「欲望」
宇宙の危機を救うべく立ち上がったひとりと巻き込まれたひとり!!!タッグを組んでから早数日!!!進捗状況は一切変わりなし!!!
「キミもちったぁ協力したまえよ!!!ボクはデータを読み込んだだけでニンゲンのロジックや感情を十分に理解したと言いたくないのだよ!!!だいたいの世の中、ダブルチェックは必要だろう?!!」
わめくついでに3割引のコロッケを勝手に食われた。
こっちだって色々やることがあるんだ!
おまえほど暇じゃない!
「マッドサイエンティストのボクをおまえ呼ばわりするとは!!!キミのSNSのアカウントを特定するぞ!!!」
持ってないからしても無駄だぞ。
「えー……っと、じゃあ本籍地をフリー素材にしてやろうか!!!」
別にいいよ。自分の本籍地、武道館の住所を登録してるから。
「あ!!!推しのアイドルが武道館ライブを開いた記念かい?!!キミにも意外な面があるもんだなあ!!!」
別にそういうのではない。
自分、特に趣味も特技も推しもないし。
「えぇ……理由もなく本籍地を武道館に……??」
「というかキミ!!!ニンゲンのクセして欲がなさすぎる!!!さすがのボクも心配だよ!!!」
「そんな生活続けてたら、学校や職場があるうちはいいが老後に引きこもってサルコペニアになり、果ては誰にも気づかれないまま命を終えてしまうぞ!!!もっと欲望を持ちたまえ!!!」
そんなことを言われても困る。第一、自分のやるべきことだけで手一杯なんだ。それから、欲望を持ったところで自分を満たせるかどうかは別だ。慎ましく暮らすくらいが自分にはお似合いだろう。
「まだまだ若いのに、そんな修行僧みたいなことを!!!欲望で身を滅ぼすのは確かに愚かなことだが!!!少しぐらい夢を見たまえよ!!!」
「とにかく!!!宇宙の危機の原因特定のためにも!!!もっと生き物らしく、キミと一緒にやりたいことを増やしていこうじゃないか!!!」
欲望を持てと言われても、自分にはよくわからない。できれば何もせず、ぼーっとしていたい。
「よーーしわかった!!!これからはボクがキミの「やるべきこと」を最大限サポートしよう!!!だから、データ取得のためにもキミはもちっと自分が生き物である自覚を持ちたまえ!!!」
はぁ……。わかったよ。内面がまるでない人間で———「いいかい?!!復唱したまえ!!!」「キミは!!!」「きみは」「素晴らしいニンゲンだ!!!」「すばらしいにんげんだ」「だから!!!」「だから」「もっと欲深く、好き勝手に生きていく!!!」「もっとよくぶかく、すきかってにいきていく」
「これでよし!!!それじゃあ今から、たらふくアイスクリームを食べて!!!新しい本を読んで!!!欲しいものがないかAmaz〇nを見まくるんだ!!!そして得た情報をボクに報告したまえ!!!」
本当にコレが役に立つのか?色々と疑問は残るが、なんとなく自分は少し解放されたような気分になった。
キミもボクくらい知識欲があればなお良し、そう言いながら君はまた勝手にアイスクリームを満足そうに食べ出した。
果たして、彼らは宇宙を救うことが出来るのか……?!!
何かを思いついたら多分続く……。
「列車に乗って」
今日は休日。そして晴れ。ついでにやることなし。
寝起きの頭でなにしよ〜かとぼんやり考えてたら、
早起きのきみが元気はつらつな声でこう言った。
「今日はお出かけしよう!!」
たしかに天気も良いし、これ以上ないくらいお出かけ日和だ。
「いいね。どこに行く?」
「ちょっと遠いけど、アネモネのお花畑見に行こうよ!
