壊れたセミ。
近所に"カワセミ"という苗字の女の子が居る。
私と幼馴染は"セミ"と呼びやすいあだ名で呼んでいる。
その子は生まれつき体が弱いらしく、毎回遊ぶときはセミの親が見える家で遊んでいるんだ。
今日も、私とその幼馴染はセミの家に向かう。
そんな時に幼馴染は何を思ったのか、公園で見つけたセミを持ってきた。
「何そのセミ。」
私は思わず聞いてしまった。
そんな質問に対して、幼馴染はいつものニコニコとした表情を一切変えず、私にこう言った。
「これ、公園で拾ったんだ。だけどこのセミ、
"スゲェ弱い"。」
確かに幼馴染が持っているセミは声も上げず、ピクリとも動かない。
「逃がしてきたら?」
私は幼馴染にそう言う。
幼馴染は不思議そうな顔を浮かべたが、すぐにいつもの表情に戻り、
「いや、俺、こいつを飼ってみたい。」
そんな幼馴染の真剣な表情に私は否定できなかった。
そして、数週間が経った頃だ。
私と幼馴染は"セミ"に会わなくなった。
いや、会えなくなってしまったんだ。
セミは手術前に交通事故に合ってしまったらしい。
今はセミがどんな状態なのか、私達は知る由もなかった。
そんな話を幼馴染に言った。
珍しく、セミがうるさく鳴いていた時だったんだ。
幼馴染はいつものニコニコとした表情で私にこう言ったんだ。
「セミ、死んだよ。」
7/11/2024, 11:12:17 AM