寒い、寒い冬が終わり、
暖かな春の光が世界を包みこみかけている、
そんな日に君はいなくなった。
「いつまでも、泣いてんなよ。」
馬鹿じゃない?あんたなんかのために流す涙なんかない。
そう言おうとしたその瞬間、君は今までに見たことのないくらい優しく笑った。
「ずっと、これ、から…も、あいし、てる…。」
そう言われると憎めなくなってしまう。
暖かいものが溢れてきて、視界が歪んだ。
私も…っ。愛してる。
声が震えてしまった。情けないな、と笑っていると、
君は最後の力を振り絞って、私の手をぎゅっと握った。
「また、な…。」
だんだん力が弱くなっていくその手を、今度は私が強く握った。
うん、うんっ…また、また会おう。
だんだん冷たくなっていく手をずっと握って、泣いた。
『いつまでも、泣いてんなよ。』
ハッと我に返って君の顔を見ると、笑っていた。
死んでも、笑ってる。
でも、
その笑顔を見ると、自然と笑顔になれた。
これが君との最後。
春になると強く思い出す。
時に泣いてしまうこともあるけれど、
大丈夫、今もちゃんと生きてるよ。
『君と最後にあった日』
月下美人が好きだ。
君が好きだった花だから。
「これで最後、だからね、?」
そう言ってふわりと君は微笑んだ。
あの花みたいだと思った。
君は、僕を優しく包んでくれた。
ねぇ、
ただ、一度、
もう一度だけでいいから
会いたいよ。
それでも君からの返事はない。
僕の愛した人は、
月下美人のように、きれいな人だった。
「月下美人の花言葉、知ってる?」
最後まで教えてくれなかったそれは、
彼女の手に、握られていた。
『ただ、一度だけ、会いたくて』
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3つ、かたまりがあるんですけど下のかたまりから読むと内容が理解しやすいかもです。
(僕の愛した人は…)
↓
(ねぇ、…)
↓
(月下美人が好きだ。…)
こんな感じに
1年後は、
努力できる人になれてるかな?
素直に人に頼れる人になっているかな?
笑っているかな?
生きられているかな…?
そうだったら、いいな…。
『1年後』
息ができる
動ける
音を聴ける
見れる
話せる
笑える
泣ける
そんな当たり前が、当たり前じゃない人もいる。
それって不平等だ。
…神様はひどい人だ。
でも、私たちに命をくれた。
だから
息ができるし
動けるし
音を聴けるし
見れるし
話せるし
笑えるし
泣ける
私達は、生きている。
いつもと同じ日々がどれだけ大切か、私達は知らない。
敵からの攻撃され、怯える日もないし、
学校に行って学ぶこともできる。
その当たり前が、大切なことに、私達は気づいていない。
だから、
何気ない毎日に
嫌気が差したり
自分でそれを終わらせようともした。
それでも、
この大切な日々を、歩んできた。
今までも、
そしてこれからも歩んでいく。
大丈夫、
私はもう、大丈夫。
この世界の尊さに、
君が気づかせてくれたから。
『日常』
昔は全ての色がきれいに見えて、毎日がキラキラ輝いていた。
一つ一つの色が大好きだった。
今は、何もきれいだと思えない。
全ての色が淡く霞んで濁っているように見える。
いろいろな色が混ざって汚くなった水彩画みたいだ。
辛い?
いや、辛くない。
悲しい?
いや、悲しくない。
苦しい?
いや、苦しくない。
じゃあ何故こうなったのか。
ふとした瞬間に、自問自答する。
そんな、なんの代わり映えのない日々を歩んできた。
そんなある日、昔の絵を見つけた。
こんな世界で、この絵だけがきれいに見えた。
特別、この絵が上手いわけではない。
むしろヘタクソで、何を書いているか分からないほどぐちゃぐちゃだ。
ただの、蒼い空の中に虹色の雲が浮かんでいる、クレヨンの絵だ。
そのはずなのに、何故か涙が止まらない。
昔は、一点の曇りもない目で世界をみていた。
それがいつの日か、何かの拍子でたくさんの色が混ざってしまった。
汚い色を知った。
知ってしまった。
そうか、私は
辛かったのだ。
悲しかった。
苦しかったのだ。
それを独りで、抱えて、閉じ込めて、抑えつけようとした。
それが複雑に混ざり合って、濁ってしまった。
きれいな世界から目をそらして自分から汚した。
空を見上げた。
それでも溢れてくる涙を拭いて。
あぁ。私は泣けたのか。
ただ、蒼く、深く、広い空を見上げて
泣いた。
ただ、きれいなあの空に手を伸ばして
泣いた。
『好きな色』