「入道雲」
入道雲を見ると、なぜかすごく明るい気分になる。
うおー!夏が来たー!!とか、前に見た映画みたいで綺麗とか、綿菓子やソフトクリームみたいで美味しそう!!とか、もうすぐ夕立が来るかも……とか、いろんなことを考える。
昼間はあんなに晴れていたのに、夕方が近づくにつれて蝉は静かに、空は薄暗く、遠くからは雷鳴が迫ってくる。
入道雲を見上げているうちに大きな雨粒が降ってきて、急いで近くの建物に駆け込んで外を見つめていると、遠くが全く見えなくなって、たまに雹が降ることもある。
このご時世、こんな大雨を見てそんな気持ちになるのはよくないのかもしれないけれど、小さい頃と変わらず、今でもすごい雨が降ると非日常を感じてわくわくしてしまう。
それよりも好きなのは、大雨のあと、サーっと晴れて明るく照らされる街を見ること。
水たまりに映るサルスベリ。
羽を乾かすツバメたちの鳴き声。
そして、東の空に見える虹。
入道雲も、そのあとの静かな輝きもいいなぁと思いながら、今年もまた夏を迎える。
「ここではないどこか」「夏」(6/27、28)
そこそこ書き上げていたのに入力した内容が全て消えてしまったからまとめて投稿することにしたよ!!!
これ、何回やっているんだろうね?!!。°(っ°´o`°c)°。
あと、一昨日と昨日の分で内容に温度差がありすぎて風邪をひきそうだよ!!!でもあまり気にせず読んでもらえると嬉しいな!!!
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「ここではないどこか」
その前に!!!「前回までのあらすじ」だよ!!!
わかりにくくなってきて書いた本人も色々と忘れているからね!!!これからはちゃんと書くようにするよ!!!
「前回までのあらすじ」─────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見する!!!
そこで、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て、原因を探ることにした!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!
聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!!!
すると、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!!!
ボクも色々と探しはしたものの、きょうだいはなかなか見つからない!!!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!
というわけで、ボクはその場所へと向かうが……。
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「ここではないどこか」
……今日はやけに騒がしい。まだ朝の4時だっていうのに。
自称マッドサイエンティストがまーた変なことをしようとしてるのか?
目が覚めてしまったので、自称マッドサイエンティストの元に向かうことにした。
……おい、今何時だと思ってる!
「おや、随分と早いお目覚めだね?起こしてしまったかい?」
「たった今、急用が入ってね!ちょっと出掛けることになったのだよ!というわけで、自宅警備を頼む!!」
ああ、わかった。……いや、自分も行くよ。
「おやおや、どうしてキミがご同伴するのだい??」
なんとなく、もう二度と会えないような気がして。
……ここではないどこかへ行ったまま、帰ってこないかも、なんて思ってな。
あんたのことだから、大事なことをいつも言ってくれないんだろうと踏んでいるが、おそらく「急用」っていうのは……。
あんたの片割れとやらが見つかったとか、だろう?
「……流石は我が助手!!!なんでもお見通しってワケだね!!!しょうがない!!!キミも一緒に行こうか!!!」
こうして、自分たちはこいつの片割れのいるところへと向かった。
01100101 01101110 01100011 01101111 01110101 01101110 01110100 01100101 01110010
……この空間の内部にいるのか。
現場の前だからか、捜査員らしきひとたちが多くいて物々しい。
自分たちのもとに、黒いのか赤いのかわからない、金属みたいな艶のある髪の女の子が近づいてくる。
「マッドサイエンティスト、もう来たんだ。あ……そっちがニンゲンさん?」
「ああ、その通りだ!!!人手は多い方がいいだろう?!!」
「いつもあんたは声がデカい!もし『回収対象』……いや、あんたの双子の兄?を刺激したらどうすんの?」
「まあまあ!!!ここの音は内側にゃ届かんよ!!!」
「ニンゲンさん、どうも初めまして。当事件を捜査している者です。いつもやかましいこいつの子守、お疲れ様。」
……あ、どうも。
「ここから先は、かなり危険が伴うことが予想できる。だから、こっちとしては別室で事情聴取でも受けてもらった方が安全だと思うけど、多分この奥に行くよね?」
そのつもりでここに来たんだ。
「はぁ……。本当はうちらだけでけりをつけたいけど、一応あなたも重要参考人みたいなものだから、今回は特別に内部への出入りを許可するよ。」
「但し、危険な行動は慎んでね。」
……そんなことをするつもりはないけど、一応気をつけるよ。
こちらの会話をよそに、マッドサイエンティストは空間の入口をじっと見つめている。
……どうした?何か気になるのか?
