霧夜

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9/5/2023, 1:55:33 PM

偶々立ち寄った小さな町の、小さな海辺。
そこで俺は、小さな貝殻を見つけた。

深海の色を模倣したような、綺麗な貝殻。
この貝殻を見ていると、あいつの事が思い浮かぶ。
深く暗い海に沈んでいった、あいつの顔が。
あいつは最後まで、笑っていた。
この貝殻も、次に淡く照らされて、笑うように光り輝く。

あぁ、この貝殻が、あいつの一部なら良いのに。
そう思いを馳せながら、俺の目からは自然と涙が零れた。



#貝殻
49作目

9/4/2023, 1:59:17 PM

俺の世界に、希望という名の光は存在しなかった。

親からの英才教育を受ける勉強漬けの毎日

思い通りに出来なかったら、その度に暴言を吐かれ、時には暴力まで振るわれ
俺の心は徐々に擦り減っていた。

外を自由に歩くことも許されず、薄暗くて、だけど無駄に広くて豪華な一人部屋。
それが俺の見れた世界の全てだった。

相談相手なんて、頼れる人なんて、友達なんて、手を差し伸べてくれる人なんて

誰一人としていなかった。

///

知らない世界。
本の中でしか見れない、不思議な世界。
そんな世界には、

しっかり家族に愛されて、幸せに暮らしている親子

友だちに囲まれながら、楽しく遊んでいる子供

海や山、知らない街なんかにも行って、自由気ままに冒険を楽しむ放浪者

俺の知らない世界が、本には全て載っていた。

本の中の世界だけが、俺が知らないきらめきを教えてくれた。

それと同時に、俺もいつか、こんな事をしてみたいという、淡く現実味のない幻想を見せてくる。
叶うはずもない夢に、幻想に目を向けて、希望を持てるような人間じゃなかったから。
少しでも夢を思い浮かべる度に、俺の胸は苦しくなった。

#きらめき
48作目

9/3/2023, 10:59:53 PM



お互いの好きな事、嫌いな事。

好きな食べ物、嫌いな食べ物。

得意な事、苦手な事。

そして、本人すら知らないような、あいつの小さな癖。

お互い一緒に過ごしていくたびに

あいつとの思い出もあいつ自身の事も

どんどん知れて、どんどん分かっていく。

些細なことだけれど、俺にとっては大切で、大きなことなのだ。

#些細なことでも
47作目

9/2/2023, 12:39:25 PM



あいつが居たから、今俺は生きている。

この世界が嫌になって

俺には過酷で、辛すぎて

もう自暴自棄になって

海へと落ちて逝こうとした時に

あいつは、俺のことを一生懸命繋ぎ止めてくれた。

俺の命を、そして…俺の亡くしかけていた心も…。

あいつが教えてくれた世界は、色鮮やかで、綺麗で、何より

あいつと過ごしている時間は、凄く幸せだった。

俺の消えかけていた心のろうそくを灯してくれたのは

紛れもなくあいつだった。

だから俺は、今もこうして生きていられる

#心の灯火
46作目

9/2/2023, 1:17:59 AM


※今回は長いです。


ピロリロリンッ♪

あいつからのLINEの通知音と分かるよう特別に設定した音が、物静かな部屋に響いた。
……そして、それを開けぬまま、既に数時間が経過していた。

画面を開くのが、来た文章を見るのが怖くて、まだ携帯の電源すら入れることが出来ていない。

『もういい…こんな所出て行ってやる!!!』

あいつが家を出ていってから、一週間。
しょうもない事で言い争いになって、その時は俺も仕事のストレスで怒りが爆発してしまって、
大喧嘩してしまった。

あの時の俺がどれだけ馬鹿だったか、冷静になって振り返ってみれば嫌でもわかった。
仲直りしたい、またあいつと一緒に居たい、たった一言「ごめんなさい」と謝りたい。
だけど、今回は全面的に俺に非がある。俺が悪いのだ。それなのに、誤っただけで許されるのだろうか?

…だからこそ、今日来たメッセージを見るのが怖い。

…もう一緒に居たくない



…会うのを…いやそもそも関係を終わりにしよう



そんな言葉が来ているかもしれない。そう考えるだけで、俺の全身に鳥肌が立つのが分かる。
俺の一時に感情に任せた身勝手な言葉のせいで、あいつと会えなくなるのが、俺はすごく嫌だった。

見れない…

あいつとの関係が崩れてしまう気がして。

見たくない…

怖い…こうなるのなら、早くしっかり謝っておけば良かった。
そしたら…また結果は違ったのかもしれないのに。

恐怖、自分への怒り、そして…猛烈なまでの後悔。

そんな感情が、頭の中をぐるぐると渦巻く。


そんな事を考えて、更に数十分が経過した後に、俺は覚悟を決めて携帯のLINEを開いた。
どんな言葉が書いてあっても、まずは謝ろう。会いたくないだろうから、文面でごめんなさいって。
それで、それでも駄目だったら…諦めよう。

俺は一度深呼吸をしてから、新着メッセージと書いてある通知を二回タップした、、、

「………え?」

ピーンポーン♪

その時、家のインターホンが鳴った。
俺は涙が出そうになるのを必死に堪えながら、携帯をサイドテーブルの上に置いて、玄関の方へと向かった。

まず、扉を開けたら、しっかりと言わないとな…

”あの時はごめんなさい“って…!!!!

////

LINEのトーク画面が開いたままの携帯。
さっき着いたばかりの既読の印がついた一番下のメッセージ。
そこにはこう書いてあった。

“お前と仲直りがしたい。今から会えないか?”

と。


#開けないLINE
45作目

余談

皆様おはこんばんにちは!!

もっと読みたい400突破ありがとうございました(*‘ω‘ *)♪

いつも飽き性の私ですがこれだけは書き続けられているので…これも皆様のお陰です!
今回は中々案が浮かばず日を跨ぐことになってしまいましたが(笑)
何はともあれ、これからも書き続けていく予定ですので、お暇な時間にでも見て頂けると嬉しいです(≧∀≦)
それでは

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