「もっと知りたい。」
「そりゃ、どういう意味?」
「そのままだよ。」
「そのままって、何を知りたいの。」
「君のこと。」
「便利な言葉だね、それ。」
「そう?」
「だって、“知りたい”って言うけど、
別に具体的に何か聞きたいわけじゃないでしょ。」
「……どうかな。」
「本当に知りたいなら、
人はちゃんと質問するよ。
好きな食べ物とか、どこで育ったとか、そういうやつ。」
「そういうのとは、ちょっと違う。」
「でしょ。
“もっと知りたい”って、たぶん言葉の意味をしてない。」
「じゃあ、何してる言葉?」
「波を立ててるだけ。」
「波?」
「そう。
水面に小石を落とすみたいに。」
「君が揺れるかどうか、見てる?」
「そんなところ。」
「そうかもね。」
「ずるいな。答えなくてもいい質問ってことだろ、それ。」
「うん。」
「……でもさ。」
「なに?」
「それって本当は僕を好きって意味じゃないの?」
「……」
「違うの?」
「そうやって、曖昧な事にすぐ名前をつけるの好きだね。」
「だって分かりやすいだろ。」
「分かりやすくしたいだけじゃない?」
「何が。」
「怖いから。」
「……怖い?」
「“好き”って言葉を入れてしまえば、
それ以上考えなくて済むでしょ。」
「じゃあ違うの。」
「違うとも言い切れない。」
「ずるいな。」
「そう?」
「じゃあ、どういう意味なんだよ。」
「さっき言ったじゃない。」
「波の話?」
「うん。」
「僕を揺らしてるって?」
「違うよ。」
「違う?」
「私が揺れるかどうか、見てるの。」
「……」
「もし揺れたらね。」
「うん。」
「そのときは、たぶん——」
「たぶん?」
「見えないふり、できなくなるから。」
「何を。」
「君のこと。」
題 もっと知りたい
3/13/2026, 1:49:39 AM