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8/1/2023, 11:06:42 AM


姉と出かける日は、決まって雨予報なものだった。その予報が外れたことは殆どない。そして、その前後は晴れの予報だった。

そんなことが続いているから、お出かけのある週はずっと天気予報と睨めっこしていた。

もう少し雲が遅れれば、行く日は晴れてくれる。
今日中に雲が過ぎ去ってくれれば、明日は晴れている。

そんなことを考えながら布団に入っていた。




いつからか、「ああ、また雨だ」と諦めるようになった。心のどこかでは晴れて欲しいと願っていながらも、また雨に降られてしまうのかと行く気を少しだけ失う。


久しぶりに出かけるのにな。
明日に限って、雨。
明日だけは嫌だなぁ。


明日が雨だったら、予定を考え直さないといけない。
なるべく室内で、それから傘も忘れないようにしないといけない。
諦めて、どこへ行こうか考え始める。



そういう時、決まって姉が言う。

「もし明日晴れたらこっち行ってもいい?」
「晴れたらこれ見れるんだよね」
「晴れの日はここの景色がすごく綺麗に撮れるんだよ」
「晴れたらここ行って、ここ行って…雨降っちゃったらどうしようかなぁ。どこがいい?」

晴れたら、のことばかり。
それでもどこか、その考えに救われている。



それならば、こちらからは「もし、明日雨が降ったら」の意見を出そう。
雨は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
対して姉は雨が嫌い。
そういう役割なのかもしれない。

「もし、明日晴れたら」
「もし、明日雨が降ったら」

そうやって2人で計画を立てる。
どっちになっても楽しめるように、久しぶりな2人だけの外出を満喫できるように、雨の日にしかない特典を探してみよう。


また今度、出かける予定がある。
今から、予報が出る日を楽しみにしている。
これで雨だったら、また「もしも」の話をしよう。

楽しめたなら、雨のお出かけも好きになる。
それを忘れないように、計画を立ててその日を待つ。

7/20/2023, 10:32:15 AM


名前としてはそこまで珍しく無いけれど、漢字は珍しい、そんな名前。
小学生の頃くらいに、自分の名前の由来を知ろう!という課題が出て、聞いたことがある。
どうしてこの名前になったのか。

「本当はお姉ちゃんに入れようと思ってた漢字なんだけどね」

そう言って教えてもらった理由はひどくシンプル。
花言葉に惹かれてその花の漢字をもらったらしい。
どうして姉と漢字を入れ替えたのか聞いてみた。

「なんかね、お姉ちゃんはこれじゃない!って気がした。それに、お姉ちゃんがこっちがいい!って言ってる気がしたからかなぁ」

母親の勘なのか、もしかしたら違う理由もあったのかもしれないけど、その結果漢字が入れ替わり、当初予定していた名前から変更したという。


新生活が始まる頃、たくさん挨拶をする機会が増えた。どんな漢字を書くの?と聞かれて説明する度に、入れ替わった漢字についての話を思い出す。

姉はどことなく妹のように手がかかった。構ってほしい、話してほしい、遊んでほしい。素直じゃないながらに態度に現れていた。正直うんざりしていたこともある。姉だろ、と何度心中で呟いたことか。


一人立ちした後、姉が遊びに来た。
しばらく会えていなかったからか、構え構えと絶好調。年下のようだと思いながら、なんだかんだ頼りになる姉。

2人で分けられた花のように、名前にふさわしい2人でいれているだろうか。
詳しいことは両親に聞かないとわからない。


もうすぐお盆で帰省する。
その時に、また聞いてもいいかもしれない。
その頃には両親も誤魔化さないで話してくれるだろうか。

7/19/2023, 4:58:58 PM


憧れていた人がいた。
いつも笑顔で周りの人と楽しそうに話す人で、どんな人相手にも変わらず接するような人。本当にこんな人いるんだ、って思うくらい人を集める人。

何度か話したことがある。その度に自分との違いを思い知らされて、その人と話すことは辛くなった。
けれどその人に憧れていたから、少しでも近づきたいと話したくなる。けれどやっぱり辛くて、相手にも迷惑じゃないかと思って、話さなくなった。