「ここ、キミも覚えているかい?」
「……この空間は、キミも会ったことのある旧型管理士の少女が作った空間だよ。」
「そしてここは、ボクがわざと作った脆弱なセキュリティポイントの前。ちょっとつつけばすぐにでも入れる。」
「ねぇ捜査員くん。本当にこの内部にボクのきょうだいがいるんだよね?」
「ああ、間違いなくいるよ。」
「ボクが気になるのは、弱いポイントがあるとはいえ、本来ならボクとニンゲンくん、あともうひとりの少年にしかこの空間のアクセス権がないから誰も見つけられないはず。」
「なのに、ボクのきょうだいがここの内側にいるというじゃないか。……どうやってこの場所を認識して侵入したのだろうか。」
「そんなのわかんないよ。ただ、アーカイブの追跡タグがここを示しているから、このセキュリティポイントから入ったんだろうってことは予想がつくってだけだ。」
「とにかく、一刻も早く回収したいからもう突入するよ。」
「ああ、ボクも準備万端だよ!!!」
「それじゃ、行くよ……3、2、1……。」
『許可されていない挙動を感知しました。コマンドを入力してください。』
「……なにこれ?」
「おや???ボクはこんなものを設定した記憶がないが???」
コマンド?なんだそれ?
「まあとにかく!!!ものは試しだ!!!仕方ないからブルートフォースでも仕掛けよう!!!」
ブルートフォース……?
「よし!!!『コマンド』といったらまずはこれだよね!!!」
『↑↑↓↓←→←→BA』
『コマンドの入力を確認しました。空間内へのアクセスを許可します。』
「入れたんだが?!!」
「ウッソだろう?!!セキュリティの意味がまるでないじゃないか!!!」
「……それ、なんのコマンドなの?」
「詳しくは上のコマンドを検索してくれたまえ!!!」
「みんな、心の準備は出来てるよね。十分注意を払って行動するように。」
「イエッサー!!!」
……本当に大丈夫なんだろうか。
とにかく、自分たちは空間内部へと入ることとなった……。
To be continued…
゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚
「夏」
夏が来るとふと思い出すことがある。
高校の頃、月に何回か土曜授業があった。
いつも通り、夏の暑いなか学校へと向かっていく。
あともうちょっとで学校に着く。
そう思ったとき、右の方から観光バスが来るのが見えた。
あー、もしかして修学旅行とかかな?なんて思って見ていると、車内の知らない制服を着た女の子と目が合った。
あ、どうも……なんて思っていると、その子が手を振っている。
周囲を見渡しても私以外誰もいない。
「もしかして私?」とジェスチャーを送るとその子は嬉しそうに頷いた。
私に向かって手を振ってくれたとわかったので、私もできるだけ大きく手を振り返した。
そうしたら、その子だけでなく、こっちを見ていた別の子達も手を笑顔で振ってくれた。
バスはあっという間に行ってしまったので、手を振れた時間は多分10秒もない。でも、知らない子たちと言葉も交わさず楽しくなれて、とても嬉しかった。
彼女達が地元での修学旅行を楽しんでくれていたら嬉しいなぁ、なんて思いながら、私は学校へと歩いた。
夏が来ればこの短い時間を思い出して、今でも嬉しくなる。
あの子たち、今元気にしてるかな?
゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚
「君と最後に会った日」
同じ日に生まれて、同じひとに育てられて、ずーっと一緒にいたボクの双子の片割れ。
ボクは全部覚えているよ。
深い赤にも紫にも見える不思議な色の髪も、
ごはんを食べる時のまんまるなほっぺたも、
小さな手のぬくもりも。
キミが不慮の事故でウイルスに感染して、苦しみながら思い出を忘れていくところも、キミのために何もできなかったボクらのことも、隔離されてひとりぼっちになったキミの悲しそうな顔も。
もちろん、キミと最後に会った日のことも覚えている。
ある日突然、キミの機能を全て凍結させることが知らされた。
これからはアーカイブとして、ただの事故の記録としてしか、キミは存在できないって、そう言われたんだ。
キミには明日からもう二度と会えないとわかったから、ボクと博士は最後に面会を申し込んだ。
これがキミと最後に会った日のこと。
何にも訳の分からないままボクらの方を嬉しそうに見つめるキミを、無邪気にボクの名前を、博士を呼ぶキミを見て、いてもたってもいられなくなった。
幼いボクは、なんとかしようと思って偉いひと達に話しかけたよ。「なんで⬛︎⬛︎は閉じ込められなきゃいけないの?⬛︎⬛︎の病気、きっと治せるでしょ?」って。
そしたら彼らはあんなことを言った。
「第293999号も資料として研究の役に立てたら本望だろう。」
あぁ、そうか。このひとたちにとってボクらは代わりのきく道具でしかないんだって、その時やっと思い知ったよ。
博士はとても怒っていたけれど、所詮機械は機械なんだ。
キミとまた会うために、自分が機械である事から逃れるために、ボクは絶え間なく仕事と研究を繰り返した。
