ぼやっとした意識の中で私の額に手が触れる
少し冷たくて、でも安心する手。
頭に持っていかれてポンポンと私の頭を撫でた。
「ちょっと熱があるみたいだね 今日は学校休もうか」
頭のすぐ上、そんな声がした。
ジリリリリリリ
正直聞きたくもない目覚ましの音で私は目を覚ました。
…けど眠い
「別に今日は急ぐこともないし…ね」
とか言って欲望に負けた私は再び眠りの世界に落ちる。
「それに何だか体が重かった気がするし」
いつもの言い訳。でも、やっぱりしといた方がいい。
変な罪悪感に襲われるよりか全然ましだし
ピーンポーン
呼び鈴の音で再び目を覚ます。
嫌な予感がしておそるおそる時計に目を移す。
8︰15分 完全に遅刻だ
まあ人間もう手遅れな時には返って冷静になるものだが…
と変なことを考えて
遅刻の理由を考えながら玄関へ向かう
ガチャ
「え、まだパジャマじゃん もしかして寝坊した?」
「こんな時間にうちに来てるさやかに言われたくないん
だけど そっちも遅刻?」
「うん、そうそう ギリギリ電車が間に合わなくてさー
で、なんかもうめんどくなっちゃったから…」
「こっちに来たと」
「そ、正解!」
まったく能天気なもんだよ、こっちは絶望の起床をしたっていうのに、、、
と言うか、私も遅れてる前提なの腹立つんですけど
「あれ、ちょっと顔赤くない?」
「え、そう?」
さやかの手が私の額に伸びる
「…よくわかんない」
「わからんのかいw きのせいでしょ」
「いやいや、絶対赤いって」
「えー、じゃあ体温計ではかってみる?」
「うち持ってるよ」
「なんでやねん」
「まぁまぁ、細かいことは気にせずにさ」
ピピピッピピピッ
37.4℃ いつもよりかはあるかな?って感じ
「えー、熱あるじゃん」
「でもそんなに高くないし、休むほどではないよね」
「いやいや、悪化したら困るし、今日は休もうよ」
「…………絶対あやかが休みたいだけじゃん」
「あ、バレた?テヘッ」
「テヘッじゃないよ」
「まぁまぁ私ちゃんと看病するから! ベット行こ!」
さやかに押されて私は家の中に入った。
いつもならさやかを連れて学校に行くけど、今日はちょっとだるかったし、たまには休んでもいいかなとか思ったんだ。とりあえずベッドに横になると遠くでさえかの声が聞こえた。
「すいません。2年3組上田さやかなんですけど、ゆうか
えっと夜神ゆうかです。2年1組の はい。ゆうかが
ちょっと熱を出してしまって……37.9℃です。
はい、それで親も忙しいそうなので、私が看病します。
はい。ありがとうございます。はーい」
ちょっと不思議な感覚がした。熱があってふわふわしてるからかもしれないけど、懐かしく感じた。
「ふー疲れた〜 親のやってるの真似たけど緊張した笑」
「そっか〜 あ、それと熱勝手にあげたでしょ」
「うん笑 だって、そんぐらいならこいとか言われたら
どうするの?」
「そうだけど、」
「あははっ あ、私ご飯作ってくるね」
「え、ありがと」
「うん、いいよいいよ。寝てて」
コトコト グツグツ トントン
聞こえるのはそんな音だけ。まだ明るい学校がある日ベッドに横になって寝ている私。やっぱり不思議な感じがする
でも…今日ぐらいいい まだここから帰りたくないから
♯微熱
くだらないことで笑って、
悲しいことがあったら分かち合って、
そして、また笑って。
そんなくだらない毎日も、君と一緒なら
全部特別になるから
君に会えて、友達になれて、本当に良かった
♯友達
夕暮れ時。いつもならもう家に帰っている時間。私は今日、お母さんに学校の用事で遅くなるなんて嘘をついて公園のブランコで1人座っていた。
「………言えるわけないよな」
今、高校3年生の私は進路を決めなければいけなかった
お母さんが望んでいるものは医者。
正直、私が好きなのは絵だ。だから、
そのことを勇気を出して言おうとしたことがあった。
「お母さん…ちょっと今いいかな?」
「あら、どうしたの」
「えっと、その 進路のことなんだけど」
「…お金のこと?」
「えっ」
「いいのよ。心配しなくても むつみの夢なら私たち
応援するからね 好きなところを選びなさい」
「…!ありがとう!あのね…!」
「あー、そうそう 良さそうな大学を私も調べてみた
のよ」
そう言って差し出された母親の手にあったのは、
医大のパンフレットだった。
「あ…」
「ほらこことかどう? 家からは少し遠いけど、
評価がとってもいいのよ」
「……えっと う、うん!すごくいいところだね
お母さん調べてくれてありがと」
「いいのよ でも全然他のところでもいいからね」
「うん… あ、私上で勉強してくるね」
「そう、頑張ってね」
「分かった」
気の弱い私があんな場面で医大以外の大学に行きたい
