Frieden

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「たまには」

去年の冬の始まりの頃、紅葉が綺麗かもしれないと思って近くのお寺まで散歩しに行った。基本的にはインドア派だからあまりこういうことはしないけれど、たまにはそういうのもいいかと思って。

ここに前来たのは桜の季節だっただろうか。今ではすっかり花も散り、葉でさえも散りかけている。もう少し早く来たらよかったなぁと思いながらとりあえず写真を撮った。

相変わらず観光客が多いと思っていると、後ろから黄色い歓声のようなものが聞こえてきた。そんなに感激するようなことがあったのだろうか?いや、もしかして私の頭に変なものでもくっついている、とか……?

色々考えを巡らせつつ周辺を彷徨いていると、着物を着た観光客3人組が声をかけてきた。なにごとかと思い聞けば、学校の課題か何かで観光地についてのアンケートをとっているらしい。

地元の人間だからあんまりアンケートには役に立たないかもしれないなぁと思いながら質問に答えた後、3人組の1人が「そのキャラクター好きなんですか?!!」と聞いてきた。

あ、そういえば少し前に届いたマイナーなゲームのキャラクターのアクリルキーホルダーを付けていたんだった。私は控えめに返事をした。正確には、まさか自分が声を掛けられるとは思ってもいなかったから、いい反応ができなかった。

「めっちゃいいですよね!!」
「私は〇〇推しなんですよ〜!!」
嬉しそうに、口々に推しを語る人たち。

私はというと、
「はぃ……いいですよねぇ〜(わかる〜〜!!!)」
「ほぉ……すごい(すご!!!絵描けるの羨ましいです!!!)」
心と言動が一致しない会話を繰り広げていた。

へなへなした返答をした後、せっかく奇跡的に出会えたから一緒に記念撮影しましょう!!!とのことで、着物で綺麗に着飾った彼女達とあまりなにも考えずに着た服の私はお寺を背景に写真を撮った。

観光楽しんでくださいね〜などと当たり障りのないことを言って別れた後、自分の服をよく見た。そして気がついた。
生成りのニットに白の綿パン。全身ほとんど白。しかも綿パンはさっき食べたほうじ茶アイスにかかっていた粉でちょっと汚れていた。

ああああなんでこんな格好の時に写真をおお??!もっとマシな返答できたろう?!!!!あああああああ!!!!

ともかく、好きなキャラクターの話ができる人がいなくて寂しい思いをしていたのは確かなので、混乱しつつも嬉しかった。

もしまた彼女たちに会えるなら、是非こう言いたい。
「あの時はありがとうございました!今度はもうちょっと会話のシミュレーションとお洒落をするので!もっとお話ししましょう!!」

3/6/2024, 9:55:38 AM