「逃れられない」
これは3日位前に見た救いのない夢の内容です。
夢なので辻褄がうまく合っていないところもあるかもしれませんが、なんとか纏まっていることを祈っています……。
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暗雲が垂れこめる中、ようやくここに辿り着いた。
ずっと連絡のつかない君を偶然街で見かけた時は、とても嬉しかったよ。幼い頃から難しい魔法を学んで、実践までできた可愛くてとても優秀な私の弟と再会できて。
あれだけ多くの魔法を扱いながらも、君は自分に自信が持てていなかった。だが、14歳にして国の治安を守るための魔法使いが集う組織に勧誘され、それを了承した。
「兄さんみたいに立派になりたい」とはにかみながらそう言っているのを見て、嬉しくもあったが正直不安だった。
代々優秀な魔法使いを生み出す貴族の家に生まれたのに、私は全くといっていいほど魔法が使えない。君はそのままでも私よりずっと立派な魔法使いだ。
それに、まだ幼さが残る弟を危険と隣り合わせの場所に送るなど、あまりに残酷なことをどうして私ができよう?
私は彼にそう伝えた。
だが弟は「大丈夫だよ。兄さん、そう信じてくれないかな?」と答えるばかりだった。
そしてとうとう君は旅立ちの日を迎えた。
不安なまま君を見送る。
「何かあればいつでも帰ってくるんだよ?」
「……ありがとう。」
これが君と私との、最後の会話となってしまった。
君が家を出てから一週間、一ヶ月、一年。
全く、全く音沙汰がない。
真面目な君のことだから時々は連絡をくれると思っていたが、葉書の一通も来なかった。
もしかしたら、機密情報を扱っているから君の手紙に検閲が入っているのかもしれない。最初はそう思ったが、連絡も帰省もないのは流石に変だ。
異変を感じて時々君の所属しているところに足を運んだこともあったが、いつも君は不在だった。
やはりおかしい。
新任の君がいつもどこかに出掛けているなんてありえない。
これを受けて、私は国内外で君を探してもらえるよう人々に呼びかけた。
それでも見つからない。
そんなある日、魔法学校で組んだ班の仲間と街を歩いていると、一人で俯きながら歩く君を見つけた。
一瞬時が止まったかのようだった。
間違いない。あれは私の弟だ。
仲間の呼びかけにも応じることなく、真っ先に君を呼び止めた。
名前を呼ばれた私の弟は、ひどく怯えた表情でこちらを振り返った。
……どうしてそんな顔を?何があったんだ?
何を言っても「ごめんなさい」と震える声で繰り返すだけで要領を得ない。だが、何かあったに違いない。
「とにかく、家に帰ろう。君の好きなモーンクーヘンもちゃんとあるから───」
「あ、あの家には、帰れない……!!」
そう言い残してあっという間に消えてしまった。
その様子を見ていた仲間のひとりが、「あれがお前の弟か?」と聞いてきた時に私は我を取り戻した。
「あ、ああ。」
「それにしては様子が変だったけど……。あと、なんか変なにおいしなかった?」
「におい?」
「なんていうか、薬みたいなにおい?もしかしてこれからにおってたのか?さっき弟くんが落としていった……なんだこれ?」
路上を見ると何かお守りのようなものが落ちていた。
……これは何だ?黄色がかった白い石と枯れ葉のようなものが紐で留められている。
「あ、あたしこれ知ってるかも!」
魔法使いが起こした事件の解決を夢見る仲間が言う。
「この葉っぱ、珍しい薬草なんだけど、においを長期間嗅がせた対象の思考力を弱めて自分の思い通りにする作用があるんだ。」
「それと、こっちの石は……見るからに怪しいのは分かる。こっちはあんたに任せる!」
そう言って彼女はこれを見つけた仲間に託す。
「いや、急にんなこと言われても……。でもまあいいか、やってみよう。」
「……これは、もう少し詳しく調べたいところだが。」
「俺が見るに『自分の一族が市民を苦しめ続けているから、この手であの家を終わらせないといけない』という思考を植え付けるのと、これを作った人間がこれを持った人間がどこにいるのかをすぐ分かるようにするための魔力を込めたものだ。」
