目が覚めると…?
目が覚めたって、いつもと変わらない
平凡で真っ暗な一日が始まるだけだ。
夢の中にいれば、悪夢のとき以外は笑顔でいられる。
だったら目なんか覚めなければ良いのに。
この道が続いているとは限らない。
壊れてなくなっているかもしれない。
明るいとは限らない。
でも、
たとえ、真っ暗闇でも、途中で踏み外してしまっても、回り道でも、私は今日も歩んでいく。
『この道の先に』
カーテンの隙間から射す光。
葉と葉の隙間からこぼれる光。
昔は綺麗だと思えていたものが、綺麗に見えなくなった。
いつになったら僕の世界に光は差すの?
明けない夜はない。
止まない雨はない。
この暗闇を抜けたらいつかは光が差す。
そんな言葉を純粋に信じられるほど幼くは
もういられない。
そんなとき、兄が、昔言っていた言葉を思い出した。
影がないと光はないんだよ。
だからね、
どちらかがないと成り立たないんだって。
この話を聞いたとき僕は、人間みたいだなと思った。
表と裏のない人間はごくわずかしかいないと思う。
誰にだって隠し事の一つや二つはあるし、悩み事もあるはずだ。
明るくて、優しくて、何でもできる人にも悩みがあるのだ。
悩みの大きさも、痛みも、どちらの方が上、ということはない。
…綺麗事は嫌いだ。
それでもそれにすがるしか方法がなかった。
きっと、
今自分が暗闇の中にいるのも全部、自分のせい。
自分から目を逸らした。
光が、怖かったから。
まるで、天敵に怯える夜行性の動物になった気分だ。
でもこれからはちゃんと暗闇にも向き合う。
そうしたら光も見つかるかな?
それに返事をするかのように
窓から光が降り注いだ。
『日差し』
窓越しに見えるのは、人が作ったものばかり。
その中で草や木は、ポツポツとあるだけ。
このまま人が何も手を加えなかったら、
草や木が、この土地を飲み込むだろう。
時々、もし、草木に感情があったらと、考えることがある。
ある人は、
『まだここにいるからね』
と言っているように感じたらしい。
だが、私にはまだ声は聞こえない。
まじまじとみていたからか、視界がぼやけて、
ピントが窓に映った自分にあった。
ふと目をそらし、白い紙に鉛筆を走らせた。
出来上がったのは、建物の間に生えた木が、ぽつんと立ったものさみしい絵だった。
夏の終わりが好き。
ひぐらしの鳴き声が聞けるから。
あの声を聞くと懐かしい思い出が蘇る。
よく遊んでいた友達のこと。
明るくて、ときにやんちゃで、とても可愛いあの人のことを、思い出す。
でもある夏の日避けられるようになってしまった。
いつもは、インターホンを押して、
遊ぼう。と誘ってくれたのに、それがなかった。
家にいないのかもと思ってあまり気にしていなかったが、外からあの人の声が聞こえてきた。
だから、外に出てそばに寄った。
でも、私を見ても話しかけられることもなく、無視されてしまった。
私は気にしない素振りを見せて、踵を返した。
それでも、本当はすごく悲しかった。
ねぇ、なんで?
友達だったのに、
私、何かした…?
いろいろな感情が溢れてきて、森に逃げ込み、泣いた。
私が、ここにいられるのは、長期休みの間だけだった。
だから、夏休みが終わる前に帰らなければならない。
こんなに、楽しくない夏休みは、今までなかった。
途方もなく長く感じた夏休みの最後、
一番鮮明に覚えているのが、ひぐらしの鳴き声だった。
このときからだっただろうか、?
夏が大嫌いになったのは。
ひぐらしの鳴き声が好きになったのは、夏を終わらせてくれる声だったから。
ねぇ、昔みたいに、みんなで遊びたいよ。
ねぇ、なんで…?
いつ、間違えてしまったのだろう。
『夏』