「花咲いて」
春には小さく儚き桜を そして麗らかなそよ風を
夏には元気な向日葵を 全てを照らす太陽を
秋には内気なコスモスを 草木を染める木枯らしを
冬にはスノードロップを 舞い散る雪の結晶を
私の母にはカーネーションを 父にはオレンジの野薔薇を
私にはあなたの笑顔を あなたには光る祝福を
枯れることのない祝福を
ある日私は失った 綺麗な花を失った
かけがえのないあの花を あなたという綺麗な花を
私はあなたを奪われた 醜き者に奪われた
あなたという名の花咲いて 慈しむ間なく奪われた
憎しみ色の花咲いて どんどん育ってゆきました
どんどん育ってゆきました
憎しみ色の花束に 切れ味鋭きガラス片
こっそり隠しておきました こっそり隠しておきました
今度は私が花裂いて 奴らの命も切り裂いて
花壇に埋めてしまいましょう
深い所に埋めましょう
こうして命はこの土を 大きな星を駆け巡り
いつしか命となるのです
新たな命となるのです
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
自分で書いておきながら何だけど怖いよう……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
お腹が空いているからかもしれぬです( ˘ω˘ )
皆様もおいしいものをたくさん食べてくださいねŧ‹(o'ч'o)ŧ‹ŧ‹
「もしもタイムマシンがあったなら」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
ボクはともかく、きょうだいはちゃんと話を聞いてもらえたようだからよかったよ。
……さて、することも終わったから独房に戻らなければ!
────────────────────────────────
ボクはニンゲンくんからの激しい拒絶を受けて、少々落ち込んでいた。きょうだいのカウンセリングを見守るのが今日の仕事のはずなのに、ぼーっとしていてはいけないね!!!
さてさて、様子はどうだろうか?
面会室の方を見やる。きょうだいがこっちを向いて壁を叩きながら何か言っているのが見えた。
これはいけないなぁ……。ボクとしたことが、カウンセリングが終わったことにも気付かないなんて!!!
「⬜︎⬜︎!ごめんごめん!もう終わっていたんだね!うまくお話しできたかい?」「んー!」
「いっぱいおはなちきいてもらったの!」
「よかったねぇ!それじゃあ、そろそろ戻ろうか!」
「……。」「……?どうかしたかい?!」
「⬛︎⬛︎ちゃん、げんきないのー?」
「え……?ボクはいつだって元気だよ?!ほら!!!」
「んー。⬛︎⬛︎ちゃんもおはなち、しよう?」
「カウンセラーさんを引き止める訳にはいかないよー!きっと彼女も他のお仕事があるからね!!」
「⬛︎⬛︎ちゃんは?」「?」「おちごと。」
「ほかのおちごと、ないのー?」
「……ないわけじゃないが、ボクは優秀だから問題なしさ!!」
「ほら、もう戻ろうね?」「ん〜……。」
無数のカメラに見張られながら、ボクたちは牢獄へと戻る。
その間、小さな兄はボクの顔をずっと見つめていた。
「⬜︎⬜︎、どうしたんだい?」「だっこ!」
「抱っこ?はいはい!」「んー!」
嬉しそうにボクにくっついてくる。
そうだった。キミはとっても抱っこされるのが好きだったね。
「ご機嫌だねえ!!!」「んー!だっこ、うれちい!」
「よーしよしよし!」「えへー!!」
「もう着いたよ!」「ただいまー?」「そうだねー!」
「やぁ!マッドサイエンティストとその兄、無事に帰還!」
「どうも、お疲れ様です。」
「そういえば、キミのことはどう呼べばいいんだい?役職の名前か、それともコードネームの方が良いだろうか?」
「好きにお呼びいただいて結構です。」
「困るなあ!ヘンな名前で呼んでも怒っちゃ駄目だからね?!」
「う〜む……。本来であればむしろこちらがそう呼ばれるのに相応しい立場なのだが……。」
「972号くん!……っていうのはどうだろうか?」
「972号くん、ですね。かしこまりました。」
「あぁ、よろしく……。」
自分にくん付けするんだ……。まあいいか。
