紫苑

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寒い、寒い冬が終わり、
暖かな春の光が世界を包みこみかけている、
そんな日に君はいなくなった。


「いつまでも、泣いてんなよ。」


馬鹿じゃない?あんたなんかのために流す涙なんかない。
そう言おうとしたその瞬間、君は今までに見たことのないくらい優しく笑った。


「ずっと、これ、から…も、あいし、てる…。」


そう言われると憎めなくなってしまう。
暖かいものが溢れてきて、視界が歪んだ。


私も…っ。愛してる。


声が震えてしまった。情けないな、と笑っていると、
君は最後の力を振り絞って、私の手をぎゅっと握った。


「また、な…。」


だんだん力が弱くなっていくその手を、今度は私が強く握った。


うん、うんっ…また、また会おう。


だんだん冷たくなっていく手をずっと握って、泣いた。


『いつまでも、泣いてんなよ。』


ハッと我に返って君の顔を見ると、笑っていた。

死んでも、笑ってる。

でも、
その笑顔を見ると、自然と笑顔になれた。





これが君との最後。

春になると強く思い出す。

時に泣いてしまうこともあるけれど、

大丈夫、今もちゃんと生きてるよ。


『君と最後にあった日』

6/26/2024, 11:45:35 AM