案山子のあぶく

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◎鳥かご

自分の一生を籠の鳥と例える人が居るでしょう。
誰にも知られず縛られず関わらずに、産まれて死ぬことができたらその人の籠は無くなるかも知れないが、そんな人はこの世には居ない。
誰もがそれぞれの大きさの籠に囚われている。
貴方にとって自由に見える人もそれまでの人生、価値観、周りの期待に囚われている。

死後、人々はその体を籠へと変化し、その中に自身の魂を留めて楽園と称した。
その籠を管理する男は今日も彼等の楽園を覗き込む。
新しい籠の中は美しさを保って輝いている。
蔵の奥の古い籠の中は、籠の主が平穏に飽き刺激を望んだ結果が歪に楽園を変質させていた。

「人は、死後も自身を自ら閉じ込めて平和を謳い、そしていつしか狂いゆく」

哀しい憐れで愚かな生き物だね。
そう言って、男は古い籠を持ち上げた。

「周りに悪影響が出る前に処分しなきゃ」

蔵の外に向かう男の背後で、数多の楽園は輝きを放っていた。

7/25/2024, 11:57:08 PM