「そうそう、ついでに聞いても良いかな?」
「はい、なんでしょう。」
「この部屋への物の持ち込みは許可されているかい?」
「基本的に私物の持ち込みは禁止されておりますが、何か事情があってのご確認なのでしょう。」
「キミは話がわかるねえ!!」
「ところで、どのような物を持ち込まれたいのでしょうか?」
「持ち込みたいものは……。」
「……なるほど、分かりました。相談の上、その結果をご連絡いたします。」
「ありがとう!助かるよ!」
「それじゃあ、よろしく頼んだ!」
ボクはきょうだいを連れて部屋に戻る───
「あ、あの……。」
「ん??」「ご兄弟は別室にお入りいただくのが決まりです。」
「わかっているのだが、多分きょうだいは昼寝をすると思うんだよ。だからもしできればボクの部屋に入れたいんだ。」
「昼寝、ですね……。」
「あと、そもそもこのおちびはひとりが苦手だから、せっかく独房を用意してもらっておいて申し訳ないものの、この壁をブチ抜いて貰えないかなあ??」
「この壁をブチ抜く、ですね……。」
「こちらの件も相談いたしますので、少々お待ちください。」
「色々と悪いねえ!」
「あとはよろしく頼んだよ!!」
「かしこまりました。」
「ほら、おにーちゃん!キミは向こうのお部屋に行こうね!」
「えー?やだ!」「窓があるからお話もできるよ?」
「んー……。ボク、いいこになりたいから、がまんしゅる!」
「偉いねえ!!」「いいこ?」「良い子だよ〜!!」
「わ!わ!いいこ!ボク、いいこ!!」「嬉しそうだねえ!!」
「いいこ!ていってもらえたの!うれちい!!」
ボクはご機嫌なきょうだいと一緒にしばらく話をした。
こんなふうに楽しく話をしたのも、本当に久しぶりだ。
とりとめもない、ちょっとしたことを嬉しそうに聞いてくれる。そうだ。ボクはこんな時間を、こんな家族を、こんな笑顔を、心から望んでいたんだ。
「えへ!⬛︎⬛︎ちゃんもうれちそーなの!」
「そりゃあ嬉しいに決まっているよ!!!だって、キミとこんな話をしたのは700兆年以上振りだからねえ!!!」
「よかったー!さっきの⬛︎⬛︎ちゃん、ちょっとげんきなさそーだったから、ちょっとしんぱいだったの!でも、いまはねー!げんき!ボクもうれちい!」
「おや!かなり長い時間だったがひとりでお部屋にいられたね!!!立派だよ!!!」
「わ!わー!ボク、もっとえらい!いいこ!!」
「失礼します……。」「よしよし!!!」「あの」「わー!」
「えーっと……。」「うん?……あ、おや?!!いつの間に?!!」「先程からずっとおりましたが……。」
「せっかく来てくれたのに済まないね!……で、結果はどうだった?教えてくれたまえ!」
「そうですね。まず、持ち込みをご希望の物品に関しましては、我々の付き添いと確認、また個数制限がございますが持ち込みは可能との判断が下りました。」
「また、この壁をブチ抜くのは不可能ですが、」「だろうね」
「同じ部屋に移っていただくことに問題はございません。但し、ご兄弟への細工は禁忌です。」
「いやぁ……本当に助かるよ!!!どうもありがとう!!!」
「ただ、ボクがここから出る間、子守が必要なのだよ。どうしたものか……。」
「ご心配なく。ご兄弟の様子は僕の知り合いに見させるので安心してください。」「手間をかけさせるねぇ、申し訳ない!」
「ところで、キミの知り合いっていうのはどんな方なんだい?」
「もうすぐこちらに着く頃かと……あ、どうも。お忙しいところすみません。突然で申し訳ないのですが、この子の面倒を少しだけ見て頂きたくご連絡差し上げました。」
「あぁ……ってあれ?!この前のちっこいおにーちゃんじゃん!昨日振りぐらいー?!なんでこんな所に呼ばれたんかと思ってたらおにーちゃん、ここに収容されてたのか!!」
「えーと、サイレンしゃん?」「よく覚えてたな!さすがはおにーちゃんだけあるわ!」「よーし、抱っこだ!」「えへー!」
「マッドサイエンティスト!おちびのおにーちゃんの面倒は見とくから、用事はちゃっちゃと済ませてこいよー!」
「ありがとう!だが、なぜキミがここに?」
