黒山 治郎

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「あの方は神霊様に選ばれた
衣を持たぬ幼き天女よ」

豪奢な座敷楼の中央で
裾を折り畳んだ羽の無い雛
栄えある尸童(よりまし)

神霊に見初められた頃より
慣れた村から引き抜かれ
託宣を授ける時のみ
神憑りの儀に相応しい扮装と共に
囀る(さえずる)事を赦される

村の者達は童女へ傅き(かしずき)
村から出る者もないままに
たいそう大事にしたそうな

座敷楼という籠を与えた者に
加護を授けられ村に縛られるとは
たいそうな皮肉であろうと
人知れず虚像は苦笑した。

ー 鳥かご ー

7/26/2024, 8:32:33 AM