案山子のあぶく

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◎視線の先には

「綺麗だなぁ」
空を見上げて口を間抜けに開ける少年は、星を指でなぞって形にしていく。
「あれは、ベガ。あっちが、デネブ。あそこのが、アルタイル」
夏の大三角が完成すると楽しそうに笑う。
「明日は天の川、見れるかなぁ」
頬を赤くして、手に持った小さな天体望遠鏡を精一杯握りしめる様子はまだまだ幼い。
(お前にはこの空はどう見えてるんだろうな)
宝石箱のように輝いて見えるのだろうか。
その視線の先にはどんな世界が、未来が見えているのだろうか。
「きっと、見れるさ」
そう言って、その景色を忘れた父親は少年の髪をくしゃりと撫でた。

7/19/2024, 1:24:29 PM