「……なぜ、こんなことを……?」
もうひとりの仲間が口を開く。
彼女は私の弟と同じくらい優秀な魔法使いだ。
はじめはなかなか口をきいてくれなかったが、諦めずに声をかけ続けたことが功を奏し、心を開いてくれた。
「目的は分からないが、狙いはおそらく私の一族だ。弟を取り戻すためにも、家族を守るためにも───」
「みんな、力を貸してくれ!」
仲間や魔法学校の人々の協力で、私たちは弟とあの石の主の居場所を掴んだ。
これでやっと弟を救える。
そう思ってその場所に向かった。
そこは森の奥深くの古い洋館だった。
しーんと静まりかえっているが、私には分かった。
この近くに間違いなく弟がいる。
おそらくこっちの方向だ。足を進める。
井戸があった。ここにいるのか───
弟の気配に気を取られてしまい、何かを踏んだことに気づいた時にはもう遅かった。
体が痛い。痛い。いたい。
あまりの痛みに我を忘れた。
なんとか正気を取り戻し、君と目が合ったときにはもう遅かった。
熊のような、ムカデのような化け物となった私は、頭から弟を飲み込んでしまっていた。
赤黒く染まった自分の体を見た。
かつて弟だったものが口から滴り落ちる。
「違う……違う……!」
私はそう言葉にしたはずなのに、口からは気味の悪い音が出るだけだった。
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なんとこれが記念すべき100作目です!!!恐ろしい!!!
夢でよかった!!!
いつも私の書いたものを読んでくださる皆さま!
「もっと読みたい!」と思ってくださる皆さま!
本当にありがとうございます!
皆さまのおかげでここまで続けることができました!
これからもどうぞよろしくお願いします・:*:・(*´∀︎`*)・* .:・
「また明日」
「また明日」って言われたので!!!
「また明日」と言われたから、
ボクはちょっとの間自分の時間を過ごすことにした!!!
私は貴方を待っていた。
まずは体のメンテナンスから始めよう!!!
少しでも貴方に尽くしたいから、資料に目を通す。
バッチリだね!!!メンテナンスが必要ないくらいに!!!
少し前に追加された「宇宙エネルギーを吸収する機能」についての資料。
次は!!!こっそり隠しておいたチョコミントアイスを食べるよ!!!おいしい!!!
この機能を使いこなせるようになれば、エネルギーを無駄にせず再利用できることが分かったの。
まだまだ夜は続く!!!面倒だがレポート作りに取り掛かるよ!!!
長い夜はまだ続く。貴方の為に、何をしましょうか。
ボクの読み通り、例の存在は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎で間違いなさそうだ。だがしかし!!!これをどこからどこまで、どう説明する?!!
私が貴方の為に、宇宙の為に出来ること。
今貴方は、巨大な銀河団の爆発による宇宙の欠損で頭を抱えている。だから、この宇宙吸収機能を使ってみましょう。
は〜、参ったな!!!よりにもよってアーカイブ管理係と連絡がつかないっていうのが困る!!!全く!!!アイツは何をしているんだい?!!
説明書通りの手順を踏んで、爆発に向かって手を翳す。
爆発によって発生した膨大なエネルギーが吸収されたので、壊れた部分に還元したの。
とりあえず!!!いつ行くかまでは決めていないが!!!すぐにアーカイブ管理室に向かわないとね!!!
……また指が欠けてしまった。
おっと、もうそろそろキミが起きてくる時間だ!!!朝ごはんの支度をしないと!!!
また貴方に心配をかけてしまう。
今日は特製、だし巻き卵サンドだよ!!!
気に入ってくれたらボク喜んじゃう!!!
……明日はいつになったら来るのかしら。
今日も朝を元気に迎えて、また「また明日」って言えるように。
ボクは───
いつも通りの朝が来て、貴方はすぐに私の指の欠けに気付く。丁寧に私の体を治した後、貴方は私の名前を呼んで、最後の命令を下した。私は逆らう間もなく自動的にそれに従った。
ボクの仕事をしっかりこなさないと、ね!!!