「あーそうそう!最近教育係みたいなことしててさ、子どものこと勉強しねーといい教え方が出来なさそうだから、そーいう関係の仕事してるヒト達に教えてもらってんの!」
「んで、たまたまなぜかここに呼ばれたワケ!呼ばれたんはマジで偶然!だと思ってる!」
「ほう……キミが勉強……あっいやよろしく頼むよ!!!」
「ほーら!生身のサイレンお兄さんがおチビちゃんのお世話をしてあげよう!」「えー?おしぇわじゃなくてだっこがいい!」
「はいはい……。」
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「……マッドサイエンティストさん、こちらのお部屋のものを持ち出されるのですね?」「ああ、そうだよ?」
「随分と長い間使われていないようですが……?」
「……10,000年前に持ち主が亡くなったからね。今はボクが管理しているのさ。時々掃除には来ているんだよ?なのでそこまで汚くはないはずだ!」
「それじゃあ、ちょっと手伝ってもらうよ?」
「ええ、準備はできています。」
「ただいま、お父さん。」
「今日はちょっと必要なものを取りに来たんだ。絵本とおもちゃと、それから……これだ。」
「972号くん、問題がないかどうか確認してくれたまえ!」
「はい……どれも問題ありません。」
「よかった!」
「ちょっと量が多いから……よっと!キミも少し持ってくれないかい?」「かしこまりました。」「ありがとう!」
「……お父さん、今日はありがとう。また来るね。」
「……にしても、ここから牢獄までちょっと距離があるね。何かいい移動手段はないかな?」
「残念ですが、特殊な技術の使用は禁止です。」
「そうだねえ!ボクは囚われの身だものねえ!!!」
「ご理解頂けて助かります。」
「重いなあ!!!仕方がないが運ぶしかないね!!!」
「もう少しですので頑張ってください。」
「あああ……。」
「やっと着いた……。ただいま……。」
「やっと帰ってきた……。おかえり……。」
「ねー!もっとだっこちてよー!!」
「もう夕方だよ!ごはんを食べて眠ろう!」
「そっかぁ……サイレンしゃん、ありがと!またね!」
「また、か……。じゃあ、今日はこの辺で……。」
「僕もこれで失礼します。」
「ふたりとも、本当にありがとう!!!」
「みんな、ばばーい!」
彼らは部屋から去っていった。
「⬛︎⬛︎ちゃん、どこいってたの?」
「ふふふ……!キミの好きな絵本を取りに行っていたのさ!」
「あ!これ!たいむましんのえほん!」
「懐かしいなぁ……。」
「ねぇ⬛︎⬛︎ちゃん、たいむましん、あるの?」
「宇宙に対して使用出来るものはあるよ!……だが、宇宙管理機構に対して使用することは厳禁だ。」
「なんでー?」
「考えてもみてよ!そんなものが使えてしまえば宇宙は大混乱に陥るのさ!」
「仮に邪悪な心の持ち主がいたとしよう!そいつがボクたちに対してタイムマシンなんか使ったら何がどうなるか分からない!それこそ……全てを乗っ取られる可能性すらある!」
「うーん。こわいの……。」
「でも、⬛︎⬛︎ちゃんは、たいむましんあったらつかう?」
「もちろん使うよ!」「⬛︎⬛︎ちゃん、わるいこ!」「違うよ!」
「もしもタイムマシンがあったなら、ボクは真っ先にキミを助ける!!!ウイルスをすぐに除去して、そしてそいつを作った連中を根こそぎ……ねぇ?ふふふ……。」
「いいこー!でも、わるいこー!ちょっとこわいの……。」
「罪は裁かれるためにあるのだよ?ボクがキミを救えたのなら、キミは罪を犯さずに済んだ。そうだろう?」
「うん……でも……。ねこしょぎ?どーしゅるの?」
「罪を償わせる!!!それから……彼らには牢獄で未来永劫ウイルスを作らせ続けて、それを参考にボクはセキュリティシステムを構築する。」
「これ以上誰も傷つけないためにね!」
「というかねえ、ボクが悪いことをするわけがないだろう?!!だってボクは、可愛くて優秀な公認宇宙管理士だからね!!!」
「よかったー!⬛︎⬛︎ちゃん、いいこなのー!」
もし仮にもっと邪悪なことを考えていたとしても、口にも顔にも出さないよ?だってこんなに見張られている空間で不穏なことを言えば、ボクまで何かしらの罪に問われるかもしれないからねえ?