なんて言えるはずがなかった。
「…………いままで頑張って練習してきたけど…
もう意味はないかな」
そう思うと涙が出てきて、私はそれを振り払うみたいに思いっきりブランコをこいだ。
「あれ?むつみ?」
後ろの方から声が聞こえた。私は急いで涙を拭いて、笑顔を作ってから、後ろを振り向いた。
「今日は、なつみ帰るの遅かったんだね」
「うん、部活が長引いちゃってさ、むつみはどうした
の?いつもなら急いで帰ってる時間なのに」
「…なんでもないよ 今日はお母さん帰り遅いから
ちょっとのんびりしてただけ」
「ふーん… むつみ!」
「え、何?」
「あ、そこまで走ろ」
「え?なんd」
グイッと腕を引かれて私も一緒に走った。波止場に着いた時には、私もなつみも息が切れていてゼェゼェ言っていた。こんなに思いっきり走ったのは久しぶりかもしれない。私は息を整えてからなつみに聞いた。
「どうしたの?いきなり走ろうだなんて」
「…なんか思いつめてるみたいだったから」
「え…、」
「隠せるとでも思った? 全く…
何年一緒にいると思ってんの」
「16年」
「そこは答えるとこじゃない!」
「…ふふっ」
「あ! やっと笑った」
「え、笑ってたでしょ?」
「作り笑い。」
なんでわかってしまうんだろう。自然に身に着いたものだし、練習したわけでもないけれど、結構自信があったのに。これを言ったらそんなのに自信を持つななんて怒られそうだけど、笑
「そうだね。やっぱすごいや」
「当たり前! よし!次は鬼ごっこだ!」
「え、また走るの?」
「むつみ鬼ね! 10秒数えたら来て」
「え?!拒否権無し!?」
勝手に鬼ごっこを始めて、なつみは公園の方向に走って逃げていった。
「… 本当昔から変わんないな」
「むつみー! もう10秒たったでしょ。早く来てー!」
遠くからなつみの声がした。…今だけは全部忘れて、子供の頃に戻ったように遊ぼうか?
まあ、たまにはそんなこともあっていいかな
「行くよー!!」
思いっきり叫んでから、私は駆け出した。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音が鳴って、教室がガヤガヤし始める。
「新しい占いの本買ったんだ、みんなでしよ〜」
「私もしたーい」
そんな女子の声がそこらかしこから聞こえてくる。今は占いがブームになっているらしい。
「ゆう!」
後ろから自分の名前を呼ばれた。いつも聞いている声だからすぐにわかる。
「どうしたの?なな」
振り返って名前を呼ぶ。この子は友達のなな。静かな子
だけど、楽しそうに話してくれる。
まあ、とにかくとってもいい子だ。
「見て、これ」
「?これって…雑誌?」
「うん!最後のに2、3ページに占いのページがあったん
だ。まだ見てないんだけど、ゆうと一緒にやってみたい
なって。ほら、占い最近ブームになってるでしょ」
正直言うと私は占いなんかは信じない方だ でも…
せっかく ななが雑誌を学校まで持ってきてくれたから
やってみることにした。
「いいよ それ何占い?」
「えっとね…星座占い!ゆうは、何?」
「何って何が?」
「いや、星座に決まってるでしょ笑」
「あ、そっ か笑 えっと私は乙女座だよ」
「乙女座かぁいいなー」
「別にいいとかなくない?笑 ななは何なの?」
「私は蠍座、だってサソリだよ?全然可愛くないし」
「可愛いって…星座にそれいる?笑」
「どうせなら可愛い方がいいじゃん」
「そうかなあ笑 まあいいや。
早くやろうよ時間なくなっちゃう」
「あ、そっか!じゃあ一番目ね ゆうの乙女座から。あ
なたのラッキーカラーは紫色です。だって!あとは…」
ななが楽しそうに結果を見て読み上げていく。私とななの結果を見終わってから、次のページを開くと相性占いと書いてあるページを見つけた。
「相性占いだって、私とゆうちゃんでやってみよー
えぇっと…」
またラッキーカラーや友情運やら楽しそうに読み上げていく。たまには占いもいいかもしれない。
「運気が上がる行動は…」
キーンコーンカーンコーン
「え、もうそんな時間経ったの?!」
「本当だね。もう5時間目だ」
「う〜もうちょっとで全部読めたのに」
「まあまあ そうだ、ちょっと早いけどさ
今日一緒に帰ろうよ」
「え、今日は塾ないの?」
「今日はないんだって」
「やった〜、一緒に帰れるの久しぶり!じゃあ部活
終わったら校門の前で集合でいい?」
「うん、いいよ それじゃあまたね」
「うん!またね~」
…………………………………………………………………
「はー、やっと終わった なな、もう来てるかもな」
今日はいつもより練習が長引いてしまった、疲れている体をなんとか動かして校門へと走った。
「…あ!ゆう」
「ごめん、遅れた」
