者共、いい加減にせぬか。
口々に挨拶もせず慇懃無礼に願いばかり宣うが
利己的に擦り寄る輩なんぞ数えてもられん
叶うかどうかを無意味に心配する前に
少しは、天罰が下るやもと恐れたらどうなのだ。
とはいえ、土地神たる我々が
こうして地に足を下ろしてしまっては
もう手遅れではあろうがな…。
反省を終えたと我らが判断するまで
ここいらの土地は不毛不作と荒れ果てるだろうが
まぁ、言ったとて無作法者等に
我々の欲する反省の意味が
理解出来る時が来ればよいがねぇ…。
ー 神様が舞い降りてきて、こう言った。ー
事の発端は些細で
本当に粗末な理由だったよ。
「誰かに知って欲しかった」
たったそれだけの行動理念に
聞き手である事が得意だった幼少期が合わさり
文字を覚えてからは記者を志す様になった。
語彙のパズルは時代と共に変化し
飽きる事も無く、記者への道は明るく思えた。
だが、現実は…社会は違ったよ。
需要と供給にそぐわぬ物語は修正液に塗れ
冤罪を解く為に見聞きした一部始終は
上が好んだ場面だけが切り抜かれ縫合され
ノンフィクションはフィクションになるんだ。
君なら耐えられるかい?
少しでも誤解を晴らす助けになれば…
少しでも事実を知る人が増えれば…
そう思い、言葉をいくら連ねようとも
上が検閲して少しでも気に入らなければ
無惨にシュレッダーが食い散らすんだよ。
…
さぁ、もう分かっただろう?
私はもう君達を手伝える心強い記者ではなく
望まれた話を描くゴーストライターでしかない
“誰かの為に”だとか、そんな浅い行動理念じゃ
君達もゆくゆくは私と同じになるだろうね…。
ー 誰かのためになるならば ー
【作者の戯言】
一度突き放した後に若者達の活力に当てられて
結局は後半で実力を発揮してしまうタイプの記者
「あの方は神霊様に選ばれた
衣を持たぬ幼き天女よ」
豪奢な座敷楼の中央で
裾を折り畳んだ羽の無い雛
栄えある尸童(よりまし)
神霊に見初められた頃より
慣れた村から引き抜かれ
託宣を授ける時のみ
神憑りの儀に相応しい扮装と共に
囀る(さえずる)事を赦される
村の者達は童女へ傅き(かしずき)
村から出る者もないままに
たいそう大事にしたそうな
座敷楼という籠を与えた者に
加護を授けられ村に縛られるとは
たいそうな皮肉であろうと
人知れず虚像は苦笑した。
ー 鳥かご ー
笑顔が眩い人だった
他者の目を惹く程に
良くも悪くも中心で
外を知らぬ人だった
好奇心は猫をも殺す
境界とは常に曖昧で
内から出るは容易い
いきはよくとも
かえりはこわく
月に叢雲花に風
叢雲が月を呑み込み
風は花を食い散らす
無知では身は守れず
無垢では心も守れぬ
白さ故に黒は塗られ
穢れだと謗りを受け
終いには指先集まり
花は散るも定めだと
落ちた花に虫は集る
煮詰めた涎も拭わず
下卑た口々を歪めて
馳走に愉悦と残した
下劣な色の虫食い痕
床は涙を飲み終えて
望まぬ種は灰へ埋め
何の罰かと天を仰ぎ
応えかと見紛う雨に
心を乱した君が嗤う
ー 花咲いて ー
【作者からの後書き】
精神的な疲労が文章に影響しているのか
何度書き直してもバットエンドになったので
開き直って後味の悪さを増し増しにした。
お兄さん、ちょいトお隣失礼すルよ
こんな涼しい夏ノ日ハァ
どうにも煙草も美ン味くて
困っタものだねぇ…?
そうだ、ここ出会ったノも何かのご縁ダ
少しお遊戯でもイかがかな?
良い反応だ…ジゃあ…
交代で質問を投げ合いナがら
お互いの欲しいモノをより早く当てる
はいかイいえで答えられる質問で
相手ノ今、欲しい物を当てるんだが…
チょっと刺激が足りないかねぇ?
デハ、欲しい物を間違う度に…
罰が加算されてくッてのはどうだい?
マぁ、良くあるお遊戯の決まり事だが
それラしく刺激にはナるだろう?
イかがかな?
決まりだ
それじゃ、始めようか。
ー 今一番欲しいもの ー