狼星

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1/18/2023, 12:40:43 PM

テーマ:閉ざされた日記 #67

昼休み、いじめを見て時止めの能力を使った真。
それから何日か経ち、遂に決行の日へーー

『いよいよだな、真』
「あぁ」
僕はシャドウの言葉に頷く。この前来たビルの最上階から人間の街を見下ろす。
やっとこの世が僕たち、人外のものになるんだ。
僕は空を見上げる。光のない月…新月が僕には見える。
「なんだか、力が湧き出てくる」
僕は新月による能力開放により、いつもより機嫌がいい。
『わかるぜ、その気持ち。早くやろうぜ』
シャドウはウズウズしていた。僕は新月を見る。もう少しで頂点に達する。達したらそれが合図だ。

今だ!
僕は第三の目を閉じた。
吹いていた風がピタリと止む。下の人間の街からも全く音がしない。
やったのか…?
僕は下を覗き込むと止まっている人間がたくさんいることを視界にとらえる。
やった…。やったぞ!
「シャドウ! 成功だ!」
そう言った時、おかしいことに気がついた。
シャドウが喋らない。
「おい! シャドウ。なんで止まってるんだよ」
僕はシャドウにペタペタ触る。
「は? 冗談だろ? 面白くないって…」
僕がそう言って苦笑いするがシャドウは動かない。
なんでだ? この能力は人外には効かないはずなのに。効いた覚えがないのに。
僕は頭をフル回転させた。でも、分からなかった。
その時
『見つけた』
そんな声が僕の頭上からした。
「は…? 人間…?」
僕がそう言ってみたものは、飛んでいる人間だった。
『君でしょ? この現象の主犯者』
「主犯者って、言い方悪いんじゃない?」
『僕は本当のことを言ってるだけだよ』
そう言って僕の隣にふわっと着地する。身長が僕の半分くらいしかない。
「お前は、人外なのか?」
『うーん……。君と似ているかな』
人外と人間のハーフ。初めて自分以外では見た。
『それよりも。この現象なんなのさ。人間も人外もみ~んな止まっちゃってるんだけど』
「え、人外も?」
僕が驚いて聞くと
『だから、そうだって』
呆れたように返された。
『後、早くこの現象を開放したほうがいいと思うよ』
「なんで?」
『こんなにもたくさんのものの時間を止めていると、君は自覚していないかもしれないけど、それなりに体にリスクが伴っているから』
僕は体を触った。別に透けたり、灰になったりはしていない。
『新月の夜は特に魔物が動くから、ただでさえ制限がきついんだ』
そう言って、人外は何かを開こうとする。
『はぁ…やっぱりだめか』
その人外はノートのようなものを開こうとするがビクともしない。
「なに、それ」
『閉ざされた日記。って知らない?』
「知らない」
僕がそう言うと人外は呆れたようにため息をつく。知らないものは知らない仕方がないじゃないか。
『君が早くこの時止めをやめたら、話してやろうじゃないか』
人外はニヤリと笑って言った。僕はそれなら知らないでいいや。と思ったがなぜか無性に気になった。
「仕方がないな」
そう言って、第三の目を開けた。
その途端、目の前が真っ暗になった。

1/17/2023, 1:10:48 PM

テーマ:木枯らし #66

もうじき、新月の夜。真とシャドウは高校へ。

『ケ、みんな真面目かよ』
シャドウは、そう言ったがクラスにいる誰も反応しない。それもそのはず、シャドウの姿を認知できないと声も聞こえない。
また僕は、シャドウの姿を認識している人に会ったことがない。
『真。人間はなんで勉強するんだろうな』
【知らん】
僕はノートの隅にシャドウに向けて書く。尚、これは人間の使う言葉ではなく、人外と話すときに使う言葉。
僕は話すときも書くときも、自然に人外語と人間語を変えることができる。
(ちなみに、人外語を書くと人間にとってはただの落書きにしか見えない)
『勉強、勉強って、そんなに勉強が大事がねぇ…』
僕はシャドウの意見に大体は同意だ。
ただ、全てにおいてそう思うわけではなく、勉強しておいてよかったと思うときもある。
大体はつまらないが…。