笑い声が聞こえてくると少しだけ周りを窺うようになった。人と話すことが怖くて仕方なくて、周りの人全てが怖くなってしまっていた。
決まってその笑い声の中心にはその人がいた。

みんなも、あの人も、自分を笑わない。そもそもほとんど関わりがないのだから、笑われるほど何かあったわけでもない。
けれど、もしかしてあの時のことがよくなかったのか、気付いてないだけで何かしてしまったんじゃないか、そうやってまた怖くなる。



あの人みたいに、中心にいて周りの人を笑顔にすることなんてできない。
話さなくなって他人になったのに、あの人を目線で追いかけることは、卒業するまで辞めることができなかった。

7/18/2023, 1:38:14 AM


確か小学校3、4年生の頃だったと思う。
毎年恒例の、祖父母との旅行。
一年だけ、凄く鮮明に覚えてるものがある。

祖父が足を悪くして杖で移動していた。
両親と姉は普段のペースで先へ行く。自分は祖父母と同じペースだった。
はぐれてしまうと心配にもなった。それでも祖父母を急かすことはできなくて、なんで先に行っちゃうんだ、と思った。
信号機で止まったところで、言ったと思う。「歩くの早い!」って。
両親は両親で、気難しい時期に入っていた姉のご機嫌取りに忙しかったんだろう。当時の自分はわからなかったけど。


祖父はあまり話さない人だった。旅館に着いた時、部屋に置いてあったお煎餅をたくさん渡してくれた。甘いものが好きだったから、他のものは自分で食べてたと思う。お煎餅は堅いから私に渡したんだと思った。

対して祖母はよく話す人だった。「〇〇は優しいね。ありがとね」そう言ってくれた。祖父母が好きだったから、一緒のペースで歩くことも、いつもより大きな声で話すことも何も嫌じゃなかった。申し訳なさそうにする祖母に大丈夫だと言った。



今思えば、沢山のお煎餅を渡したのは祖父なりのお礼だったのかもしれない。祖母がたくさんお礼を言ってくれていたのも、祖父の代わりだったのかもしれない。

家に遊びに行けばいつもお煎餅を渡してくれる祖父。自分が食べれないのに、なんて思ってた。祖父なりの優しさだったんだろう。たまに大好物のチョコレートも渡してくれた。それこそ、祖母と母が驚く程度には珍しいことだった。
祖母はいつも一緒に寝てくれたり、遊んでくれたりした。好きな食べ物をいっぱい用意して待ってくれていた。今振り返ると、姉より自分の好きな食べ物が多かったような気がする。あれが食べたい、そうリクエストするのはいつも自分だったからかもしれない。けれど、リクエストしなくても大好きなししゃもはいつも出てきた。



祖父の声は今は辛うじてしか思い出せない。
祖母は2人だけで最後に話した日が今も忘れられない。

2人の記憶にいた自分は笑顔だっただろうか。
あの日、6人で行った最後の旅行は、2人にとってもいい思い出であったことを願う。

7/16/2023, 1:15:53 PM


最近、景色の写真を撮ることが増えた。
それは帰り道であったり、遠出した時であったり、綺麗だな、と思った時に撮るようになった。


吸い込まれそうな青い空が一面に広がる光景が好きだ。悩んでいても、上を向いて空を見ればなんだか心が軽くなる。

雨の日の空を見ると、ずっと足元ばかり気にしていたことに気づく。思っていたよりずっと足元ばかりみていた。


空を見ていると色々考える。
将来のこと、過去のこと、好きなこと、家族のこと。
そして全部忘れたように、澄んだ青い空に見惚れる。
何か悩んでいたような、わからなくなる。
今はそれでいい、そんな気がする。


綺麗な青空が写真フォルダに詰まっていく。
今日の空はどんな様子だろう。今日も眩しい光に目を細めて空を見上げる。

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