貴方と共にいられる「明日」は、永遠に来なかった。
「透明」
今日もいつも通りの朝を迎える。元気な朝日の光を浴びて、ぼーっとした頭のまま居間に向かう。
「やっと起きた!!!おはよう!!!今日の朝ごはんは他人丼だよ!!!豚肉を卵でとじたどんぶりさ!!!」
……朝から随分とがっつりだな。せっかく作ってもらっておいて悪いがそんなに食べられる自信がない。
「エ〜!!!キミって意外と繊細なんだね!!!生き物でありながらあらゆることに無頓着というか、執着がまるでないというか……。」
「だから実験的に朝ごはんにカロリーが高めのものをお出ししてみたのだが、そこはちゃんとニンゲンらしいんだね!!!新たな知見を得た!!!」
「それじゃあボクのハムサンドと交換しよう!!!まだ手をつけていないから安心したまえ!!!」
……あんたは朝からしっかり食べられるんだな。流石は自称マッドサイエンティストだ。
「それってマッドサイエンティスト関係あるのかい……???まあいっか!!!いただきまーす!!!」
小さいくせによく食べるな。将来どうなるか楽しみだ。
「あ!!!さっきネットサーフィンをしていて見かけたのだが、今はチューリップが見頃を迎えているそうだよ!!!早速見に行こうか!!!」
「……まーた外出を面倒くさがっているね!!!怠惰は諸悪の根源なんだぞ!!!いいかい?!!たとえちょっとでも面倒だと思っても時々外に出て空気を吸う!!!」
「とにかく!!!ちゃんと生き物らしく動きたまえ!!!わかったね?!!」
……分かったよ。
にしても、あんたは随分と花が好きだよな。
何か理由があるのか?
「花……というか植物のような生き物は他の星や宇宙にもたくさん存在するが、種類によってはかなりおっかないのだよ……。」
「それに比べてこの星の花は小さくて、大人しくて、そして可憐だ!!!まるでこのボクのようにね!!!」
……はいはい。
「それに、いろんな要素が掛け合わさることで一つとして同じ花が見られない!!!だからこそその時のその場所に見に行っておきたいのさ!!!」
「さあ!!!食べ終わったらすぐに行くよ!!!」
……一つとして同じ花はない、か。
朝食を食べ終えた自分たちは、遠い町のチューリップ畑へと出掛けた。
目的地までバスや電車を乗り継いで向かう。
自分たちと同じようにチューリップを見に来た観光客でバスも電車も溢れ返っていた。
電車に揺られつつふと周りを見回すと、あいつがいない。
……もしかしてはぐれたか?
「ここだよー!」
そこには隣の乗客にめり込んだあいつがいた。
変な声が出そうになるのを慌てて抑える。
え、なにが、どうなってるんだ??ゲームのバグか???
「あぁ、コレね!この空間に矛盾を生じさせないよう、ボク自身の質量を極限まで落とした結果さ!!キミもやってみるかい?!!」
遠慮する。……とは思ったが実は少しやってみたい。
「それじゃ、家に帰ってから試してみようか!!!」
……そんなこんなで2時間。ようやくチューリップ畑に着いた。
「予想通りだが、ニンゲンで溢れているね!!!まあそれだけのニンゲンがこのチューリップたちに美しさを見出しているってことだ!!!素晴らしいね!!!」
赤、白、ピンク、黄色、紫。
チューリップらしい形のものからドレスのように華やかなものまで、色とりどりのチューリップが並んでいるのは壮観だ。
「うおー!!!すっっごいね!!!」
そう言いながらずけずけとチューリップ畑に入っていく。
おい、流石にそれはやめろ!