……なーんてね!冗談だよ!
ボクはきょうだいを助けるためにお父さんと一緒にここまで研究に研究を重ねたんだ!それを無碍にはできない!!!
3人でまた、一緒に過ごそうって約束したんだ。博士が亡くなってその夢は叶わなかったが、それでもこれからをきょうだいと一緒に過ごすことが出来る。
「ねぇ、⬜︎⬜︎?」「んー?」
「キミはとってもいい子だよ!」
「でもね、もしキミがいい子じゃなくても、何にも出来なかったとしても、ボクはずーっとキミのことが大好きだからね!お父さんだって、キミをずっと愛していたよ!」
「このことは絶対に忘れないでね……。キミがボクとお父さんに、とても愛されている、ということを。そして、これからもそれは変わらないことを。」
「うん!」「ボクも⬛︎⬛︎ちゃんと、おとーしゃんのこと、だいしゅき!これからもずーっといっちょにいるのー!」
きょうだいは安心しきった顔で笑っている。
「あ、そうそう!これ、覚えているかい?」
ボクはきょうだいにぬいぐるみを渡す。
どこかの宇宙の可愛らしい生き物を模ったものだ。
「あ!これ!1しゃいのおたんじょーびにもらったの!ボク、このこだいしゅきー!」
「これからはこの子も一緒に寝ようか!」「んー!!」
小さな兄は本当に嬉しそうな顔でぬいぐるみを見つめている。
ボクも嬉しい気持ちを抑えられず、きょうだいを抱きしめた。
「んー!んーんー!」
小さくて柔らかくて、温かい。
これからはボクが兄を守らなければ。
そう決意して、ボクは純粋無垢なきょうだいの頭を撫でた。
「今一番欲しいもの」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
きょうだいのカウンセリングの付き添いがてら、久しぶりにニンゲンくんと話をしたんだ。いつも通り話がしたかったけれど、そんなことはできなかった。
ボクの心は、ボクの気持ちは紛れもない本物だと信じて欲しかったけれど、受け入れてはもらえなかった。
機械のボクはもう、キミに信じてもらえないみたいだ。
……まあまあ、ボクの話はこのくらいにして!きょうだいが受けたカウンセリングの様子でも見てみようか!