今見頃だってテレビで言ってた!」
最近は良くも悪くも昔ほど季節感を感じられる機会が減ってきたよなぁなんて思いつつ、きみが作ってくれた朝ごはんの目玉焼きトーストを頬張った。シンプルでありながらも美味い。
「あ!ちょっと待ってて!せっかくのお出かけだからちょっとおしゃれをしてきます!」
そう言いながらきみは自分の部屋に戻って行った。
ぼくも気合いをちょっとくらいは入れた方がいいかと思って、タンスの奥から引っ張り出してきたおしゃれ着を来た。あんま似合ってないな……。
準備を済ませて家を出た。「駅まで5分!」が売りの物件だが、実際には10分くらいかかる。近いのか遠いのかわからない駅まできみとゆっくり歩く。
「ねーねー」
「?」
「マネキンの服、そのまま着せられたみたいな格好だね」
「そんなに似合ってない?」
「似合ってないっていうよりかは、もっと似合う服がある気がするんだー」
「あ!電車来ちゃう!急がないとー!」
ぼくらは列車に乗ってアネモネ畑に向かう。
彼女は本当に楽しそうにしているが、ぼくは久しぶりの外出なのでちょっと緊張している。
他愛もない話をしながらしばらく列車に揺られていると、目的の駅にもうすぐ着くアナウンスが流れた。
駅からしばらく歩いたが、一向に着く気配がない。
「道、間違ってない?」
「んーん。こっちで合ってるよー!」
一応スマホで調べてみたら、確かに道は合っているらしい。
「それにしても遠いな」
「そうかなー?いい運動になるんじゃない?」
だだっ広い畑を、古ぼけた街並みを抜けると、ようやくアネモネ畑が姿を見せた。あたり一面をたくさんの花が彩っている。
赤。ピンク。紫。青。結構種類があるんだな。
「うわ〜!キレイだねー!」
そう言いながら、きみは子どもみたいにはしゃいでいる。
「見て見て!このアネモネ、わたしのワンピースとお揃いの色してる!」
楽しそうにしているな、そう思っているときみは不意に振り返っていたずらっぽく微笑む。
「写真、撮らなくていーの?かわいいわたしの姿を収めておかなくて?」
「そうだなー。せっかくだから撮っておくか」
「ツンデレさんめ〜」
ぼくは何枚も写真を撮った。きみとの思い出が、花の色が色褪せないうちに。
気がつけば、ぼくらは夕暮れ時を迎えていた。
「じゃー、そろそろ帰ろっか。」
きみは少し寂しそうに言った。
もうそんな時間か、そう思って元来た道を戻ろうとすると、
きみは逆の方向にぼくの腕を引いた。「あ!こっちだよー!」
なんで違う道を行くとするのか聞こうとしたところで気がついた。駅がある。
「ふふふ、驚いた?ほんとはここが最寄り駅なんだけど、きみと少しでも一緒にいたくて……。」
そんなことしなくたって、きみが望む限りぼくはずっとそばにいるのに。
そう思いながら帰りの列車で夕焼けと花畑を眺めていた。
「遠くの街へ」
いつの日だっただろうか。私は夢を見ていた。
小さくて素朴で、虹で彩られた街に行く夢。
そこには淡い色のステンドグラスでできた窓が輝く、いろんなお菓子を取り扱うお店があった。
なんとなく気になったので、「今日のおすすめはなんですか?」と店員さんに聞いてみると、「ソフトクリームとミルクシェイクです」と答えてもらったのでそれを買うことにした。
夢の中だから味を感じていたかどうかは覚えていないけれど、とても美味しかった。
「またここに来よう」そう思ったけれど、夢の中の街だからもう二度と行けないのかもしれない。
街の色彩も、お菓子の味も、二度と会えないこの寂しさも、いずれは夢とともに忘れてしまうのだろう。
いつか、また行けたらいいな。
「現実逃避」
宇宙の質量が急速に減り始めてから数日。
宇宙を吸収する謎の存在の正体を突き止めると言って、
ミントグリーンの髪の子ども(?)が家に勝手に住み始めた。
「へー、これを押すと明かりが消えるんだねー!!!」
「この機械なにー??えっ、これで服を洗うのー?!!」
「これは……??『暗黒魔導のすすm「うわああやめろ!!」
やめろ!!!勝手に本棚を漁るな!!!
「急に叫んだら近所迷惑じゃないかー!!!」
そっちがいらんことをするからだろ!!
