まかろん

Open App
7/2/2024, 4:24:26 AM

「時刻は午後四時を回りました……」

 適当につけていたラジオからそう言われた。休日の時の流れとはまるで特急電車のように速く過ぎてしまうものだ。いつも1日48時間を願うのもこのせいだ。

 2人分の夕食の準備をワンオペで行うのもだいぶ慣れてきたが、時間はかかる。今日の夕食は肉じゃがだ。不器用ながらも自分なりに丁寧に切った材料は鍋の中で光っているように見えた。

 ふと、顔を上げ、正面の窓を見た。空はオレンジの絵の具がこぼれたような綺麗な夕焼け空だった。

(ボスももうすぐ帰ってくるかな)

そう思い、エリオは鍋の火を止めた。

6/30/2024, 1:07:15 PM

※二次創作!許して!




いつからだろうか。オレがあの人のことを好きになったのは。


オレが"津詰徹生"という男を知ったのは警察学校時代だ。色んな講義を受けているときに、その名前、功績を聞かされた。オレはその時から"津詰徹生"に"尊敬の念"を抱いていた。

あるいはその頃からオレとボスは赤い糸で結ばれていたのかもしれない。

そして、警察学校を卒業し、数年経った頃、オレが念願の捜査一課に入り、あの人と一緒に仕事ができるという気持ちで胸を希望で膨らませていた。しかし、あろうことか、あの人は俺と入れ替わりで捜査一課から外れてしまった。その時の絶望感といったら言葉にできないほどだった。希望の風船は針に刺されて割れ、胸に大きな空虚が現れた。
(これがオレの運命ってやつか……)
そう嘆いて落ち込む日々が数日続いた。

捜査一課として過ごす日々を淡々とすごし、変わり映えのない毎日を歩いていたとき、オレの耳に吉報が飛び込んできた。
(津詰徹生が捜査一課に帰ってくる)
オレはそれを聞いた日から3日ほど眠れなかった。おかげでそのときはどれだけ睡魔と戦わされたことか……。

オレが対面でボスにあったのはその時が初めてだ。見た目は強面の渋い顔で、威厳を放っていて、正直近づきがたかった。

しかし、一緒に仕事をしていると意外とかわいい部分を見せていた。例えば、甘党で甘味が好物だったり、場を和ませるギャグを言ってくれたり……。オレはそのギャップに見事にハマってしまった。それ以来、オレの津詰徹生に対する尊敬の念は恋愛感情へと姿を変えていた。

オレの胸の風船を割った針の穴に赤い糸が通り、結ばれたのだ。



「……おーい、エリオー。どこ見てんだー?」
突然オレの前で手らしきものが上下に動くのが見えた。
「っ!ぼ、ボス、す、すみません。つい、考え事をしちゃって」
「ったく、ちゃんと集中して仕事しろ、仕事」
「オッケ〜、ボス〜」


「あ、ボス、急なんですけど、手、出して貰えませんか?」
「あ?なんだ?俺の手で何か実験でもするのか?」
「そんなことしませんよ〜、いいから出してください」
「しょうがねえな。ほら」
俺の前には年季の入った皺が少し刻まれた大きな手が出された。そして俺はその小指に赤い輪っかをはめた。
「……これって、お前……」
「そうです、わかってますよね、ボス」
「……ん、分かってるよ、エリオ」
「オレたちはこの赤い糸でいつも結ばれていますからね。この糸はどんな鋭利なハサミでも切れないようになってますから、安心してください、ボス」
「うっ、何か少し気持ち悪いが、まあ、いっか」

ボスは若干顔を顰めてたけど、オレと気持ちは変わらない。オレの気持ちはちゃんと伝わっているはずだ。



今度は、小指に赤い輪を嵌める代わりにボスの薬指に銀の輪を嵌めよう。


エリオはそう心の中で誓った。

6/30/2024, 3:41:02 AM

 ある日の午後1時、某公園にて、

「ボス、あれって入道雲ですよね?」

「おぉ〜、でかいなぁ〜。あんなにでかいヤツ久しぶりに見たわ」

「入道雲見ると、夏って感じしますね」

「暑いのは勘弁して欲しいが、こういう季節特有の景色が見れるのは趣があるな」

「ボスってこういうの、好きなんですね。周りの風景なんて興味無いと思っていました」

「さすがにそんなことは無いだろ。俺をなんだと思ってるんだ?ただのお仕事ロボットだとでも思ってたか」

「冗談ですよ、景色の風情を感じられる心がボスにあることぐらい、オレはちゃんとわかっていますよ。ところで、そろそろ休憩を切り上げて戻りませんか?」

「お、おう、午後も頑張ろうな、エリオ」

6/28/2024, 4:26:00 PM

いつもこの季節になると無性にアイスを食べたくなる。近くのクーラーの効いたコンビニに入り、ショーケースを開けて、手を突っ込む。まるで氷水に手を浸したような感覚を覚え、とても気持ちが良い。バラ売りの棒アイスを2本、片手に持ってレジへと向かう。この時、自然と足取りが早くなる。なぜだろうか。

コンビニを出るとモワッとした熱気が前から風と共に襲ってくる。身体中の汗腺から水が滴り、一瞬にしてワイシャツは水浸しになる。

駐車場の車に戻ると、車の中には、額を腕で拭っていた、こんな暑い中長袖の黒シャツを腕まくりしている恋人の姿があった。
「おう、買ってきたか」
「ええ、ボス。やっぱりこんな暑い日はアイスに限りますよね」
「そうだな。それじゃ、俺に1本くれや」

夏の猛暑の中、2人で過ごす時間は、熱くもありながら、アイスで冷やされる、爽やかなものであった。

6/28/2024, 4:09:06 PM

積んだままの本が壁となった布団の横で添い寝をした。
次の朝、目を覚ましたらボスの姿は無い。仕事に行ったみたいだ。


鉄の塊のように重い頭を起こし、深いため息をついた。疲れはまだ完全に取れていない。だけど、ボスの背中を追いかけるために、この体を起こさなければ。


オレはあの部屋が大好きだ。

Next