逆らっているわけじゃない。
ただ、自分の輪郭を確かめているんだ。
どこまで自由に動けるのか。
どこまで受けとめてくれるのか。
反抗期というよりも、
いやいや期のような――そんな気持ち。
それは、遮断ではなく、
自分と世界のあいだに線を引いてみて、触れて、確かめて、また描き直すこと。
それが、大人になりきらない心の描く境界線。
題 心の境界線
それは、目で見るよりも気配で感じるものだった。
木漏れ陽の中に溶けかけ、ほとんど色を持たず、
指先で触れれば、雪のように溶けてしまいそうなほど、
儚く透き通っている。
角度を変えるたび、淡い葉脈のような繊維がかすかに浮かび上がり、光を受けて揺れることで、初めてそれが羽根なのだとわかった。
風すら音を失う森の中で、木々の間から落ちてきたそれは、樹木の香りと光のあわいに溶け込んで、
静けさそのものを纏っていた。
題 透明な羽根
「触ってはいけない」と教えてきた火に、
いつのまにか自分の手で命を吹き込めるようになった瞬間。
それは、ただの技術の習得じゃなくて、
もっと古来からの命が継がれた感覚がした。
あの日、息子の手の中で灯ったのは、
焚き火の火そのものよりも、
「自分で火を起こせた」という喜びだったと思う。
ひとつの火を囲み眺めること、
それは太古から人々が重ねてきた祈りのかたち。
私たちに護られてきたその手が、
自らを守る側に変わり、
やがて何かを護る手へと成長していく。
胸の奥が熱くなり、そっと目を細めた。
あの日、あの小さな輪で灯火を囲む夜に。
題 灯火を囲んで
押し入れの奥で眠る、たたまれぬ布
広げられてほぐれ、そっと冬を迎える
洗い立ての冬服が、やわらかく空気を満たす
乱雑に放り込まれた手触りは
寒さに寄り添うやさしさへと変わり
ふわり、ふんわり
あたたかな息吹がそっと漂う
題 冬支度
「この瞬間が止まってほしい。」君の吐息の届くそばで僕は呟く
「時が止まれば永遠は観測出来ないね。私は永遠を信じてる。」
君の言葉で、僕の熱に永遠なんて概念を持ち込まれると、
感情の火に冷水を浴びせられたみたいで、はぐらかされた気分だ。
永遠を願う君の想いと、時を止めたい僕の祈りは、
根っこで同じものを求めているのにさ。
もし時が止まるなら、光も、音も、僕の鼓動も、君の瞬きさえも、そのすべてが静止し、誰ひとり取り残されない。
もし永遠が叶うなら、枯れることなく、僕らは歩き続けるだろう。
だけど、理屈としての永遠や静止が欲しいんじゃない。
今この熱を、ただ残したいという幻想なんだ。
――――だから僕は、君を抱きしめる。
題 時を止めて