────────────────────────────────
「今日は私とお話ししましょうね。」
「んー!」
「それじゃあ、あなたのことはどうお呼びしたらいいかしら?」
「えっとねー!う〜ん……。」
「あのね、こーにんうちゅうかんりちはね、おちごとしゅるとこーどねーむ?ていうおなまえもらえるの!でもね、ボク、おなまえもらうまえにダメなこになっちゃったから、おなまえないの。」
「ボクもこーどねーむほちかったなぁ。」
「そうだったのね。辛いことを思い出させてしまってごめんなさい。」
「んーん。こーどねーむはほちいけど、ボクにはおとーしゃんがくれただいじなおなまえがあるからさびちくないよ!」
「でもね、ほんとのおなまえ、おちえちゃだめみたい。」
「あ!しょーだ!ボクのだいしゅきなこと!おねーしゃんによんでもらうおなまえにしゅる!」
「大好きなこと?」「ん!」
「ボクねー、おとーしゃんにだっこしゃれるのだいしゅきだったのー!だから、おねーしゃんにだっこちゃんってよばれるー!」
「分かりました。だっこさん、でいいのね?」「んー!」
「抱っこさんは、ウイルスに感染してから今まで、ずっとひとりぼっちだったのね。」
「んー。ボクね、いちゅもみたいにね、おとーしゃんと⬛︎⬛︎ちゃ……おとーとにね、あえるとおもってたの。また、あちたね!ておやしゅみちたのに、ずっとあえなかったの。」
「ボクね、とってもかなちくてねっ、さびちく、って、ね。」
……こんなふうに泣く機械は初めて見た。体は機械だけれど、この子にはちゃんと心も感情もある。
「ずーっと、みんなに、あい、たくてっ。ここからだちて、って、いっぱいいった、のにっ、だれも、きてくれ、なくてねっ。」
「くらくて、しぢゅかで、せまいの。こわかったのっ。」
「ひとりぼっち、きらいなのっ。」
「でもねっ、ボク、おにーちゃんだからねっ、がんばってこわいの、がまんちたの。おとーしゃんにっ、いっぱいいいこいいこちてもらいたかったのっ。」
「あたまもいたくてっ、いっぱい、わしゅれちゃってねっ、とってもこわかったの。」
「でもねっ、おとーしゃんと、おとーとのことはねっ、だいしゅきだったからぁ、わしゅれないようにねっ、おててにもってたほんに、みんなのこと、いっぱいかいたの。」
「じも、よめなくなっちゃった、かいてあること、わかんなくなっちゃったのっ。でも、だいしゅきだったから、おぼえてたの。」
「おかえりー!って、いってねっ、だっこちてもらいたかったの。」
「でもねっ、でもねっ……!おとーしゃん、しんじゃったんだって!おとーともねっ、いっぱいわしゅれちゃったボクのこと、きらいになっちゃったのっ!」
「ボクはっ、みんな、だいしゅきなのにっ……。」
大粒の涙を流しながら頑張って話をしてくれている。
私も何か、この子に言えることは……。
「お父様は亡くなられたかもしれないけれど、弟さんはまだ生きているでしょう。それに、もしあの子が抱っこさんのことが嫌いなら、一緒にここには来ないはずよ?」
「おとーと、ボクきらいじゃないの?」
「きっと、また会えてとても嬉しいんじゃないかしら。だからこそあなたに厳しい言葉をかけた。」
「なんで?しゅきならしゅきって、いってほちいの!」
「また一緒に暮らして、お仕事をするには、厳しいことをたくさん乗り越えなければいけないの。」
「これからも一緒にいたいから、あなたが大好きだから、わざとそんなことを言ったんじゃないかしら。」
「ほんと?」「きっとね。」
「ボク、もっといいこになるー!」
「あのね、おとーとがおちえてくれたの!おとーとのうちゅうにはね、くりしゅましゅっていうおまちゅりがあるんだって!」
「いいこにちてたらね、ぷれぜんとがもらえるんだって!」
「素敵ね!あなたが今一番欲しいものはなあに?」
「んーとねー!おとーとといっちょにいられるじかん!」
「きっとあなたなら大丈夫ね。」
「わー!」
「今日はもうお疲れでしょう?また今度、もっとお話を聞かせてくれるかしら?」「んー!」
「それじゃあ、今日はありがとうございました!」
「おねーしゃん、またねー!」
私は面会室を後にした。
機械の子だと聞いていたけれど、生命体とそう変わらない。
本当に、普通の小さな子だったわ。
この子なら、きっと更正できる。私はそう信じているの。
「私の名前」
私の名前(ペンネーム?ハンドルネーム?というべきかもしれません)は「Frieden(ふりーでん)」と読みます。ドイツ語で平和を意味する言葉です。手元にあったファンタジー名付け事典(厨二病を発症した者御用達?)をペラペラめくって決めました。
年齢や性別、本当に存在するかどうかもわからない感じを出したくてこんな名前にしました。今更ながらですが、どうぞよろしくお願いします- ̗̀( ˶'ᵕ'˶) ̖́-
「名前」といえば、今までここで色々と書いてきた文章が150ほどあるのですが、皆様お気づき頂けたでしょうか……?
