黒山 治郎

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6/14/2024, 8:47:51 AM

夜闇に降り注ぐ五月雨に喜び
曇り空を所々で割った朝日の下で
何時もより多い朝露に輝く花弁
大きな葉から滴が垂れるのを見た。

青、紫、赤、白…
土から吸い上げた成分で
様々な色に染まる装飾花
瑞々しい花序へ視線は吸われ
夏を彩る小さくとも大きな花に
自然と足が止まってしまった。

現実の中に滲み咲いた水彩絵の具は
今年も、視覚的な涼しさを齎す程に
涼を花へと蓄えて、初夏を飾っていた。

       ー あじさい ー

6/13/2024, 8:41:57 AM

君の言う、好きと嫌いは
ランダム性の強い占いみたいだね。

この前は僕の事を嫌いだと言って
今日は好きだと言ってくれた!

けど…次の瞬間には、その気持ちも
嫌いに変わってしまったり…?

え…また僕の事、嫌いになっちゃったの?
次はいつ好きになってくれるかなぁ
うん?ショックは確かにあるけどね

僕は、ずっと君の占いのファンだからね。

ー 好き嫌い ー

6/10/2024, 4:04:00 PM

暖色の少ないホルベインの水彩絵の具は
いまだに減らし方が分からないままだ。

貴方の絵は、暖かい色にばかり好まれて
私とは真逆の生だった事がよく分かる。

濃度の高い透明水彩は貴方の手に慣れて
私の手には一向に馴染みそうにないが…
それでも、いつか私の物にしたいが為に
今でも大事にずっと持ち続けているよ。

どれだけの人が忘れようと関係無い
私は生涯、貴方の作品のファンであり
自分の為に色を使う者で在りたい。

     ー やりたいこと ー

6/9/2024, 8:02:08 PM

登り出した朝日の白が 静かに窓と向き合った
自問自答の末、乾きき った何℃かの情動反応
白む空にせめてもの慰 めを求め窓を開け放つ
黎明の時間だけでも構 わないと輪郭を忘れた

乾いて冷えきってしま った頬を溶かしてゆく
夢へ辿り着くまでは濡 れない様に陽を浴びる
今日もう一度だけと声 に出して唱える夜明け
陽の温もりを宿して、 私は今日も人を生きる

次の朝も開けられる様に私は静かに窓を閉じた。

                ー 朝日の温もり ー

6/8/2024, 4:32:24 PM

自分にとって、正しさを選べる歳になったんだ
そう自覚してからの私の行動は早かった。

頗る聡い訳では無いが、少なくとも愚かでは無いと
そう信じて己を奮い立たせ
勇敢さを示す為に最前線へ身を投じ
敵国兵も国賊達も全て
立ちはだかる者は打ち倒してきた。

曲がらない様にと、道を外さぬ様にと
手を広げ凱旋を果たす度に誉れを胸に抱いた。

だが、どうした事か
愛する国王は変わってしまった。

力を持ちすぎた故に“一等国”へ妄執し始め
戦友でさえ発言や選択を間違えると
正される間も無く叛逆者として
その首を落とされ、晒し者にされ
戦果を知る者にも涙ながらの石を投げられた。

“誉れある国民の品格を生涯を賭して保ち
各々の力を奮い国家の護持を優先せよ”

こんな筈では無かった…
いつの間に私の世界は、私の誇るべき主君は
悪漢小説を誇示するものへと
すげ替わってしまっていたのか?

あの頃へ、正しさを選び直せるのならば
この腐敗臭を憶えたまま、戻りたい。

…否
否、違うだろう。

私の選択肢は今ここにある
私は今、この時代を確かに生きている
過ちは正されなければならぬ
侵された者達を、怯えた者達を
声と共に顔を上げさせられるのは
今を生きる我々に道をくれるのは
他ならぬ我々の理想と行動なのだ。

愛した王よ、愛する国よ
今、私は岐路へと至った。

あの頃を違える、この選択は
きっと貴方の息を止めるだろう
国を変えてしまうやもしれない
それでも、これ以上に国民と戦友を
私は失いたくは無いのだ。

待っていてください
誉れを君主である貴方へ全てお返しする為に
私は今一度、そこまで歩んでみせましょう。

                    ー 岐路 ー

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