子猫
全てに絶望した
さっきまで晴れていたのが嘘みたいに
俺の耳には何も届かない
どしゃ降りの雨に打たれ
先の見えないほど真っ暗な道を歩くと
どこかも分からない場所に辿り着いた
ふと目をあげた先にいるのは
薄汚い子猫
なぜか輝いて見えたお前を、
俺は抱きかかえ優しく微笑んだ
「…お前は今日からクロだよ。」
にゃーと鳴く声と共に、終わりの無い夜に沈む
数年後、
やさしい光に包まれながら
暖かな場所で、クロと笑い合う
「…今日も、これからも。
笑顔を、太陽を、お客様に。クロ、今日も
頼りにしてるよ。」
「うん!」
…クロ、俺を陽だまりに連れて来てくれてありがとう。
秋風
いつもそばにいたあなたが
ずっと遠い先に行っちゃったね
君の仕草
君の全て
全部僕の心に
沈んで、沈んで、海の底くらい
深く深く想い続けるよ
これからも
秋風にこの想いを乗せて
きみに届け
また会いましょう
二人一緒に歩いてたね
寒い夜
休日の昼
寝起きの君の寝癖
どれも過去
俺らのキャンバスは
まだ下書きのまま
きみいろに染まりたい
また会いましょう
キャンバスに彩りを付けるのは
俺だけじゃ出来ないから。
少し歌詞風になっちゃいました🙏
いつも読んでくださってありがとうございます
スリル
「やっと着いたー!!はやく!!」
ここは日本で最恐と言われるほどの心霊スポットで、
俺たちはYouTuberとして活動しているが、どうにも
視聴者がのびず、ついにこの場所で撮ることを決めたんや。
一番乗り気な徠ははしゃいでいる。カメラマンの光太は
「怪我すんなよー!!」
……正直、俺は乗り気や無かった。俺は子供の頃から
幽霊が見える方で、ここに来る前から頭が痛くなったりしていた。
「昼に来た時よりも怖いんだねー!
ねぇ、琉玖と魅璃も!はやくきてよー!!」
「……なぁ、やっぱりやめん?俺、言ってなかったっけ?幽霊見えるって。ここ来る前から頭痛がひどくて、
視聴者のばすのもええけど、遊びで行っちゃ行けんとこよ、ここは。やから、俺は行かへん。お前らもやめとき?」
「……私も。怖いし、やめてもいいかな、?」
「えー、なによ!行くんじゃないの??
もう、勝手に帰ってよ!光太といくから!」
そういって、徠は光太と行ってしまった。
「…行っちゃったね、2人。」
「……あぁ、ほんまに、やめといた方がええと思うんやけどな、まぁあの2人やし戻ってくるやろ。……あと、ごめん。俺、やっぱ頭痛いし、帰るわ。ここおったら、俺気ぃ失ってまうかもしらん。魅璃も、帰らん?その辺歩いとれば、大きい道出るやろ。2人には気分悪いで帰ったって連絡しとくわ。」
「…うん、そうだね。私も気分悪いから、帰ろっか。」
俺らは、2人に連絡して、家に帰った。
風呂に入って寝ようとしてふと時計をみると、夜中の3時を回ろうとしていた。俺らがあそこに行ったのは12時前だ。あの場所は広かったけど、こんなに時間がかかるもんなんか?
『魅璃、起きとる?2人からなんか連絡来てへん?
さすがに、もう終わっとると思うんやけど、』
数分後、既読が付いた。
『うん、私もそう思う。何も連絡来てないの。
でも、もしかしたら電源とか切れちゃったのかもだし、
一応連絡してみるけど、私少し気分悪いからもう寝るね、
お休みなさい。琉玖も早く寝てね。何かあったら、また連絡して。』
『うん、おやすみ。俺も連絡してみるわ。
体ゆっくり休めてね。』
俺は、2人にもう帰ったか?終わったら連絡してくれ。と、連絡しようとした瞬間、光太から電話がきた
「光太?良かった、死んだかと思ってん笑
今どこ?ごめん、俺頭痛ひどくて帰ってもうたわ。」
「琉玖!助けてくれ、誰かが俺らのこと追いかけてくるんだよ、さっき、もう不気味だし撮り終えたからあそこは出て車で帰ろうとしたら車がなくて、大通り出てもこんな時間だしタクシー通ってなくて、あるいて俺の家行こうとしてんだけど、後ろから誰か来てるんだよ。」
「俺ら、車置いてったで?なんでや?取り敢えず、電話繋げとき。俺の家近かったら、来てもええで。」
その時、電話越しから叫び声が聞こえた。
「おい!返事しろよ!おい!」
二度と、2人の声を聞くことはなかった。
これが、俺の夏のスリルだ。
飛べない翼
「あんたは駄目な子だねぇ」
ずっと前に、母さんから言われた言葉が
ずっと俺の心を抉りつづける
小さい頃から、俺は何も出来なくて。
全てを持ってる周りが、羨ましかった。
昔、本を読んだことがある。
ある1人の天使は、翼が小さく、成長した後も
一度も飛べなかった
そんな話だった。周りの天使は助けることなく、
その1人の天使をずっといじめていた。
俺は間違いなく……その1人の天使だ。
誰からも気にされることなく、蔑まれ、
一生嘲笑い続けるんだろう。
でもその話には続きがある。
大人になった天使は、ある日周りにいた天使たちに
またいじめられていた。
でも、そこにきた美しい1人の天使が言ったのだ。
「そんなことして、バカみたい。
自分の心の不満を、他人にぶつけるな!
ずっと空飛んで遊んでるお前らより、人のために助けてるこの子の方が何百倍もいい人だよ!」
……あぁ、なんて美しいんだ。美しい君は、
「気にしなくて良いんだよ。飛べなくたって、
誰かがあなたを必要としてる。あなたにしかできないことがある。あなたはあなたのまま、好きに生きて良いんだよ。」
その話を読み終わった後、俺の頬を何かが伝った。
俺が、俺らしく生きていてもいいんだって
その時初めて覚えた。
俺は、何も出来ない。今も、ずっとあの言葉が
俺の心に深い傷をつけている。
でも、まだ信じても良いのなら。
俺は、俺らしく。好きに生きるよ。