだ。
どれだけ周りから、「間違っている。」と言われ続けてもだ。
大好きで大切な親友の意見を無視してもだ。
それで、友情が無くなった時でも、俺は笑顔であの人と話し続けた。
「君の好きはどうなっちゃうの?」
「え…?」
「だから、愛し続けると約束した恋人を殺しちゃったんじゃないの?」
俺の両手は、あの人の温かい手で包んでくれた時とは正反対に血濡れて、冷たかった。