「いつまでも捨てられないもの」
もうお盆も過ぎちゃったね。
夏が来ると、どうしてもきみのことを思い出す。
夏休み中、きみは近所にあるお母さんの実家に預けられてたんだっけ。初めて会った時はうちの近くでひとりで泣いてたから、どうしたものかと思いつつ何とかきみの家を探して送り届けた。
それからというもの、夏が来る度にきみはうちにやってきて、よく遊ぶようになった。
私よりもずっとちっちゃくて、くまさんの耳付き麦わら帽子の似合う、とっても可愛い子。
きみのおかげで、夏がとっても楽しみになった。
あの年も、いつも通り夏休みを待っていた。
いつも通り夏休みは来た。でもきみは来ない。
いくら待っても待っても、きみは来なかった。
どうしたんだろう。きみに何かあったのかな。
色々と想像するだけでとても不安になった。
ある日、風の便りできみのことを聞いた。
きみのお母さんが病気で亡くなって、お父さんに引き取られたのだと。だからもうこっちにきみは来ないんだ、って。
これ以上詳しいことは知ることができなかった。
あんまり根掘り葉掘り聞くのも変な気がして。
でも。あの夏が最後になるって分かっていたら、
私のこの気持ちと、お揃いのアクセサリーも渡せたのかな。
それとも……むしろ渡せなくて正解だったのかな。
きみへの想いとこのアクセサリーは、いつまでも捨てられないものとして、今日も明日も、ずっと心に仕舞われている。
8/18/2024, 1:34:47 PM