Frieden

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3/7/2024, 9:30:07 AM

「絆」

「おいキミ!!!教えてくれたまえ!!!」
自称マッドサイエンティストの子ども(?)が自分に聞く。
宇宙を救うために知らなくちゃいけないことなのか?

昨日は「ムー大陸は本当にあったのか」「布団から出られなくなる理由」「明日の昼ご飯は何か」「猫ってかわいいね」「高いヘッドンホホが欲しい」などなど、少なくとも「宇宙を救うため」に必要だとは到底思えないことばかり聞かれたから、ついそう思ってしまった。

「ああ!!!必要だとも!!!ボクを疑うっていうのかい???」

「……まあいい。ところでキミは『絆』って何かわかるかい?色んな作り話で取り沙汰されるコイツの辞書的な意味はちゃーんと確認したよ!!だが、だいたいの話ではあんまり現実味がなさそう……というかボクを認識できるニンゲンが今んとこぼっちのキミだけだから、『絆』が存在するかどうか確証が持てないのだよ。」

「というわけでボクは思いついたのさ!!!キミとボクとの間で『キズナ』を育もうじゃないか!!!いいアイデアだろう?!!」

絆。人と人とを繋ぐもの。
ミントグリーンの髪のコイツよりもこの星で過ごした時間は多いはずなのに、自分はちゃんと「絆」を知らない。

なんでだろう?考えても無駄か。

「……心中お察しします!!!まあキミがこれから誰かと深く関わる時のための練習だと思って、ボクと仲良くしてくれたまえ!!!」

「そうだね〜……まず、ボクはキミの事をよく知らないといけないし、逆も然りだ。今夜は色々語り合おうじゃないか!!!」

今日の夜は長くなりそうだ……。こんな調子で宇宙が救えるのか?

まあとにかく、自分たちができることをやるだけだ。

今まで出会った誰かと、これから出会う誰かのために。

3/6/2024, 9:55:38 AM

「たまには」

去年の冬の始まりの頃、紅葉が綺麗かもしれないと思って近くのお寺まで散歩しに行った。基本的にはインドア派だからあまりこういうことはしないけれど、たまにはそういうのもいいかと思って。

ここに前来たのは桜の季節だっただろうか。今ではすっかり花も散り、葉でさえも散りかけている。もう少し早く来たらよかったなぁと思いながらとりあえず写真を撮った。

相変わらず観光客が多いと思っていると、後ろから黄色い歓声のようなものが聞こえてきた。そんなに感激するようなことがあったのだろうか?いや、もしかして私の頭に変なものでもくっついている、とか……?

色々考えを巡らせつつ周辺を彷徨いていると、着物を着た観光客3人組が声をかけてきた。なにごとかと思い聞けば、学校の課題か何かで観光地についてのアンケートをとっているらしい。

地元の人間だからあんまりアンケートには役に立たないかもしれないなぁと思いながら質問に答えた後、3人組の1人が「そのキャラクター好きなんですか?!!」と聞いてきた。

あ、そういえば少し前に届いたマイナーなゲームのキャラクターのアクリルキーホルダーを付けていたんだった。私は控えめに返事をした。正確には、まさか自分が声を掛けられるとは思ってもいなかったから、いい反応ができなかった。

「めっちゃいいですよね!!」
「私は〇〇推しなんですよ〜!!」
嬉しそうに、口々に推しを語る人たち。

私はというと、
「はぃ……いいですよねぇ〜(わかる〜〜!!!)」
「ほぉ……すごい(すご!!!絵描けるの羨ましいです!!!)」
心と言動が一致しない会話を繰り広げていた。

へなへなした返答をした後、せっかく奇跡的に出会えたから一緒に記念撮影しましょう!!!とのことで、着物で綺麗に着飾った彼女達とあまりなにも考えずに着た服の私はお寺を背景に写真を撮った。

観光楽しんでくださいね〜などと当たり障りのないことを言って別れた後、自分の服をよく見た。そして気がついた。
生成りのニットに白の綿パン。全身ほとんど白。しかも綿パンはさっき食べたほうじ茶アイスにかかっていた粉でちょっと汚れていた。

ああああなんでこんな格好の時に写真をおお??!もっとマシな返答できたろう?!!!!あああああああ!!!!