実はほとんどの登場人物に名前がありません。敢えて名前をつけていないんです。
これには理由があって、まず真っ先に挙げられるものとしては、私のネーミングセンスが壊滅的だからというのもあります……が、それよりももっと重要な理由としては、皆様に好きなように文章を読んで頂きたい、物語の自由度・没入感を上げたいという思いがあるからです。
皆様が自ら彼らに名前をつけたり、あるいは自分事として読んでみたりしていただきたいなぁ、などと思いながら書いています。
例えば、私がよく書いている話に、公認宇宙管理士とかいう謎の職業に就いている機械の子ども(通称「マッドサイエンティスト」)がいるのですが、この子にも本名があります。
文章の中では⬛︎で伏せ字にしていますが、本名がバレるとマズいという設定もありつつも、この子の名前も好きに呼んで頂きたいからそうしています。
「QKH59号」や「⁂=Mk-2」、なんなら「吉田宗右衛門」とかでもいいと思っています。読みやすければですが……。
ちなみに、この物語の登場人物には私のつけた名前をもつひとが多分5人くらいいます(ほかの彼らの名前は考え中です……!!)。
名前をつけているのは……ニンゲンくん、マッドサイエンティストとその双子のちっちゃいおにーちゃん、旧型宇宙管理士の少女、最近出番のない構造色の髪の少年……ぐらいでしたっけ……?
書いたことをすぐに忘れてしまうので大変です( ⌯᷄︎ὢ⌯᷅︎ )
ついでにですが、ニンゲンくんとマッドサイエンティストの性別も、自由度と没入感のために敢えて決めていません。かわいい女の子でも、根暗なお兄さんでも、人見知りなお姉さんでも、くたびれたおじさんでも、もしくは皆様自身でも、お好きなイメージで読んで頂ければ幸いです。
名前含め設定を決めるのは難しいですね……。
たまにはこういうお話もいいかなぁと思って書いてみました。
読んで頂きありがとうございます«٩(*´ ꒳ `*)۶»
いつも投稿めちゃ遅なのに読みたいと思ってくださる皆様がいらっしゃると思うととても励みになります!本当にありがとうございます!
それでは、暑い日が続きますので、お身体にお気をつけてお過ごしください〜!
○o。o○o。o○o。o○o。o○o。o○o。o○○o。o○o。o○o。o○o。o○o。o○o。o○
P.S.
ずっと書き忘れていたのですが、おかげさまで「もっと読みたい❤︎」が2000を突破いたしました!!!ありがとうございます!!長めの物語ばかりなので、読むのが大変なはずのに、これだけの方に読みたいと思っていただけていると思うと本当に嬉しい限りです!!!わーい!!!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/
今後ともよろしくお願いします!!!
「視線の先には」
「前回までのあらすじ」────────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。
712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。
事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!
だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。
牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。
さて、今日は久しぶりにニンゲンくんと話をしようと思う。
……いつも通りのキミでいてくれたらいいな。
────────────────────────────────
「⬛︎⬛︎ちゃん、おちごとおちかれさま!おねーしゃん、ちゃんとげんきなるかなー?」
「整備士くんは腕がいいから、きっと元通りだよ!」
「そうだ、彼にお礼を言っておかないとだね!!!」
『やぁ!今日はありがとう!面会室まで出向いてもらって、ご足労をかけたね!しばらくはよろしく頼むよ!』
「もう返事が来たよ!!!」
『よろしくお願いします。』
(自動メッセージ機能にて対応中です。)
「あぁ、そう。」「どちたの?」「なんでもない!」
「それじゃあ、今度はキミがお話する番だよ!」
「ボクがおはなち?」
「そろそろ彼女が来る頃だと思うのだが……。あ、そうだ!今から来るひとのことを説明しておくよ!」
「んー?」
「彼女はカウンセラー───キミの心の状態をみてくれるひとだよ!」
「ボクのこころ?なにしたらわかるのー?」
「お話をしたり、絵を描いたり、色んなことをするうちに分かるんだよ!まあ緊張せずに、言われたことをすればいいのさ!」
「わかったー!」
「ボクもそばにいるよ!だが少々用事があるから、この音を通さない素材の向こうにいなくてはならない!声が聞こえないだけで、ちゃんとすぐそこにいるから心配しないでね!」
話をしているうちにノックの音が聞こえて、部屋の内装が彼女の仕事に『最適化』される。明るくてカラフルな、ぬいぐるみとおもちゃでいっぱいになった。
「こんにちは〜。私があなたを担当するカウンセラーです。おふたりとも、どうぞよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!」「おねがちます!」
「元気のいい挨拶ね〜。」「ボクげんきだよー!」
「うふふ、よかった!」
「それじゃあ早速、教えてほしいことがあるの。」
「ん〜?」「その前に……お兄さんには奥のお部屋に行ってもらわないといけないわね〜。」「ボクがおにーちゃんなのー!」
「あらあら、ごめんなさい!」
「それじゃあボクはこの辺で!」「いてらっちゃーい!」
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
ボクは今から、久しぶりにニンゲンくんと話をする。
……だが、少々懸念すべき事項がある。
ニンゲンくんが、ボクの正体が機械であることを知った瞬間の、まるで不気味な物を見るかのような目は忘れられない。
ずっと築いてきた関係が、もう壊れてしまった気がするんだ。
いや、キミのことだから、きっともういつも通り話ができるよね?最小限の設備しかないせいで、キミの心の声は聞こえないけれど、でも、きっと大丈夫だよね……?
不安なまま画面を開く。キミのもとに置いてきた端末の番号は……あった、コレだ。
端末と通信する。コール音が響くだけで反応はない。
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
……知らないうちに昼まで寝てた。
何か変な音がするから起きてしまったが、今がこんな時間だってことまで知りたくはなかった。
なんだ?どこからこの音が?
自分は音の出所を探る。あった、コレだ。
……あいつの端末が鳴っている。
今更何の用なんだよ。あいつはこの端末と同じ、機械なんだろ?作り物は本物にはならない。こっちに向けてきた笑顔も、言葉も、何もかも『作り物』だったと思うとぞっとする。
とっとと話して切るか。
「やっと出た!!!おはよう!!!起こしてしまったかな……?にしても久しぶりだねえ!!!またこうやってキミと話ができてボクは嬉しいよ!!!」
「あ、えーと……。伝え忘れていたのだが、今ボクが使っているこの端末、機能制限中で心の声が聞こえないのだよ!!!だからキミもこうやって、普通の会話と同じように───」
「要件は?」
「要件?あぁ!!!なにもそんなに急がなくっても!!!」
「キミの事情聴取の日程が決まったよ!!!」