しかし、自称マッドサイエンティストだというコイツはどういう技術を使って自分の心を読んでいるんだ?
「我々は人智など最初から超えているのだよ!!!テレパシーなどお茶の子さいさい、朝飯前なのさ!!!説明したところでキミには理解などできぬだろうけどね!!!」
「ところで、『暗黒魔導のすすめ』って何だい??コレ、キミが書いたんだろう??少なくともこの星では魔法なんぞ存在しないと思うんだが……??」
だから、や・め・ろ!!!!
触れられたくない部分に触れようとするな!!!
「さもなくば『ル・ラーダ・フォルオル』されちゃうわけ?」
……ル・ラーダ・フォルオルが何かは知らんが、とりあえずやめてくれ……あとでそのノート燃やそう……
ところで、「研究」とやらは進んだのか……?
「あ、えー……っと!そうだなぁ……!!ボクが見たところ、キミたちがかつていた第712宇宙は現在進行形で縮小し続けているなぁ……!!!」
「念のためボクの管轄内の宇宙も観測しているが、ここ以外に異変は起こっていなーい!!!つまり!!!第712宇宙だけを注視すればよいというわけだ!!!」
それから?
「それから……??」
「あー!!そうだ!!!ここにある『マンガ』、全部読ませてくれたまえよ!!!」
は?
「『ヤツ』の正体を探るにはこういったものが役立つとインターネッツに書いてあってね!!!あと『ようつべ』もいいらしいね!!!」
そんなことがネットに書かれてるわけないだろ。
ついでに宇宙が全て吸収されたら恐ろしいことが起こるんじゃなかったのか?
「ぬるぽ」
は?
「そこは『ガッ』って返したまえよ!!!」
おい!誤魔化したな!……さては前から言っている「研究」とやら、ここに来てから何も進んでないな?!
「……あーーー!!!!そうだよ!!!!ご名答!!!!」
では、漫画やネットサーフィンも——
「現実逃避だよ!!!悪かったね!!!!」
「しかし!!!キミもボクの立場に立って考えてみたまえよ!!!『宇宙がナニカに吸収される』なんて事件、数十億年の間に一回たりとも起こったことがないうえ、手掛かりもない!!!そんな状況でボクにどうしろと?!?!!!」
「だが、ニンゲンが作り上げたものを見ていくうちに分かったことがある!!!現実逃避も全く意味がなかったわけじゃぁなかったわけだ!!!」
「ニンゲンは『愛』やら『恋』やら、そういうよく分からんものが好きなんだね!!」
まぁ、確かにそうだな。だいたいの人が経験して、テーマとして扱いやすいからそういう作品も多くなるから間違いではないな。
「もしかしたら、愛や恋が何かしらの鍵を握っているのかも知れぬ!!キミにはそういうのあんまり縁がなさそうだが、宇宙を救うためにも色々教えてくれたまえ!!!」
そうだな。あー……マンガ、読むか?
「読む読むー!……というか、キミこそ現実逃避している場合じゃないんじゃないかい?生き物なんだから相手を見つけた方g「そこの棚の本、今から全部読め。」
「おぉ〜……コワイコワイ……。悪かったよ。ご愁傷様。」
コイツ、本当に「研究」を進める気はあるのか?
普通の人間の自分と今のところ謎でしかないマッドサイエンティスト。果たして、宇宙を救うことはできるのか……?!!
To be continued…
「君は今」
「ぼく」は「きみ」を この「せかい」でさがしている
でも「きみ」って なんだろう?
そもそも「ぼく」ってなんなんだ?
きみはいま どこにそんざいするんだろう?
ぼくはきみを「ていぎ」することにした
点の連続 線分の組み合わせ
なんとなく きみは そんなものではあらわせない
そんなきがした
だからZ軸をせかいに加えた
どんな数式で どんなコマンドで きみを「発見」できるのか
いろんなことをためした
でもやっぱり きみはきっとそんなものじゃ定義できない
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考えがまとまらない
何もわからない
それでも
ぼくは 絶対にきみと再会する
この孤独を糧に
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