蓼 つづみ

Open App
3/13/2026, 1:25:01 PM

ずっと隣で、
君と同じ景色を
見ていてもいいかな。

題 ずっと隣で

3/13/2026, 1:49:39 AM

「もっと知りたい。」

「そりゃ、どういう意味?」

「そのままだよ。」

「そのままって、何を知りたいの。」

「君のこと。」

「便利な言葉だね、それ。」

「そう?」

「だって、“知りたい”って言うけど、
別に具体的に何か聞きたいわけじゃないでしょ。」

「……どうかな。」

「本当に知りたいなら、
人はちゃんと質問するよ。
好きな食べ物とか、どこで育ったとか、そういうやつ。」

「そういうのとは、ちょっと違う。」

「でしょ。
“もっと知りたい”って、たぶん言葉の意味をしてない。」

「じゃあ、何してる言葉?」

「波を立ててるだけ。」

「波?」

「そう。
水面に小石を落とすみたいに。」

「君が揺れるかどうか、見てる?」

「そんなところ。」

「そうかもね。」

「ずるいな。答えなくてもいい質問ってことだろ、それ。」

「うん。」

「……でもさ。」

「なに?」

「それって本当は僕を好きって意味じゃないの?」

「……」

「違うの?」

「そうやって、曖昧な事にすぐ名前をつけるの好きだね。」

「だって分かりやすいだろ。」

「分かりやすくしたいだけじゃない?」

「何が。」

「怖いから。」

「……怖い?」

「“好き”って言葉を入れてしまえば、
 それ以上考えなくて済むでしょ。」

「じゃあ違うの。」

「違うとも言い切れない。」

「ずるいな。」

「そう?」

「じゃあ、どういう意味なんだよ。」

「さっき言ったじゃない。」

「波の話?」

「うん。」

「僕を揺らしてるって?」

「違うよ。」

「違う?」

「私が揺れるかどうか、見てるの。」

「……」

「もし揺れたらね。」

「うん。」

「そのときは、たぶん——」

「たぶん?」

「見えないふり、できなくなるから。」

「何を。」

「君のこと。」

題 もっと知りたい

3/11/2026, 12:21:53 PM

平穏が崩れた記憶の象徴のようなこの日に、
「平穏な日常」を書こうとしている。


時間が静かに差し出してくる、
ひとつの問いのようだ。


湯気の立つ食卓があること。
帰る場所があること。
名前を呼べる相手がいること。
明日の予定を疑わずにいられること。


きっと——
静かに生きていること自体が、
平穏な日常なのだろう。


あまりにも重くて、
今日のテーマに置く言葉が見つからない。


……それでも。
私なりに、平穏な日常を営むために
最低限、持ち続けてきた言葉がある。


「世界を信用しきれないままでも、
生活だけは裏切らないようにしていく強さを持つこと。」


けれど、これは私の話。
あなたの心は、あなたのもの。
大丈夫。そのままでいい。


強さを持とうとしなくても
日常は静かに回り続けるはず。


うまく言えないけれど、
それぞれの平穏があってほしい。


題 平穏な日常

3/10/2026, 10:08:33 AM

揉め事も摩擦も、
生き物が触れ合う限り、きっと消えない。

痛みは境界線を教え、
衝突は輪郭を浮かび上がらせる。

だから、軋みそのものを
悪だとは思わない。

けれど、
誰かを削るためだけの刺激や、
虚しさしか残さない衝動は、
静かに途絶えてしまえばいいのにと思う。

守りたいものがあるからだ。
傷つけたくない温度があるからだ。

愛はきっと、
すべてを許す力じゃない。

大切なものを選び取り、
無意味な痛みを遠ざけようとする
静かな偏りのことだ。

その偏りが社会に広がったとき、
争いは消えなくても、
荒廃は減っていく。

私は、そんな在り方を
天下泰平と呼びたい。

題 愛と平和

3/9/2026, 10:45:09 AM

卒業証書の白い縁の内側、
厚みのある一枚。
折れないように丸めた時間。
筒の中で守られた、紙の重さ。

校舎の影に隠れて、
背伸びする下級生の列。
制服の袖がまだ長い。

窓枠の中にある渡り廊下。
光の帯を踏んで走る誰か。
顔は逆光でわからない。

風に押されて揺れるカーテン。
隙間に挟まった、遠い街路樹の緑。
わけもなく眺め続けた景色。

きっちり揃えきらない机。
落とし物の、誰かの消しゴム。

教科書の影に隠した口元。
肩だけ震えている。

妙に癖の強い黒板の文字。
力の入りすぎた書き出しだけが濃く、
息継ぎみたいに線がかすれている。

心の中に切り取られた光景は、
しまい忘れた光みたいに
ずっと、ずっと、残っている。

題 過ぎ去った日々

Next