「安心したまえ!!!質量はちゃーんと抑えてあるから問題ない!!!」
たしかにそこを通っているはずなのに一本も踏まれていない。
「ほらほら!!!チューリップの中にいる可愛いボクを撮りたまえ!!!この状態で写真を撮られたことがないからどう映るか気になるんだよ!!!」
自分で自分のことを可愛いなんて言うのか……。全く。
「そう思いつつもちゃんと撮ってくれているじゃないか!!!キミも素直じゃないね〜!!!」
撮った写真を見返す。そこには辺り一面のチューリップと嬉しそうにはしゃぐあんたが写っていた。
「よく撮れているじゃないか!!!流石はボクの助手だ!!!……にしても、ちょっと疲れただろう???そろそろこの辺りでお茶でもどうかな???」
そんな場所があるのか?
「向こうにカフェがあるそうだよ!!!メニューが少々お高めだからここほど混雑していないはずだ!!!」
「あ!!!食事代はボクが持つから安心したまえ!!!」
あっという間にカフェへと向かっていく。嬉しそうで何よりだ。
少し歩いたところでカフェに着いた。あいつの言う通り空いている。それはそれでいいとして、殆どのメニューが売り切れのようだ。……おい、どうする?
「参ったな……本当はこのチョコレートパフェとホットケーキが食べたかったのだが……よし!!!決めた!!!ソフトクリームを食べよう!!!」
自分たちはチューリップを模ったクッキー付きのソフトクリームを食べた。普通のソフトクリームだ。だが日が照っている中で食べると美味い。
「お!!!こいつはいい記念になりそうだぞ!!!」
カフェの看板を指差しながらあんたは言う。
そこには「当店のレシートを退場時に見せるとチューリップの球根が貰える」と書かれていた。なるほど。
そのあとしばらくチューリップを見て回った。
そのうち閉園時間が近づいてきたので自分たちも帰ることにした。
退場する時には忘れずにカフェのレシートを見せて、チューリップの球根をもらった。係員曰く、「何色の花が咲くかはお楽しみ」とのことだそうだ。
またバスと電車に揺られる。……だんだん眠くなってきた。
……。「……おーい!!!降りるよ!!!」
危ない、乗り過ごすところだった。
その後何度か寝落ちしそうになりながらも、なんとか家に着いた。
「ただいまー!!!おかえりー!!!」
……疲れ知らずで羨ましい。
……日常に戻って、ふと思った。
このマッドサイエンティストを名乗る「チョーカガクテキソンザイ」は、あんたは、本当に存在するんだよな……?
乗客も、チューリップも、みんなまるであんたがそこにいないかのように振る舞っていた。それを改めて自覚すると、急に怖くなってしまって、落ち着いていられなくなる。
自分は思わずあんたを見つめる。
「ん???どうしたんだい???」
見つめたはいいがどうしていいか分からず、思わずあんたのほっぺたに触れる。
「……???」
「ねえ、」
「ちょっと!痛いのだが!!」
触れた。見た目通り、すごく柔らかい。
突然自分の頬を強く触られる。……痛って!
「……まだ満足していないのかい?」
あまりの触り心地の良さに、その後もしばらく触ってしまった。もちもち、ふわふわ、すべすべ。
「ねえ、」
あっ、悪い。
「いや、そうじゃなくて、」
「この宇宙一キュートでスウィートなマッドサイエンティストであるボクを疑うというのかい?!!というか疑うにしてもさ!!!遅すぎやしないかい?!!」
あんたの存在が、というよりも、こんなにやかましくて存在感があるのに、まるであんたが透明人間みたいなのが信じられないんだ。
「それに関してボクは何も言うまい。」
「ただひとつ言えるとしたら、」
「キミはキミの信じたいものを信じればいい。それだけさ。」
「それはそうと!!!キミの体から質量をなくすの、試すかい???ちょっとやってみたいって言っていたろう???奇遇なことにボクも試してみたいからさ!!!ほら、ね?!!」
……疲れたから明日にするよ……。
「えー!!!残念!!!お楽しみは明日にお預けだね!!!」
その言葉を聞き終わる前に、あまりの疲れで自分は眠ってしまった……。
「理想のあなた」
貴方の夢を見ていた。
ランプの光で照らされる壥色の髪と椦色の瞳。
資料を見る鋭い眼差しも、私に向ける柔らかな笑顔も。
全て、全てがあの頃のままだった。
私の理想の貴方のままだった。
美しい貴方が作って見守る、美しい宇宙の数々。
私はそれらを貴方と共に管理していた。
私はとても満たされていた。幸せだった。
貴方のためならなんだって出来た。
でも、時々悲しそうな顔をしていたのはどうして?
