蓼 つづみ

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昨日と同じ姿勢で立っているのに、
今日の入口が認識されない。

扉は、閉められた音さえ立てなかった。

さっきまで灯っていたはずの明かりが、
文字になる前に消える。

声をかける前提で伸ばした指は、
空気の中に取り残され、
行き場を失ったまま冷えていく。

教室では変わらず声が流れているのに、
私だけが更新されない。

外の風は強くない。
雪も降っていない。

それなのに、
教室の温度から一人分ずらされて、
平気なふりをする子どもみたいに、
黙っているしかなかった。

いくつかの季節と記録を挟んで、
扉がふいに開いた。
チャイムの鳴り方は変わらない。

けれど、机の落書きはすべて消えていて、
知っている癖の言葉はどこにもない。

私が戻るより先に、
教室は次の学年を迎えていて、

そこで交わされる言葉は、どれも低俗で、
合わせること自体が、空回りだった。

もう会えないと分かったあいつらの不在が、
遅れて、身に沁みていく。

題 寒さが身に染みて

1/11/2026, 11:06:56 AM