その大体つまらない授業を終えると昼休みになる。
僕は大半、人気の少ない学校裏で昼を食べて過ごすことが多い。今日もそこへ向かうと何やら喧嘩らしきものをしていた。男3人が1人の男を囲んでいた。
「おい、早く買ってこいよ!」
めんどくさい奴らだな。僕がそう思っていると、シャドウも
『全くだ』
そう首を振った。1人が殴ろうとして大きく腕を振り上げた時、僕ははぁ…とため息をつき……。
男の向きを反対方向にする。そして再生。
男は空を殴る。
「は…?」
男は何が起こったのか分からないというように、キョトンとした顔をした。
今度は外さないというかのようにまた腕を振り上げる。
また同じように空を殴る。
「何やってんだよ」
そう言って体格の一番いい男が、今度は腕を振り上げる。以下同文。
『ケケケッ』
僕の横でシャドウが笑う。
何回かやって男たちは疲れたのか息切れして
「覚えてろよ!」
そう言って走り去った。
『カ〜ッ。おもしれ~』
シャドウは笑った。僕は1人残された男を見た。キョトンとしていて、彼も何が起こったのか分からないという顔をしていたが、何もなかったかのようにその場を立ち去った。
「はぁ…。やっとゆっくりできる」
そう言って腰を下ろす。
『にしても、よく相手したな。アイツらの』
「変なことして場所を汚されるのも困る」
『真らしいな』
そう言って、笑う。
木枯らしが吹き、僕の前髪を揺らしおデコにある第三の目を露にする。

僕の能力は【第三の目・時止め】だ。
さっきのもそうだ。時止めをしている間、つまりこの第三の目が閉じているときは人外+人外を認識している人しか動くことができない。
この能力を使えば時を自由自在に操れるのだ。
しかし、範囲が決まっていて昼間はその範囲が1番狭い。だから能力が開放される新月に時を止めれば、範囲が1番広くなる。
時止めの能力を使っていればずっと新月のままだ。
僕の第三の目が閉じていれば。ずっと…。

1/16/2023, 1:28:15 PM

テーマ:美しい #65

真っ暗な夜の中、ビルの最上階にいる真とシャドウ。
彼らはなにか企んでいるようだがーー

『にしても、真。さっき何を数えていたんだ?』
「あぁ、灯りの数だよ。あ、また増えた」
僕はまた視線を下へ向けると言った。
『よくわかるな…真。ま、当たり前か』
「あぁ、僕はただの人間じゃないからねぇ…。何なら人外に近いかも」
『違えねぇな』
ケケケッと笑うシャドウ。
「こんな街じゃ、僕たちが住みにくいもんね」
『…まぁ、確かにな』
僕ははぁ…とため息をつく。
「決行するのは少し先になりそうだが、新月が近い。早めに動いておいてよかったよ」
僕は屋上のフェンスによじ登る。
『おいおい…。あんまり目立った下り方をしないでくれよ?』
「別にシャドウには関係ないだろ? 人間たちにシャドウの姿は見えないんだから」
『俺はお前の心配をしていたんだが…。無駄だったか』
「心配? シャドウが?」
僕が鼻で笑うとシャドウがムスッとした。
『もう心配なんてしてやるもんか』
その言葉、何回聞いただろうか。シャドウは少し心配しすぎだ。こんなこと見ているやつなんていないって。
みんな『すまーとふぉん』とかいう四角い機械に夢中なんだから。逆に空を見上げているやつのほうが珍しいさ。
僕はフェンスの頂上につくと座る。シャドウはぁ…というため息が聞こえた。
「やっぱりここは街を一望できるよ。シャドウ」
僕がそう言うとシャドウは呆れたように適当に返事をした。
『おーい…。そろそろ帰らないと怒られるぞ』
「わかってるって」
そう言ってフェンスから降りようとしたその時、ゾクッと寒気がした。同時に何か視線を感じる。
『おい。どうした』
シャドウは僕に声をかける。
なんだ? 人間か? 人外か?
僕は目をあちこちに向けるが、こちらを向いているものなど居なかった。
気のせいなのか? 僕はそう思いながらフェンスを降りる。なんだろう嫌な予感がする。

『おい、大丈夫か』
シャドウはそう言って、降りてきた僕に話す。
「大丈夫、なんでもない。何かの思い違いだったみたいだ」
僕がそう返事をするとシャドウは首を傾げたが、すぐに違う話をし始めた。
何だったんだ? さっきの視線と悪寒は。
僕はそう思いながらもシャドウの話に耳を傾ける。

