「たった1つの希望」
ぼくは彼岸に生まれ変わった。
狭いのか広いのかわからないこの世界で、ある時きみと出会った。
それから、きみはどういうわけか、この宇宙の全てを取り込んでいった。
「Xjlro」というメッセージをぼくに送りながら、宇宙の滅亡を目論んでいるのだろうか。
時間をかけて修理した観測機器のモニターを見つめながら、ぼくは恐怖に打ちひしがれた。
観測できる事象がないことを現す「0」の数字に混じって送られてくる「Xjlro」という意味のわからない文字列。
ぼくは彼岸の者だから、宇宙に干渉することはできない。
ぼくは、どうしたら。
なんにもできないこのぼくは、一体なにをすればいいんだ?
絶望しながらモニターをよく見ると、あることに気がついた。
このコマンドを使えば、どこかにメッセージが送れる!
そうとわかったから、ぼくはひとつだけ登録されていた「IFO-712」という連絡先に一言「Help」とだけメッセージを送った。もし誰かがこれに気づいてくれたら、ぼくは助かるかもしれない。
この世界に来てから待つのは得意になった。
しかし、本当に送れているのだろうか、気づかれないまま放置されないだろうかと不安で仕方がないままだ。
「0」「0」「0」「Xjlro」「0」「0」……
「Replying: Hi!!! Can u read this message??」
思っていたよりもずっと早く返事が来た。
「Yes! Thank you for finding my message!」
「Replying: Are u really in that space?!」
「Yes. I’m here.」
「Replying; OKAY ;-) We’ll pick u up!!!」
英語が少しだけわかってよかった。どうやら助けてもらえるようだ。しかし、実際助けが来るまでどのくらいかかるのかがわからない。
それでも、ぼくにとっての「希望」を見つけることができた。それだけでも、十分すぎるくらいだ。
よかった。本当に、よかった。
たった1つの希望を胸に抱き、ぼくは久しぶりの眠りについた。
3/2/2024, 4:48:27 PM