同じ時間、同じ場所。
でも、気づきや感覚の層をほんの少し増やすだけで
現実の奥行きは深くなる。
景色や物事を、通り過ぎさせずに楽しむ。
自分が面白いと思うものに、少しだけ注意を向ける。
それだけで、ルーティンは静かに立体を帯びる。
初心者は、手元に触れるものを意識的に変えてみる。
上級者となると、大概のことは面白がれる。
小さな工夫が、日常に色を差す。
世界の扱い方を見直せば、
現実をより濃く、立体的に感じられる。
題 夢を見てたい
僕等は、夜に憧れる地点にいる。
この広い世界で、ふたりきり。
意味も、目的も、評価も、要らない。
ただ、互いの呼吸を確かめている。
耳をあてれば、
六億回目に鳴る命。
ずっと、成長しなければいいのにね。
けれど、
それほど幼くもない。
題 ずっとこのまま
昨日と同じ姿勢で立っているのに、
今日の入口が認識されない。
扉は、閉められた音さえ立てなかった。
さっきまで灯っていたはずの明かりが、
文字になる前に消える。
声をかける前提で伸ばした指は、
空気の中に取り残され、
行き場を失ったまま冷えていく。
教室では変わらず声が流れているのに、
私だけが更新されない。
外の風は強くない。
雪も降っていない。
それなのに、
教室の温度から一人分ずらされて、
平気なふりをする子どもみたいに、
黙っているしかなかった。
いくつかの季節と記録を挟んで、
扉がふいに開いた。
チャイムの鳴り方は変わらない。
けれど、机の落書きはすべて消えていて、
知っている癖の言葉はどこにもない。
私が戻るより先に、
教室は次の学年を迎えていて、
そこで交わされる言葉は、どれも低俗で、
合わせること自体が、空回りだった。
もう会えないと分かったあいつらの不在が、
遅れて、身に沁みていく。
題 寒さが身に染みて
N/C.世界と自分は溶け合っている。
0歳.快と不快が、世界の全て。
1歳.泣き、笑い、指を伸ばす。
2歳.「いや」で確認せずとも適応した。
3歳.自分の内側の言葉にならない“声”が内面を作る。
4歳.期待通りであることで、安心が続くことを覚える。
5歳.「子どもらしく」あることが安全になる。
6歳.気づいたら、自分を他者の視点で見る事ができるようになっていた。
7歳.耐えることが能力として内面化される。
8歳.「どうしてオトナはこうなんだろう」と思う。
9歳.誰と深く関わるかを選ぼうとし始める。
10歳.自分を調整する感覚が日常になり、それが自分の性格だと思い始める。
11歳.自分のことは秘密になり、侵入を防ごうとする。
12歳.理由のない不安、苛立ちが増える。
13歳.緊張感と無力感を行き来する。
14歳.他者は自分とは違っていて、うちゅう人に見える。
15歳.世界や大人を批評し始め、自分の未熟さに苦しむ。
16歳.何を選び、どんな責任を背負っていくか考える。
17歳.誰かを求めながら、ひとりで抱える。
18歳.前へ進むしかない転び方をする。
19歳.逃げ場を失う。
20歳.それでも、未完成だと知る。
題 20歳
ミカヅキを歌っていた
彼女の器は、
満ちきった月を迎えたように
夜を超えて 消えてしまった
遺された私は
浮き彫りになった 醜さの影
遠くからの声が
お前は美しくないと響く
近くの声が
お前の価値はお前が決めろと囁く
けれど 私の輪郭は
孤独に浮かんでは
描けないまま
題 三日月