『新月か…。人外たちがよく動けるな』
そう。新月は人外たちがよく動く。だから僕はその日を選んだ。僕たち人外が活発に動ける世界にするために。
「新月ほど美しい夜はないよ」
僕がそう言うとシャドウも同意して頷く。
新月は僕の能力も開放される。それも狙って、だ。
『明日は普通に人間として『がっこう』ってどこに行くんだろ?』
僕は一応『高校2年生』だ。僕は人外と人間のハーフ。
シャドウと違って人間にも僕の姿が見える。
「シャドウが羨ましいよ。学校に行かなくていいんだから」
『まぁ、お前について行っているが、な。学校はつまらなそうだ』
「人間は勉強が本当に好きだなぁ…」
『お前も人間だろうが』
シャドウにツッコまれる。
まぁ、そんな退屈な学校ももうすぐで終わりなんだけどさ。

♡800ありがとうございます(_ _)

1/15/2023, 12:57:36 PM

テーマ:この世界は #64

「あ、また一つ増えた」
冷たい風が僕の頬を撫でる。
真っ暗な夜の中、ビルの最上階から街を見下ろす。
『全く、懲りないねぇ…人間は』
僕の隣でそう呟くのは、人外といったほうがいいのだろうか。
まぁ、何にせよ人間ではない。しかし、そこに存在しているナニカだ。
『なぁ、真(まこと)』
ナニカ、ことシャドウが僕の名前を呼ぶ。
『人間はいつになったら眠るんだ?』
僕は何も言わなかった。ただ夜の街の光を睨む。
『おーい、真ぉ…』
シャドウがかまってもらえないからか、うるさい。
「僕に聞かないでもらえる? 僕だってこの光がうざったいんだ。はやく、無くしたいんだからさ」
僕は光を見つめたまま言った。
『じゃあ、早く始めちまえばいいじゃねぇか』
シャドウはそう言ってケケケッと笑う。
             ・・
「わかってるよ。もう少しで条件が揃う」
僕は今度は真上を見る。今日は月が三日月だ。
下弦の月。
それは新月がもうすぐくる合図だ。
そしたら僕たちが開放される。

この世界は僕たちの物へと変わるんだ。


※明日へ続きます。
 これから少しの間、リレー小説になります。
 短編が好きだという方はしばらくお待ち下さい。
                      by狼星

1/14/2023, 12:56:00 PM

テーマ:どうして #63

どうして人は争うのだろう。
どうして人は戦い、血を流し合うのだろう。
どうして人は……。

戦争について書かれている小説を読んだ。
小説を読むのが好きな私でも、戦争の話を読むのは苦手。人が傷つけあっていることを想像してしまうから。
あるきっかけがあって読むことにした。
その小説はあまり分厚くはなかった。
しかし、私の心を大きく揺さぶった。
『戦争』という言葉を私は甘く見ていたのかもしれない。そう思った。
今でも、戦争をしている国がある。それなのにニュースにあまり流れなくなったり、ネットでも話題にならなくなったりしたため、私は自然と戦争のことについて触れなかった。
ニュースに流れなくても、話題にならなくても、血を流し、今でも国のために戦っている人たちがいるのに。
私はこの小説を読んで、「人はなぜ戦うのだろう」そう思った。
私達が住んでいる国も、戦争を100年とは言わないくらい前は戦争をしていた。
そこで失われた命は多く、戦争に行った兵隊さんたちはもちろん、一般市民まで巻き込まれた。
なんのために戦争をするの?
なんのために傷つけ合うの?
本当にそれは国の未来にとってあるべき行動なの?
戦争をしていない国の。平和な国に住む、私の言葉は何も力を持っていない。
無力でただ文字に起こせるだけ、起こしている。
なんて無力なんだろう。
手を伸ばしても届かない。
声を出しても聞こえない…。
ただここに私が存在していて、言葉を並べているだけ。

今すぐ戦争を止めに行くことはできないし、戦場に突っ込めば死んでしまう。
それなら私ができることは何?
無力な私もできることは?
小説で伝える。それが私のできることかもしれない。
こうして文字で起こすことによって、『戦争』について見つめ直してくれる人や、『戦争』についての小説などに手を伸ばしてくれる人がいるかもしれない。
そんな希望を持って今日も文字を綴る。
私の力は小さい。でも、沢山の人に読んでもらえると力は大きくなれる。今これを読んでくれているあなたも、私の力となってくれている。
ありがとう。ありがとう。

もう一つ、私にできること。
それは次の世代に知ってもらうこと。
平和な日常を守るため。戦争を二度としないため。
理由を上げればいくつもある。
今、私にできること。
それは意外と身近にもあるのかもしれない。

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