「理想のあなた」
貴方の夢を見ていた。
ランプの光で照らされる壥色の髪と椦色の瞳。
資料を見る鋭い眼差しも、私に向ける柔らかな笑顔も。
全て、全てがあの頃のままだった。
私の理想の貴方のままだった。
美しい貴方が作って見守る、美しい宇宙の数々。
私はそれらを貴方と共に管理していた。
私はとても満たされていた。幸せだった。
貴方のためならなんだって出来た。
でも、時々悲しそうな顔をしていたのはどうして?
最後まで理由を話してくれなかったから、私はなにもできなかった。貴方をずっと笑顔にしていたい、ただそれだけだったのに。
どうして私に「何もしなくたっていい」と言ったの?
私よりもずっと便利なものができたから?
どうして「無理をしてはいけない」と言ったの?
私は宇宙の為に命を尽くすのが、愛を与えるのが使命なのに。
どうして、どうして私に「安らかに眠れ」と言ったの?
最後まで貴方の理想の私になれなかったから?
私を置いて行ったのは、どうして……?
夢の中の貴方は、ただ微笑むだけで何も答えてくれなかった。
なぜなら、私の理想の貴方だったから。
今を生きている貴方ではなかったから。
置いて行かれた私は、忘れ去られた子供部屋の玩具のように、貴方の帰りを、永遠の眠りを───
待つことしかできなかった。
5/21/2024, 9:47:07 AM