ともかく、好きなキャラクターの話ができる人がいなくて寂しい思いをしていたのは確かなので、混乱しつつも嬉しかった。

もしまた彼女たちに会えるなら、是非こう言いたい。
「あの時はありがとうございました!今度はもうちょっと会話のシミュレーションとお洒落をするので!もっとお話ししましょう!!」

3/4/2024, 2:58:24 PM

「大好きな君に」

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「ぼく」は「きみ」にあいたい
でも「きみ」はいなくなってしまった

「きみ」はこの世界から消えてしまった
「ぼく」の記憶とともに
なぜ?どうして?

記憶を消されてしまったから ぼくにはなにもわからない
わかったとしても ぼくは「無力化」されてしまったから
なにもできない 存在していることすら許されない

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「きみ」は「ぼく」に たくさんのものをくれた
記憶も力も全て消えてしまったけれど
最後まで「ぼく」の中にはきみからもらった「愛」は残っている

大好きなきみに会えるまで ぼくは永遠に走り続ける
また会えるその日まで ぼくのことを忘れないでね

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3/3/2024, 4:49:13 PM

「ひなまつり」

「やあキミよ。ちょっと気になることがあるんだが!!!聞いてもいいかい?!!」

なにが気になるんだ?

「今日は『ひなまつり』なんだろ??ひなまつりってなんだい?」

3月3日はひなまつり。桃の節句の日で、女の子の健康な成長を祈願するためにひな人形を出したりちらし寿司などを食べたりする。

「へーー!!!ためになるなあ!!!教えてくれてありがとう!!!」

「んで、ついでに聞いてもいいかい??キミがスイーツを買うなんて、珍しいね!!!急にどうしたんだい??」

おひなケーキか。安かったから買っただけだ。

「ふーん。たしかに季節感は大事だもんね!!!おお!!!ボクの分もあるのか!!!んじゃ、いただきます!!!うまい!!!」

たまには年中行事を楽しむのもいいか。
そう思って自分もケーキに手をつけた。

3/2/2024, 4:48:27 PM

「たった1つの希望」

ぼくは彼岸に生まれ変わった。
狭いのか広いのかわからないこの世界で、ある時きみと出会った。

それから、きみはどういうわけか、この宇宙の全てを取り込んでいった。
「Xjlro」というメッセージをぼくに送りながら、宇宙の滅亡を目論んでいるのだろうか。
時間をかけて修理した観測機器のモニターを見つめながら、ぼくは恐怖に打ちひしがれた。

観測できる事象がないことを現す「0」の数字に混じって送られてくる「Xjlro」という意味のわからない文字列。
ぼくは彼岸の者だから、宇宙に干渉することはできない。

ぼくは、どうしたら。
なんにもできないこのぼくは、一体なにをすればいいんだ?

絶望しながらモニターをよく見ると、あることに気がついた。
このコマンドを使えば、どこかにメッセージが送れる!

そうとわかったから、ぼくはひとつだけ登録されていた「IFO-712」という連絡先に一言「Help」とだけメッセージを送った。もし誰かがこれに気づいてくれたら、ぼくは助かるかもしれない。

この世界に来てから待つのは得意になった。
しかし、本当に送れているのだろうか、気づかれないまま放置されないだろうかと不安で仕方がないままだ。

「0」「0」「0」「Xjlro」「0」「0」……

「Replying: Hi!!! Can u read this message??」

思っていたよりもずっと早く返事が来た。

「Yes! Thank you for finding my message!」
「Replying: Are u really in that space?!」
「Yes. I’m here.」
「Replying; OKAY ;-) We’ll pick u up!!!」

英語が少しだけわかってよかった。どうやら助けてもらえるようだ。しかし、実際助けが来るまでどのくらいかかるのかがわからない。

それでも、ぼくにとっての「希望」を見つけることができた。それだけでも、十分すぎるくらいだ。
よかった。本当に、よかった。

たった1つの希望を胸に抱き、ぼくは久しぶりの眠りについた。

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