◎鳥かご
#8
自分の一生を籠の鳥と例える人が居るでしょう。
誰にも知られず縛られず関わらずに、産まれて死ぬことができたらその人の籠は無くなるかも知れないが、そんな人はこの世には居ない。
誰もがそれぞれの大きさの籠に囚われている。
貴方にとって自由に見える人もそれまでの人生、価値観、周りの期待に囚われている。
死後、人々はその体を籠へと変化し、その中に自身の魂を留めて楽園と称した。
その籠を管理する男は今日も彼等の楽園を覗き込む。
新しい籠の中は美しさを保って輝いている。
蔵の奥の古い籠の中は、籠の主が平穏に飽き刺激を望んだ結果が歪に楽園を変質させていた。
「人は、死後も自身を自ら閉じ込めて平和を謳い、そしていつしか狂いゆく」
哀しい憐れで愚かな生き物だね。
そう言って、男は古い籠を持ち上げた。
「周りに悪影響が出る前に処分しなきゃ」
蔵の外に向かう男の背後で、数多の楽園は輝きを放っていた。
◎花咲いて
#7
花咲いて
揃う三振り
三名槍
本丸来たる
蜻蛉切かな
槍レシピでやっとのことで
蜻蛉切をお迎えできたお祝い🌸
日本号
↓
御手杵
↓
蜻蛉切 の順番でお迎えしました。
一個前のテーマで書いたって良いよね!
◎今一番欲しいもの
#6
欲しいもの……
・画力
・文才
・発想力
・語彙力
・時間
・お金
・強いメンタル
etc.
欲しいものは沢山あって、
一番とか、パッとは答えられない。
逆に、すぐに答えられる人って
どのくらい居るんだろう。
私は今、何が一番欲しいのか。
うーーーん……
あぁ、”欲しいもの”、あった。
この問答の答えが
今一番欲しい。
◎視線の先には
#5
「綺麗だなぁ」
空を見上げて口を間抜けに開ける少年は、星を指でなぞって形にしていく。
「あれは、ベガ。あっちが、デネブ。あそこのが、アルタイル」
夏の大三角が完成すると楽しそうに笑う。
「明日は天の川、見れるかなぁ」
頬を赤くして、手に持った小さな天体望遠鏡を精一杯握りしめる様子はまだまだ幼い。
(お前にはこの空はどう見えてるんだろうな)
宝石箱のように輝いて見えるのだろうか。
その視線の先にはどんな世界が、未来が見えているのだろうか。
「きっと、見れるさ」
そう言って、その景色を忘れた父親は少年の髪をくしゃりと撫でた。
◎私だけ
#4
カラオケでは絶対に
ロンリー・チャップリンを歌って、
毎回90点台を叩き出すJKって
私だけかしら。
母校で、朝読書の時間に
国語辞典を読んでいたのは
私だけかしら。
狐を手で形作る時、
どうやっても小指をたてられないのは
私だけかしら。
夜、暗い道を歩く時、
周りに好きなキャラクターたちが居ると
自分に言い聞かせて歩くのは
私だけかしら。
墓地で、
そこには居ないはずの妹の声で
「お姉ちゃん」
と誰かに呼びかけられたのは
私だけかしら。
「私だけ」とか
どうやっても確かめることは出来ない。
でも、ひとつだけ。
確実な「私だけ」がある。
「今、この場所に立っているのは私だけ」
誰が何処に居るか、なんて大したことない?
でも、歴史は
「誰かがそこに居て別の誰かと出会う」
それの繰り返しで紡がれてきた。
過去の偉人も英雄も、誰かと出会って影響を受けた。
私が此処にいる。
それだけで、誰かに影響を与えている。
私たちは歴史の中に居る。
誰にも覚えられてなくとも、私たちが生きた証は後世に残り続ける。
人生って面白い、と思うのは
私だけかしら?