Frieden

Open App
3/16/2024, 12:24:09 PM

「星が溢れる」

あれは私がこの世界を作った時のこと。
「あなた」がこの世界に生まれる前、私は「あなた」の心を満たせるように、いろんなものを作りました。

はじめは、大地と海。その次に草花と生き物。
小さな街も、メトロポリスも、「あなた」が楽しんでくれそうなものは、なんでも作りました。

でも、何か足りない。これでは「あなた」が満たされない。
ここで私は気づいたのです。
空を見上げた時、何もないことに。

そして私は決めました。太陽と月を作ることを。
私とあなたが出会ったあの時のようなあの夜がまた見たくて。
「あなた」の笑顔が見たくて。

満ちる。星が満ちる。

それから、もっとたくさんの星で世界を飾りました。
これできっと、「あなた」もたくさんの星々から誕生を祝福されるはず。

溢れる。星が溢れる。

「あなた」がこの世界に生まれてからも、私は毎晩、星を作り続けました。彗星も、銀河でさえも作りました。
「あなた」が望めば、なんだって。

世界を星で溢れさせながら、私は「あなた」で溢れる。

このまま、ずっと永遠に。

3/15/2024, 4:01:17 AM

「安らかな瞳」

薄明を 街の目覚めを 見届けて
もう眠ろうか おやすみなさい

菜の花とうららかな風を見つめて
安らかな瞳(め)で何を思うか

故郷よ 移り変わりし 故郷よ
あなたは私を まだ見ているか

色褪せた いつかの思い出 切り取って
壁に飾れば 心が満ちる

眠る時を 私と街が 眠る時を
安らかな瞳は 見つめています

3/14/2024, 9:59:37 AM

「ずっと隣で」

なんでもない、普通の日常を突き破ってきた超科学的存在。「ボクと一緒に宇宙を救ってくれ!!!」なんて荒唐無稽なことを初っ端からぬかされてからの騒々しい人生。

自分が最期の時を迎えるまで、そいつはずっと隣でやかましくしていた。

「なんでキミはベッドからなかなか出てこないんだい?」
「キミはもっと自分を大切にしたほうがいい」
「おーい!!!ゲームしようぜ!!!今回もボクが完全勝利するけどね!!!」

孤独で寂しい人生を送っていた自分に初めてできた仲間。
そいつにとって自分なんか「銀河の中の知的存在のうちのひとつ」かつ「研究用サンプル」くらいでしかないだろうに、随分と親切にしてくれた。

最初は正直信用もできないし、いきなり居候されて困惑するしかなかったが、一緒にいて互いのことが分かっていくと、「宇宙の危機」を共に乗り越えようと本気で思えるようになった。

「胡散臭い自称マッドサイエンティストの子供」から「親友」になるまで時間はかかってしまったが、そいつは諦めずにずっと自分の隣にいてくれた。

隣にいてくれるひとなんてこれから先も居ないんだろう、そう思っていた。でも、あんたは「暇つぶしだよ!!!」とか言いながらこんな人生を変えてくれた。

ありがとう。つまんない暮らしを賑やかにしてくれて。
ありがとう。毎朝作ってくれた温泉たまごトースト、美味しかったよ。
ありがとう。宇宙のこと色々教えてくれて。

ありがとう。最期まで隣にいてくれて。

でも、自分はあんたのために、何かできたんだろうか?
もう終わるっていうのに、今更不安になってきた。

身体が闇に沈んでいく。
だんだん体が軽くなっていく。
音も遠くなっていく。

……。

……あれ、まだ意識がある。というか自由に動き回れる。
隣にはあんたがいる。いつもとはうって変わって泣きそうな顔をして、「かつて『自分』だったもの」を見つめている。

試しにそばにあった花瓶を触ってみる。あ、透けて触れられない。電気のスイッチも駄目か。
どうせ無理だろうと思って、あんたの頭にチョップを仕掛けてみる。

ごちーん!!!!

「痛った!!!!はぁ?!?!!!」

「痛って、でも触れた。……おーおー、マッドサイエンティストの端くれのクセして辛気臭い顔してんな〜。」
余裕なふりをしているが自分も心底驚いている。
驚きを隠しつつ、会話を続けた。

「『チョーカガクテキソンザイ』なんだったら、冥界のことも知ってるはずだよな〜?」
「まぁもちろんだとも!!!だがキミはそういうの興味なさそうだったから、少々驚いたのさ!!!」
「もしかして、また会えたらなぁ〜とか思ってた?www」
「まさか!!!ボクが!!!キミに?!!」

「まぁ元気そうで何よりです。それよりも、前言ってた『青方偏移がどうのこうの〜』はどうなったんだ?」
「?」
「え〜……まぁ、アレだ。暇だから手伝おうと思って」
「!!!……我が忠実なる僕(しもべ)よ……再び契約を結ばん……!!!」
「ま〜た拇印かよ……」

まさか自分の人生に続きがあるとは思いもしなかった。
今度は自分があんたのために何かできたらいいな。
そう思って、自分は病院の部屋を後にした。

3/12/2024, 5:44:19 PM

「もっと知りたい」

この星にやってきてから数日!!!この星に関するデータはボクの記憶領域にだいたい格納済みだ!!!しかし、データを手に入れただけでは満足できない!!!