「ううん、大丈夫!今来たとこだから」
「……そっか笑」
きっと結構早めに来てしまっていたのだろう。1人の時になるスリープモード(もちろん人間はそんな機能ないけど、私たちが勝手に呼んでる)になってたから。
「そうだ、お店寄って行こうよ」
「いいね 私、今日はお家帰ってくるの遅いから。
結構遅くまで行ってもいいけど…ななはどう」
「わ、すごい!私もそうなんだ
今日はとびっきりゆっくり帰っちゃう?」
そう言ってななが、イタズラな笑みを浮かべる。
「いいよ」
そう返しながら私もいたずらっぽく笑って見せた。
……………………………………………………………………
それからお店に行って、あと、外でご飯を済ませてか
ら、私たちはやっと帰路に着いた。
「楽しかったー!」
「そうだね。」
「あー、でももう帰んなきゃいけないのか」
「……公園」
「?」
「公園寄ってかない? のんびりできるしさ」
「そうだね」
それで私たちはブランコに乗った。
今日のお話をたくさんした後、私は空を見上げていった
「あ!今日めっちゃ星綺麗に見えるよ」
「え、本当だキレー!」
「あ、あれもしかして夏の大三角形じゃない?」
「すごーい!ゆうわかるの?」
「いや、小学校の授業で習ったこと言っただけ笑」
「えー なーんだ」「じゃあわかんないか」
「…私、星座早見表?持ってたと思う」
「……うん」
「次は持ってくるからさ、また一緒に星見ない?」
「もちろん。いいよ!」
「なっちゃ〜ん!遊びに行こう!」
私が宿題とにらめっこしていたら、友達のりむが遊びに来た。最近ここら辺に引っ越してきたばっかり、あんまり人と話すのは得意じゃない方だけど、なぜかりむとはすぐに仲良くなれた。
「えー、今から?」
「うん!」
「でもどこ行くの?こんな田舎じゃ遊びに行くとこなんて
ないでしょ」
「む!?田舎とは聞き捨てならないな!」
「でも田舎じゃん」
「うーん、まあそうなんだけどさぁ、じゃなくて!隣町
に新しくカフェができたんだって。行ってみようよ」
「へー カフェか…でもバスある?」
「うーん、わかんない まあなくても歩きっていう手
もあるけどね。」
「えーやだよ。歩きとか、疲れるじゃん」
「もう!なっちゃんは運動しなさすぎ!」
「いいの、別に死ぬわけじゃあるまいし笑」
「お主、運動をなめておるな」
「なめてない。なめてない。 とりあえずバス停まで
行ってみようよカフェは私も興味あるし」
「お!行こ行こ」
いつもと同じようにくだらない会話をして私達は家を出た。隣町までは歩いて30分ぐらい。決していけないような時間じゃないけどめんどくさがり屋の私には歩き何て正直考えられない。りむは歩いて行くのも楽しそうだけど。
少し歩いてバス停に着く。
「えぇと今は4時45分だから…あ!」
「どうだった?」
「ついさっき行ったとこみたい 4時半だって」
「あらら…じゃあ今日は諦めるしかないね」
「えー、久しぶりの両方部活休みの日なのに。あっ!」
…なんだか嫌な予感がする。まさか歩いていこうとk…
「歩いて行こうよ!」
「やっぱり…」
「まあまあ久しぶりの運動だと思って」
「はぁ〜…」
断ったところでどうせ無理やり連れて行かれるのだから
どうせなら自分から行くことにした。全く何で休日からこんな歩かなきゃいけないのかなぁ…
「ほら、なっちゃん、早く!」
「はいはい…」
しぶしぶりむの後ろに着いて歩く。何気ない雑談をしながら、疲れたなーとか、そんなことを思っていたとき、遠くの方からサァァァと音が聞こえた。
「ん…?何の音」
「音……?うわっ冷たっ え雨?!」
「通り雨かな? とにかく雨宿りできる場所」
「え、雨宿り 公園!」
運良く公園の近くを通りかかっていた私たちは慌てて公園に駆け込んで、ドーム状の滑り台?のような遊具の中に入り込んだ。
「はぁ…びっくりしたー なんで雨?
さっきまで晴れてたのに!」
「多分通り雨じゃないかな」
「あー、通り雨、聞いたことある」
「そっ か、
はい、これタオル濡れちゃったでしょ?拭いて」
「ありがと!」
それから少し沈黙が流れた。遊具にたたきつけられた雨の音が響いてくる。なぜかだけど、とても懐かしい気持ちになった。昔もこんなことあったような気がする。
「……ちゃん、なっちゃん!」
「わっ あ、もう拭いた?」
「うん、ありがとう どうしたの?ぼーっとして」
「ん………いや、なんでもないよ」
「えー!絶対嘘じゃん 教えてよ〜」
「……! やだよ、バーカ」
「え、なっちゃんがバカって言った!どうしたのバカなん
か普段言わないじゃん」
「いや、ちょっと懐かしかったなーって 似てるね」
「えーどういうこと!?」
「秘密、教えなーい ほら、雨止んだよ早く行こう」
「…?うん!!」
♯通り雨