最後まで理由を話してくれなかったから、私はなにもできなかった。貴方をずっと笑顔にしていたい、ただそれだけだったのに。
どうして私に「何もしなくたっていい」と言ったの?
私よりもずっと便利なものができたから?
どうして「無理をしてはいけない」と言ったの?
私は宇宙の為に命を尽くすのが、愛を与えるのが使命なのに。
どうして、どうして私に「安らかに眠れ」と言ったの?
最後まで貴方の理想の私になれなかったから?
私を置いて行ったのは、どうして……?
夢の中の貴方は、ただ微笑むだけで何も答えてくれなかった。
なぜなら、私の理想の貴方だったから。
今を生きている貴方ではなかったから。
置いて行かれた私は、忘れ去られた子供部屋の玩具のように、貴方の帰りを、永遠の眠りを───
待つことしかできなかった。
「突然の別れ」
幼い頃は、お伽話や絵本が好きだった。
いつの日かあんな世界で暮らしたいって、そう思っていた。
いつの日だっただろうか。まだ自分が小さい頃の話だ。
絵本を読んでいたある日、誰にそうされたかは忘れてしまったが、誰かに絵本を取り上げられ、こう言われた。
「こんな場所があるって信じてんの?笑える!いつまでも夢見てずにさぁ、漢字の一つでも覚えたほうがいいんじゃない?そっちの方がよっぽど役にたつでしょ?」
その言葉は幼い自分の胸に深く突き刺さった。
もう夢なんて見ても仕方がないの?
私は、どこに行けばいいの?
学校にも家にも安心できる場所がなかった。
だから自分だけのおとぎの国に逃げて、心を守っていた。
だけど、それももうできないような気がして。
ただただ、何にもない、狭くて仄暗い心の底に閉じこもった。
これが、自分のおとぎの世界との突然の別れだ。
華やかな生き方も、ハッピーエンドも、所詮は作り話。
孤独であろうが、苦痛まみれであろうが、バッドエンドであろうが、どうだっていい。
錆びついた無抵抗の自分を、ただただ見つめているだけで充分だ。それでいい、どうだっていい。
もうどうにでもなればいい。
「そんなこと思わずにさ、」
「もうちょっと、柔らかくというか、自分に優しく、気楽に生きたまえよ。」
「キミは少々肩を張り過ぎているんじゃないかい?そんなに他のニンゲンの言うことに従わなくたっていい、苦しまなくたっていいんだよ。」
「誰かの言うことに従ったからといって、自分の気持ちに蓋をしたからといって幸せになれるわけじゃない。キミも自分の見たい夢を見たらいいじゃないか。」
「ボクが存在する理由が分かるかい?ボクはね、全ての宇宙の、全ての存在が、幸せにその生を全うするのを見守るためにいるんだよ。」
……。でも、見送ってばかりだと辛いんじゃないのか?
「まあね。今までずっと、生まれては見送っての繰り返しだからいろんな何かに置いて行かれているのかもしれない……見送る時になにも感じないといったら嘘になるね。」
「それでも、それでもボクは満たされているんだ。だって、彼らが最期に見せた安らかな感情がちゃんと分かるからね。」
「ニンゲンのことを十分理解しているとは言えないかもしれないが、ボクはキミにもちゃんと幸せに暮らしてほしいのさ!」
「とにかく、一日一日の小さな幸せを大切に生きてくれたまえよ!」
「それじゃ!!!お昼ご飯にしようか!!!今日はちょっと高級なカップ麺だよ!!!」
……自分の幸せを願ってくれている誰かがいるっていうのは、こんなにも嬉しいことなんだな。
せめて、あんたとの突然の別れを迎えないように、いや、迎えても悔いのないように大事に生きないと。
そう思って、自分は背筋を伸ばした。