だからボクはもっと知りたい!!!
この星の食べ物。この星の文化。この星の概念。
そして、キミの好きなもの。キミの心を温めるもの。

キミはどうやら今までのニンゲン関係に恵まれず、あまり充実した人生を送ってこなかったみたいだ。
だから今でも、ひとりぼっちだ。

ボクの知的好奇心を満た───いや、ボクが管轄する宇宙のひとつを吸収する謎の存在の正体を突き止める為に、そしてキミの人生を少しくらいは豊かにできるように、ボクはもっと知りたい!!!

「というわけで、教えてもらおうか!!!」

なんなんだ急に!教えろと言われたって何を教えればいいのか分からない!

「研究の役に立ちそうなことならなんだっていいんだ!!!なんなら昨日の晩に食べたもののことでもいい!!!」

本当にそんなものが役に立つのか?
だいたい、こういう研究は信頼関係があってこそ成り立つものだろう?

「確かに、キミの言い分も一理ある!!!だが、今はとにかく!!!ボクが仕入れた星ひとつ分のデータが正しいかどうかを確かめたいのだよ!!!」

星ひとつ分のデータとか言われても、自分はそこまで物知りではないうえ、自分のせいでデータの中の「正しさ」が歪んでしまう可能性もある。一面だけで物事を判断するのはあまりにも危険だ。

「そう言われてもだな……ボクを認識できる知的存在がキミしかいないんだから仕方ないだろう!!!それに、ボクはマッドサイエンティスト───つまり、研究者の端くれということさ!!!そのくらい百も承知!!!まあいい、とにかくなんでもいいから話してくれたまえ!!!」

そうだな。
「うんうん!」
昨日食べたものは、
「うん?」
もつ鍋。
「もつ鍋」
そう、もつ鍋。

「なるほどなるほど……」

「……って、それでボクが納得するわけなかろう?!?!!いいかい、今夜はボクが満足するまで話してもらおうか……!」

はぁ……まだ寒い季節なのに夜更かしか……。
世界を救うために、頑張るか。

3/11/2024, 2:47:06 PM

昨日と今日の分をまとめて投稿することになってしまった!!!(2回目)前回入力した内容が消えてしまった!!!なぜだい?!!

+゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+ 

「愛と平和」3/10

「また会えるその時まで、待ってて」

あなたがそう言ったから、私はずっと待っていました。
鮮やかで温かな春 眩しくて懐かしい夏
穏やかに過ぎ去る秋 全てを穢れなき白で連れ去る冬

ずっと、ずっと待っていました。
でも、あなたはいつまで経っても来なかった。

だから私は決めたの。

全てを飲み込んでしまおうと。

そうすればきっと、
私の中で眠るあなたを愛することができるから。
すぐにあなたを見つけることができるから。

でも、私の中にあなたはいなかった。

だから私は決めたの。

新しい世界を作ってしまおうと。
「あなた」と安心して過ごせる、愛と平和で溢れた新しい世界を。

まずは、あなたが退屈しないように、小さな街を作りました。
あなたが欲張りだったとしても、これでなんでも手に入るはず。

次は、あなたがどこかに出かけたくなってもいいように、たくさんの街を作りました。これできっと楽しく過ごせるはず。

それから、空をたくさんの星々で飾りました。これで昼も夜も空を見上げるだけで、心が満たされるはず。

最後に、「あなた」を作ることにしました。
あなたを定義するのはとても大変でした。でもあなたはとても素敵なひとだから、宇宙で見つけた美しいものでできているはず。そこに私を少し混ぜ込んでしまえば、きっとこれで事足りるはず。

これで、私とあなただけの、愛と平和に溢れた美しい世界が完成しました。

もし足りないものがあれば、また定義しなおせばいい。
あなたと一緒に作り足せばいい。そうでしょう?

あなたがいれば、私はそれだけで幸せなのだから。

+゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+.゚*。:゚+ 

「平穏な日常」3/11

静かな群青から朗らかな薄紫に変わる夜明け。
キミがゆっくりと起きてくる柔らかな朝。
一緒に食べる朝ごはんのバターを塗ったトーストと目玉焼き。

元気な太陽が街を照らす昼。
思い出話やケンカをしながら食べる昼ご飯。
散歩したときに聞こえてきた名も知らない歌。

街が眠り始める夕暮れ。
夕焼けに透けるキミの髪。
どこかから漂ってくる夕食のかおり。

キミが眠る夜。
夕飯に食べたカレーがなかなか落ちない洗い物。
お風呂に入るときに選ぶ入浴剤。

ボクが眠らない深夜。
キミの眠っている間に書くレポート。
いつの間にか回っている時計の針。

そういう一日一日を繰り返して、みんなは成長して、老いていく。
暑くなろうと、寒くなろうと、その理は変わらない。

ボクはこんな平穏な日常を送るのがとても好きだ。
だからこそずっと続いてほしいと思っている。

でも、いつか必ず、終焉が来ることはわかっている。
キミがボクを置いて行ってしまう。
この街が破壊されてしまう。

そんな日が、いつか来るんだ。

壊れたものは、もう二度と元通りにならない。
だから、だからこそ、毎日を大切にしていこう。
そして、キミに毎日を大切に生きてもらおう。

そんな時が来たとしても、せめて後悔のないようにしたい。
キミが幸せに生きていけるように。
安心してボクを置いて行けるように。

Next