Frieden

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8/22/2024, 9:33:56 AM

「鳥のように」

金糸雀のように綺麗な歌声があれば
あなたの耳を満たせたのかしら

孔雀のような翅があれば
あなたの目を彩れたのかしら

白鳥のような気高さがあれば
あなたを虜にできたのかしら

烏のような賢さがあれば
あなたを支えられたのかしら

鸚鵡のような好奇心があれば
あなたとお話しできたのかしら

燕のように仲間がいれば
あなたに春を運べたのかしら

鶏のような体があれば
あなたの血肉となれたのかしら

蜂鳥のような小ささがあれば
あなたに可愛がられたのかしら

雀のようにか弱ければ
あなたに守られたのかしら

鳥のように あの鳥のように飛ぶことができたら
私はあなたに見てもらえたのかしら

8/21/2024, 10:35:29 AM

「さよならを言う前に」

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敵国を撃ち落とすために戦地に赴いた貴方。
この戦いが終わったら、結婚しようと約束をしました。
今、貴方はどうしているのでしょう。

焦げたにおいと人々の泣き声で溢れる焼けた街で、なんとか暮らしています。昨日やっと水にありつきました。

かつて貴方に褒めてもらった私の黒髪も、燃えて短くなってしまいました。貴方に褒めてもらった白い肌も、火傷で真っ赤になってしまい、もう元には戻りません。

私の命はもう長くないでしょう。
家の庭だった場所に咲く朝顔よりも、きっと短いのでしょう。

貴方と連絡がつかなくなってどのくらい経つのでしょうか。
1ヶ月?半年?それとも1年以上?

貴方は生きているのでしょうか?
それとももう、雲の上におられるのですか?
もしそうであれば、もうすぐ会いに行けそうです。

もし貴方が生きているのであれば、私がさよならを言う前に、最後の我儘を聞いてくださいませんか?

私のことなど忘れて、もっと素敵な方と結ばれてください。
そして暖かく幸せな家庭を築いてください。
どうか、どうか最後まで貴方のままでいてください。

  焼け野原 燃ゆる家々 焦げし日々
         残りしものは 貴方の微笑

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君が遺した最後の手紙を読んで、僕はただ手を震わせることしかできなかった。

もしあと1日でも早く帰っていたら、君はもっと安心できたのかな。もう少し僕が丈夫だったら君を苦しませずに済んだのかな。

もし僕にもっと力があれば、この戦いを早く終わらせることができたのかな。

もし僕が君を追えば、また会えるのかな。

僕は君の黒髪と白くて綺麗だった手を握って、君の好きだった白い菊を餞として添えた。

8/20/2024, 10:26:10 AM

「空模様」

今日は快晴。夏らしい空模様だ。
……自分の心模様とはまるで違う。

こんな暑い日は、洗濯物をよく乾かすと同時に人の心も萎びさせる。もし自分がバスタオルとか、あるいは梅干しとかだったら嬉しかったのかもしれないけど。

暑くて体力が持っていかれると、心まで疲れてしまう。

自分は何にも悪くないあいつに酷いことを言ってしまった。
いくら謝ったとしても、あの言葉を消すことはできない。

最初こそ自分の感情に任せていたから、自分の言ったことの重さを考えることもなかったけど、だんだん気持ちが落ち着いてきたら後悔が重くのしかかってきた。

ため息をついて、窓の外を見る。大きな入道雲が見えた。
もしあいつがこれを見たなら、何て言うんだろうか。
『ソフトクリームみたいで美味しそう』とか言うのかな。

そんでその後、『ソフトクリームを食べに行こう!』って、この炎天下に駆り出される。暑い暑いって、ふたりして文句を言いながら、ソフトクリームの店まで歩くんだ。

『こういうのもいいだろう?』とか言って、自分も悪くないなって答えて。あんたは綺麗な目でこっちを見て笑って。

……何で自分が被害者みたいにあれこれ妄想してるんだろう。
あいつのほうがよっぽど辛いだろうに。
……あいつのほうが、よっぽど悲しいだろうに。

そんなことを考えているうちに、さっきの入道雲は大きな積乱雲になって、少ししたら大雨が降ってきた。

自分の心にも、多分あいつの心にも、ずっと冷たい雨が降り続いている。そんな気がした。

8/19/2024, 2:47:51 PM

「鏡」

自分が意識的に、そして無意識のうちにしていることは、実は心を映す鏡のようなものだと思っています。

頑張って作る笑顔。なんとなく撮った空の写真。
ポジティブな口癖。ついつい聴いてしまう音楽。
思ってもいないのに言った一言。そして、書いた文章。

こういったひとつひとつの行動のどこかに、自分の心の鏡が隠れているような気がして、あとで思い返したり、見返したりするとあの時抱いていた自分の本当の気持ちに気づくこともあります。

逆に、こんな些細なことで悩んでいたのか、と思うこともありますが……。当時の自分の心の幼さに気付かされるような、少し恥ずかしくなるような、そんな気持ちになります。

さて、なぜ「心の鏡」なんていう抽象的なテーマで今日の文章を書いたかご説明します。

心というものは、丈夫で鈍感そうではありますが、知らず知らずのうちに傷ついています。今この瞬間も、心の底で悩みが揺蕩っていることでしょう。

やがて心は少しずつヒビが入り、もししっかり守られないといつしか壊れてしまいます。
心の鏡が、割れてしまいます。

そんな時は、この言葉を思い出してください。

“こなごなに砕かれた鏡の上にも 新しい景色が映される”

これは、千と千尋の神隠しのエンディング曲「いつも何度でも」の歌詞の1フレーズです。

心が壊れてしまうことを決して肯定するわけではありませんが、たとえそうなったとしても、いつか美しいものがきっと見えてくる。

砕け散ったことで、心はもう二度と元には戻らないかもしれないけれど、飛び散った先で、別の何処かにある何か新しいものを見ることが出来るようになる。

そんな気がするから、心の鏡というテーマで書いてみました。

辛いことが沢山あるこの世の中ですが、どうか希望を捨てないで、心が粉々になったとしても、ずっと大切に抱きしめていてください。

8/18/2024, 1:34:47 PM

「いつまでも捨てられないもの」

もうお盆も過ぎちゃったね。
夏が来ると、どうしてもきみのことを思い出す。

夏休み中、きみは近所にあるお母さんの実家に預けられてたんだっけ。初めて会った時はうちの近くでひとりで泣いてたから、どうしたものかと思いつつ何とかきみの家を探して送り届けた。

それからというもの、夏が来る度にきみはうちにやってきて、よく遊ぶようになった。

私よりもずっとちっちゃくて、くまさんの耳付き麦わら帽子の似合う、とっても可愛い子。
きみのおかげで、夏がとっても楽しみになった。

あの年も、いつも通り夏休みを待っていた。
いつも通り夏休みは来た。でもきみは来ない。
いくら待っても待っても、きみは来なかった。

どうしたんだろう。きみに何かあったのかな。
色々と想像するだけでとても不安になった。

ある日、風の便りできみのことを聞いた。
きみのお母さんが病気で亡くなって、お父さんに引き取られたのだと。だからもうこっちにきみは来ないんだ、って。

これ以上詳しいことは知ることができなかった。
あんまり根掘り葉掘り聞くのも変な気がして。

でも。あの夏が最後になるって分かっていたら、
私のこの気持ちと、お揃いのアクセサリーも渡せたのかな。
それとも……むしろ渡せなくて正解だったのかな。

きみへの想いとこのアクセサリーは、いつまでも捨てられないものとして、今日も明日も、ずっと心に仕舞われている。

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