ユズ

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12/20/2022, 10:04:08 AM

寂しさ

保険のおばさんが定年を前に退職された。うまく保険に勧誘されただけじゃないかと言われるかもしれない。でも、私はその方の人柄が好ましく、信頼できると感じたから契約をした。

新卒入社した会社は、事務員を除き、40代以上の既婚男性ばかりだった。事務員が寿退職してから女性は私ひとり、話が合う人もいないし、社会人には一応なれたものの、世間離れしていくことを内心では危うんでいた。

それでも10年腰を据えたのは、その仕事が好きだからではない。他に自分のできることがあるのか、マナーも常識も知らないことが多すぎて、恥をかくことを恐れていた。

定期的な契約内容の確認と同時に、情報冊子を持って来てくれた。ちょっとしたお菓子やタオル、カレンダーを持って来て、職場にいる全員と顔を合わせてご挨拶をされていた。目上の人、経営者の心を掴むのはそういった積み重ねがあってこそ。契約してくれる人しか相手にしないとかだと、会社や職場へ出入りしにくくなる。

時には湯呑の漂白までしてくれていた。頼んでなくても気づいたことをやって行く。人によっては勝手に触られると嫌なのかもしれないが、私は茶渋だらけの湯呑は気にならないから、漂白をどうやってやるのかすら知らなかった。

世間知らずが転職することになり、その時々で気にかけてくれた。ビジネストークだったかもしれないが、ゆっくり焦らず仕事を探せばいいと前向きに気持ちを切り替えられたのも、そういった気遣いのおかげだった。

別の方に引き継がれ、アフターフォローはしてもらえるが、親しみのある方がいなくなるのは寂しい。


12/17/2022, 1:29:59 PM

とりとめもない話

職場で電話の対応に長々とつかまる。とりとめもない話とはこういうのかと、カウンター周りを掃除しながら、時折相槌をしながら、来店客の対応をこなす。

もしもこういうことがあったらどうするんですか?真面目な話かと思いきや、他所の店で買った商品の話になり、過去に大変使いにくい商品を買わされた話になり、やっと本題になったと思い、価格や商品説明をひたすらさせて、お金がないから買うつもりはないんだけどね。でさぁ、…

混み合っておりますので、失礼します。と電話を切る。

お金がないのに電話代を惜しまないのが不思議でたまらない。人間が対応するから電話をかける人間はついとりとめもない話をしてしまうのだと思う。電話を受ける側も明確に無駄と判断がつきにくく、客商売である以上、無下にもできない。人口知能AIが判断し、1分程度で音声ガイダンスに切り替わるシステムでもできれば良いのにと思う。

12/16/2022, 12:07:00 PM

風邪

昨年は誕生日を前に体調を崩した。

普段から緊張や不安から腹痛、下痢はよくある。正露丸でしのいで、普通に出勤していた。

ただ数日続くと身体がだるくなり、内科を受診した。薬を処方してもらい、翌日38度近い熱が出た。

コロナ禍の最中、前日に行った内科では対応できず、発熱外来の受け入れ病院を電話で問い合わせ、PCR検査を受けられる病院を紹介される。病院受診に何段階も経て、体力的にも精神的にも疲れた。一人だったら生きる気力が薄れていたかもしれない。

幸いにも誕生日前で、家族が家にいてくれて、食事も買い物もやってもらえた。食べてもすぐトイレに駆け込み、体重は5キロくらい落ちた。薬は気休め、体力で凌ぐしかない。

コロナ禍の体調不良は、たかが風邪でも侮れない。とにかく、睡眠、食事、感染対策、無理をしないこと。寒い冬は特に言える。

12/15/2022, 11:33:54 AM

雪を待つ

雪化粧した町の景色を目にすることすら、年に数回程度しかない。降ったとしても、日が昇ればすぐに溶けてしまうので、午後には跡形もない。

雪だるまや雪合戦ができるような雪ではなく、ベチャベチャとしていて、雪遊びができるような雪は降らない。子供の頃は雪に憧れた。大きな雪だるまを作りたいと。

大人になった現在、うっすら積もった雪道でも危なっかしいので、雪がたくさん降る地域では生きられそうにない。
それでも、雪の降る夜、降り注ぐ雪を仰ぎ見ると吸い込まれそうなくらい美しくて、雪を見られる国に生まれて良かったと思う。

12/14/2022, 12:30:20 PM

イルミネーション

冷たい空気で澄みきった空、足は感覚が分からないほど冷え切っている。初めての12月の神戸の冬は、雪は降らないが、凍てつく寒さだった。

通行規制の為、人の流れに沿って歩くと、ひんやりとした金属のボードが見えてきた。ライトアップの時間まで1時間近くある。それでも通りは人で埋まっていく。

今か今かと寒さに耐え、並んで待つ、ライトが点った瞬間、「わぁーきれい。」カメラを構え、その美しさに人々の表情には喜びや感動が溢れる。見ず知らずの人々ばかりなのに、不思議とこの瞬間だけは一体感のようなものに包まれる。

同じような文様の連続に見えて、空が暗くなるにつれ、文様がくっきりとしてくる。ふと振り返ると後ろにずーっと光のトンネルが続く。空からも見えそうなくらい、頭上に広がる光のトンネル。眼にうつる全てをこの眼に焼き付けたい、この感動を伝えたい、忘れたくない。寒さを忘れ、写真におさめた。

阪神大震災からの復興、祈りが込められた神戸ルミナリエ。それを期に家族で毎年のように行った。ここ2年は行けていないが、12月になるとルミナリエを思い出す。ただのイルミネーションとは違う特別な空間、特別なひとときを。

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