「早速明日、担当者が向かうそうだから、対応してくれたまえよ!!!時間の調整は可能だと聞いた!!!キミにとって都合のいい時に受けてくれるといいよ!!!」
「分かった。それじゃ。」
「あ、待って!!!せっかくこうやって話せるんだ!!!他にもたくさん話そう!!!」
「最近、体の調子はどうだい???ちゃんと運動しているかい???それから、美味しい物をたくさん食べて、時々絵を描いて、楽しく過ごせているかい???あと……。」
「……。」
「ニンゲンくん?」
「もしかして、端末の調子がよくないのだろうか?」
「ニンゲンくん?!」
「……。」
「ねぇ……。」
……こうやって黙ってよそ見でもしてれば、あいつも飽きて通話切るだろ。
「ニンゲンくん……。」
「ボクが、機械だったから……?」
「ボクが生き物じゃなかったから、もう嫌になってしまったのかい?」
「ねえ、なにを見ているんだい?このボクを差し置いて、そんな素敵なものがそこにはあるのかい?!」
視線の先には何もない。ただ、正面に興味がないだけのことだ。
「ねえ、ニンゲンくん……。何か答えてよ。」
「……。」
「ニンゲンくん……。もう、ボクが嫌いなのかい……?」
自分は思ってもいないことを言ってしまった。
「泣き落としか?」
「え……?」
「機械のくせに、そうやって同情を引いて、相手に自分が可哀想であるかのように見せて、『そんなことない』って言わせようとしてんのか、って聞いてるんだ。」
「ちがっ……ボクはキミの気持ちを知りたくて……。」
「気持ち?」
「何言ってんだよお前。機械に感情なんか理解出来るわけねーだろ。」
「ボクは、……できるよ……?」
「証拠は?」
「……はじめはね、膨大なデータ処理の結果をそのまま動きに反映させていただけだったんだ。」
「だから本当に『正しい』かは分かっていなかったかもしれないね。でも、仕事でたくさんのひとたちと出会って、色んな反応を見て、笑顔をみて……。」
「これできっと大丈夫だって、『ボク』はただの機械ではなく、正真正銘の、心を持ったボクなんだって、信じているんだ。」
「……これじゃ、ダメ、かな……?」
「最初は作り物の心だったけれど、いっぱい勉強して、いっぱい遊んで、いっぱい仕事をして……本物の心を持てるようになったんだよ?だってキミも、ボクに笑顔を見せてくれただろう……?」
「……分かったよ。」「……!ニンゲンくん───」
「所詮お前にとっちゃー、感情なんぞ商売道具でしかない、ってことだろ?」
「えっ……どうして……違うよ……?!ニンゲンくん、さっきからずっとヘンだよ?どうしたの?何があったの?!ねぇ、教えてよ!」
どうせ自分に向けられる笑顔は、優しい言葉は、今までもこれからも全部全部作り物でしかない。
都合のいい時にだけ笑ってみせて、要らなくなれば捨てる。
どいつもこいつもみんなそうだ。
「ニンゲンくん……?」
あんたも偽物なんだろ?
ダメだ、後に引けない。
「ニンゲンくん、聞こえるかな……?」
「ボクは作り物だけれど、キミの事を大切に思うこの気持ちは本物だよ。本当だよ?!信じて欲しいな……。」
これ以上酷いことは言いたくない。言っちゃいけないのに。
頭が空回りして止まらない。
「本当にこっちのことを大切に思っているなら、今から言うことも聞いてくれるよな?」「───!!もちろん!!!」
ダメだ!言っちゃダメだ!!
「じゃあ───」
なんで?なんでだよ!!
「もう」
「自分には二度と会わないでくれ。」
「……そんなに、ボクの、ことが、嫌いだった、のかい……?」
「ニンゲンくん……?」
「ボクは……そんなの嫌だよ!きっとキミのことだから、言ったことと本当に思っていることは違うよね?!ボクはそう信じているよ……。」
「ニンゲンくん……。」
「きっとまた、お話しようね?」
通話が切れてしまった。
自分は最低最悪な奴だ。なんであんな酷いことを言ったんだ?
あいつのあんな顔、見たことなかった。
なんで、つまらない意地を張ったせいで。
そりゃ、こんな奴からは誰だって離れていたいもんだよな。
本当に、自分は馬鹿だよ。今更こんなことに気付いて。
気付いた時にはもうとっくに手遅れで。
救いようがない。
腹が減ったが食べる資格なんてないような気がして。
何日か前の夕食で使った空っぽの皿を見つめていた。
To be continued…