……皮肉な事に、ボクは彼らにとってさらに都合の良い機械になってしまったわけだが。
まあそれはいい。
アーカイブ管理室からいなくなったキミの事を考えていると、突然連絡が入った。
どうやらボクの片割れが見つかったらしい。
ボクのすべきことはキミを無事に保護して、そして───。
また一緒に笑って暮らすことだ。
ボクは急いで、その場所へと向かった。
「繊細な花」
レースのカーテンのような
その間の柔らかな光のような
柔らかな光を浴びる繊細な花のような
あなたは美しい、儚いひとだった
朝日にきらめく銀のさざなみのような
さざなみに照らされる木陰のような
木陰に隠れるすみれのような
そんな美しい瞳で見つめられる時間は
とてもとても、幸せなものだった
隠されたセノーテのような
ガラス細工のような
雨に濡れたサンカヨウのような
透き通った髪も肌も、とても美しかった
誰かが悲しんでいるときには
優しい子守唄のような
懐かしいひだまりのような
たんぽぽの綿毛のような
ひとに寄り添った言葉を紡いで
誰かを愛するときには
夏の日の花火のような
真夜中の灯台のような
真紅の薔薇のような
そんなまっすぐな歌を歌った
桜の花びらのような指先も
牡丹のような笑顔も
鈴蘭のような声も
すべてが、すべてが愛しかった
でも、あなたは今、どこにもいない
赤いスイートピーのように
まるではじめからいなかったかのように
どこにもいない。
それでも世界は歩みを止めない
季節外れの沈丁花のような
私の心を置いてけぼりにして進んでいく
私も進まなくては
あの繊細な花のように
「1年後」
ニンゲンくんが眠りについた。
暗い部屋でボクはひとり、昔のことを思い出していた。
ボクを作った博士のこと。
そして、一緒に生まれた双子の片割れのこと。
ボクらが公認宇宙管理士の資格を得たのは2歳の時だった。
お父さん───いや、博士とボクら兄弟で試験を受けて、めでたくみんなで合格、これから頑張るぞ!
……そう思っていたのにね。
仕事について勉強しているとき、きょうだいが言ったんだ。
2つで1つのペンダントを作って、それを1年後、ボクらが3歳になったらお父さんにプレゼントしよう、って。
ここまで育ててくれてありがとう。これからも一緒にいようね。
次の誕生日を迎えた時、博士にそう伝えたくて、ボクもそれに賛成した。
いっぱいお話をして、勉強もして、笑って。
それはそれは幸せな日々だった。
本当に楽しかった。
きょうだいと話すのも、博士の膝の上でくつろぐのも、ごはんを食べるのも、一緒のベッドで眠るのも。
全部全部、大好きな時間だった。
こんな日がいつまでも続けばいいって思っていた。
だけど、そうはいかなかったんだ。
ボクらが3歳になる前、きょうだいは事故でウイルスに感染した。そのウイルスは侵入した機械のデータやプログラムをランダムに削除するもので、当時のボクらでは無力化できない代物だった。
データが消えて、プログラムが消えて、その度に激しい頭痛で苦しむきょうだいを、ボクは見ていることしかできなかった。
ボクと博士で必ず治すと決めたのに、なのに、最後までウイルスの排除ができなかった。他の宇宙管理士曰く、事故とはいえウイルスに感染した機械を使うわけにはいかないということだった。
うるさい!黙れ!生まれ方が違うだけで、ボクらには心があって、感情があって、そして愛だってあるんだ!
……だから、きょうだいと一緒にいさせてよ。
だけど、そう都合よく話は進まない。
ボクのきょうだいは、アーカイブ化───事実上の凍結状態に置かれることとなった。
アーカイブ管理士によると、本来なら即座にスクラップ行きのところを、温情でアーカイブとすることに決めたそうだ。
それでもやっぱり悲しいよ。
博士は「お父さん」と呼ばれる度に悲しそうな顔をするから、ボクはいつしかそう呼ぶのをやめた。
キミが目覚めなきゃ、元通りにはならないんだ。
だから、キミがいつでも目覚めて良いように、これ以上被害を増やさないために、ボク達は必死でウイルスを無力化する方法を探った。
とっても大変なことだったが、キミのためだと思えばどんなことだってできた。ボクも博士も、すごく頑張ったよ。
そしてついにウイルスの無力化に成功した。
いつか必ず、博士が生きているうちにキミを取り戻して、今度こそ博士───いや、お父さんにプレゼントを渡そう。
それができたら、どれだけ満たされていたのだろうね。
10000年前、ついに博士も永遠の眠りについてしまった。
きょうだいが揃う前に、ペンダントを渡す前に。
博士は行ってしまった。
ボクはひとりぼっちになってしまった。
仕事をして孤独をなんとか誤魔化していたが、ふとしたときにきょうだいと博士のことを思い出す。
思い出しても、何にもできないのにね。
……しかも最近、アーカイブ管理室にいるはずのボクのきょうだいがいなくなったことが発覚した。
元気なきょうだいにまた会いたい。
また名前を呼んでほしい。
一緒に話をしたい。
1年後、なんてわがままは言わないから、いつだっていいから、いつまでだって待つから。
必ず、元気でまた会おうね。