霧夜

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俺の世界に、希望という名の光は存在しなかった。

親からの英才教育を受ける勉強漬けの毎日

思い通りに出来なかったら、その度に暴言を吐かれ、時には暴力まで振るわれ
俺の心は徐々に擦り減っていた。

外を自由に歩くことも許されず、薄暗くて、だけど無駄に広くて豪華な一人部屋。
それが俺の見れた世界の全てだった。

相談相手なんて、頼れる人なんて、友達なんて、手を差し伸べてくれる人なんて

誰一人としていなかった。

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知らない世界。
本の中でしか見れない、不思議な世界。
そんな世界には、

しっかり家族に愛されて、幸せに暮らしている親子

友だちに囲まれながら、楽しく遊んでいる子供

海や山、知らない街なんかにも行って、自由気ままに冒険を楽しむ放浪者

俺の知らない世界が、本には全て載っていた。

本の中の世界だけが、俺が知らないきらめきを教えてくれた。

それと同時に、俺もいつか、こんな事をしてみたいという、淡く現実味のない幻想を見せてくる。
叶うはずもない夢に、幻想に目を向けて、希望を持てるような人間じゃなかったから。
少しでも夢を思い浮かべる度に、俺の胸は苦しくなった。

#きらめき
48作目

9/4/2023, 1:59:17 PM